2014/02/20 00:00

センセーショナルで、退廃的で、インモラルで、セクシーで、気高く美しいロック・バンドーーParadise、渾身の3rdアルバムを配信スタート

左から、呼詩、関口萌、瀬尾マリナ、冷牟田敬

触れてはいけないものに触れたがために血が流れ出してしまう。その赤いしずくを眺めながら、恐ろしくなりつつも心の中ではなぜかワクワクしている自分がいる。Paradiseというバンドに漂っているのは、そんな禁忌を犯すときの危うさと、それを越えることへの憧れのようなものである。2000年代伝説のバンド、Mokixxを母体に2006年より活動を開始した彼ら。カリスマ性漂うボーカリスト呼詩を中心に、昆虫キッズや豊田道倫理&mtvバンドでも活躍する冷牟田王子、Mokixx時代からの盟友・関口萌、そして新ベーシスト瀬尾マリナ(咽笛チェインソ〜BARAMON)の4人で3rdアルバムを完成させた。録音・ミックス・マスタリングを担当しているのは、ピース・ミュージック中村宗一郎。退廃的で、世の中に鋭い眼光を向けながら、それでいて美しい。ギリギリのバランスで表現するParadiseにインタビューで迫った。それとともに、メンバーによるセルフ・ライナーも掲載。手のひらから漏れこぼれた光とともに、その音楽に触れてみませんか?

渾身の3rdアルバムが完成

Paradise / BeatomIn'flower
【配信形態 / 価格】
mp3 : 単曲 250円 / まとめ価格 2,000円
wav : 単曲 300円 / まとめ価格 2,500円

独創的で屹立した美しさを魅せる4人組覚醒ロック・バンド、Paradiseが2年ぶり(2013年時)にリリースするサード・アルバム。ヴォイス・パフォーマーとしても知られるベーシスト瀬尾マリナ(咽笛チェインソ~BARAMON)加入後初となる作品。
Mokixx、幻のアルバムがリリース

Mokixxファーストラスト+
【配信形態 / 価格】
mp3 : 単曲 200円 / まとめ価格 2,500円
wav : 単曲 250円 / まとめ価格 3,000円

全身全霊稀代のヴォーカリストこうた(現・宮腰呼詩)と、ドラマー関口萌を中心に、数人のベーシスト交代を経てギタリスト冷牟田王子が加わり2004年から約3年活動したMokixx。公に発表されることのなかった唯一のアルバム『ファーストラスト』に、カセット音源、デモ音源を追加収録しリリース。

INTERVIEW : Paradise

紅昏い光を背負って、呼詩が言葉を綴っていた。不穏が立ち込めるなか、放たれる言葉は鋭利に空気を切り裂く。パラダイスの3rdアルバム『ビアトムンフラワー』の、要の1曲である「現在先行形」。ライヴでの再現が不可能と言われていたこの曲が、この日(1月22日、渋谷TSUTAYA O-nest)、たった1回きり、演奏されているところだった。ふと、灯りが落ち、ビートはクライマックスを予想して強く大きく曲を演出する、瞬間、「俺がしゃべってるんだよ!!!! 暗くするんじゃねぇよ!!!!」という声が響き渡る。演奏が止まる。ステージで発狂する呼詩を中心に、さらに場の空気が凍っていく。

ライヴ・シーンでは誰もが「カリスマだった」と称してやまない前身バンド、モキックス。呼詩と関口萌を中心に、よりアヴァンギャルドで、より攻撃的な音楽とライヴ・パフォーマンスを行っていた彼らが解散し、当時楽器未経験だった冷牟田敬を迎えてパラダイスは結成された。呼詩の閉鎖病棟への入院や、ライヴでの割腹自殺未遂など、スキャンダラスな行動により何度も活動休止の憂き目に遭ってきた彼らが、ベースに瀬尾マリナを迎え2年ぶり3枚目のアルバム『ビアトムンフラワー』を完成させた。そこには、ライヴで何度も披露されてきた曲たちが、かたちを変え、メドレー形式で収録されていた。なかにはワンフレーズのみ奏でられている曲もある。なぜ、彼らはこのようなトリッキーな方法でアルバムを提示してきたのか。ところどころに挿入されるマジで危ない言葉の数々、その意図はなんなのか。

ふたたび、音が紡ぎだされる。呼詩の言葉とメンバーの演奏が呼応し合う。彼らのバランスはいつも危うい。それぞれ全員が全身全霊全生命をかけてステージに挑み、時にぶつかり合い、時にカラ回る。だからこそ、見事にグルーヴがハマッたときに、彼らが生み出す一瞬の爆発力はとんでもないのだ。ヒリヒリとした殺傷音が会場を渦巻き呑み込んでいく。とてつもない怪音が姿をあらわしていく。実に、1曲40分の超大作演奏のラスト、呼詩はまるで大空を翔るようにフロアを飛び回った。「現在先行形」という1曲は、この場で確かに昇華された。センセーショナルで、退廃的で、インモラルで、セクシーで、気高く美しいロック・バンド、パラダイス。渾身の3rdアルバム『ビアトムンフラワー』について、話を聞いた。

インタヴュー&文 : 近藤チマメ
(1月23日、新宿にて)
写真提供 : 金子山

>>>冷牟田敬×関口萌へのインタヴューはこちら

>>>呼詩(+関口萌)へのインタヴューはこちら

メンバーによるセルフ・レビュー

瀬尾マリナ

『Blue devil, Baby evil』
4曲それぞれにとても鮮やかな色遣いのある作品だと思う。垣間見える少しの迷いと儚さを抱き込んで、光になって進んで行くような「HONGKONGNIGHT」、赤い口紅がジョークと踊る「魔性の女子」、七色のどこまでも続く真っ直ぐな輝き「Rainbow」、最後にありったけの絵の具を詰め込んで爆発させた「love temple」。私はこれ、ロック・バンドのベーシックなスタンダードだと思う。

『beatomIn’flower’』
この作品については現存する音楽や芸術表現に満足できている人は正直聴かなくてもいいし、聴かない方がいいんじゃないかとすら思う。簡単に使われる「問題作」「ヤバい」の意味じゃない。在るもの全て目の前に並べて、全て迷いなく壊しタブーとされる領域に踏み込んで再構築する。「現状」が「壊れる」のを見たくない人にはお勧めできない。レジェンド、コミュニティ、パーティー、トレンド、インターネット、アイドル、それだっていい、悪くはないよ。素晴らしいと思ってる、だけど、先に進めるのはいつも何にもできなくてもやろうとする人だ。そこにいい歌いいメロディー、いい音は存在したと思います。このバンドを嫌いでも好きでも構わない。でも現状に退屈したならば聴いてみたらいい。いい悪い?知らないよ。でも何かを思う、ことはきっと始まる。進むということは自分で自分を裏切ることからしか始まらないと思うから。

冷牟田敬

『Blue devil, Baby evil』
ParadiseのCDの1曲目のイントロには必ず「あぁ、ここからやっと何かが始まるんだ」と思わせるような、優しくてどこかか弱い、煌めくような響きが無ければいけないと僕は思ってます。そしてParadiseのCDの最後の曲は「これで何もかも終わりだ!」と思わせるような終末観に必ず行き着くようになっています。この短い4曲のシングルの中でもその流れがはっきりと出ています。

『beatomIn’flower’』
前作のシングルの持っていた流れが、2年の紆余曲折の時を経る事で異形の怪物に成長した感じがあります。2年前に順調にアルバムを作れていたら、全く違う内容になっていたと思います。一番の変化は僕のギターと呼詩のボーカルの目指す表現がはっきりと「攻撃」の形を選んだ事にあると思います。聴いていると、頼りなくも迷いながら全員が必死でやってた昔の自分達はもういないんだな、と感じます。Paradiseというバンドの最後はきっと普通じゃない死に方(突然死のような)になると思いますが、自分は自分の星の下で最後まで好きなギターを弾いてやろうと決意しました。

本作へ寄せられたコメント

唯一無二のサウンドを鳴らすというのは簡単だ。この世にあるすべてのバンドにそれぞれのサウンドがある。ヴィジュアルがある。アティテュードがある。意識的であろうがなかろうが、それぞれが似ることがあっても同じものはきっとひとつもないだろう。だからこそParadiseは尊い。9に分けられたトラックなかに18曲が収録され、65分の収録時間にまとめられたdisc1の 編集意図は結局、僕にはわからなかった。でも、それでいい。わかってしまうロックなんてきっとろくなものじゃない。このレコードは置いてきぼりにされたか と思えば、ポップなメロディも提示してくれるし、歪んだギターの気持ちよさも思い出させてくれた。これは抗うことができない快感である。

澤部渡(スカート)
本当に素晴らしい作品だと思います。
特にdisc2、僕はヴェルベッツのシスターレイに匹敵する狂気に満ちた曲をはじめて聴きました。
パラダイスは僕の救いです。
本物のロックです。
断言したいです。
パラダイスが、こうたくんがロック・スターじゃなかったら、それは、この世界が悪い、と、
本気で思います。
どうか自身が貫くロックをこれからも追求していって下さい。

小森清貴(壊れかけのテープレコーダーズ)
コメントを頼まれ▽今回の、自信作だから△と言われ冷牟田くんに恥ずかしそうに手渡されたCDRの一枚目はエラーで読み込まれなかった。彼らの最初の失敗だ。
そしてDISK2。音をきいて、ぼくはこのアルバムは失敗作だとさとった。
現代の無菌国家日本に彼らのようなキチガイを招待する椅子はない。
「まだこの先にいくつもりなのか」
ボソっとつぶやく呼詩に胸が苦しくなった。
こんなに美しい失敗作を愛さずにいられるか?

マヒトゥ・ザ・ピーポー(下山)
幾度もギリギリのライヴに遭遇している。
パフォーマンスという言葉では説明出来ない何か。
ステージに現れた瞬間に立ち込める倒錯感と我々の中に沸き上がる高揚感。
ソレが遂にパッケージングされてしまった。
窮極のポップ・グループ、Paradise。これはヤバい。

shimokitazawa THREE 星野秀彰
今年聴いた中で最もお洒落で知性とセクシャリティを兼ね備えていて尚かつ可笑しい。挑発的だけどとても優しくて、うわ! 理想だ! と思った。

高橋翔(昆虫キッズ)
ろれつがまわらないまま突き進み、ゆらいで輝き出した瞬間にロック・ミュージックの懐の深さをすごく感じる。

王舟
自分の中に混在する全ての感情を剥き出しにされていくこの感覚。2枚組の静と動を通して聴き終えると、自分の中には確かな力強い希望が残りました。僕にとって唯一無二の存在、Paradiseというバンドはやはり「物語」なのですね。素敵なアルバムをありがとう。

田代タツヤ(撃鉄)
どうして世界は見たくもないコトばかりなのに
希望に満ち溢れているのでしょうか。
街を歩いてても見ていられないモノばかり目について
つまらなくて発狂しそうになるけど、
たまに現れる風俗街のネオンが眩しくて
泣きそうになったりもする。
「Paradise」の音楽は
そんな僕にとっての光です。
死ぬまで信じてます。

有馬和樹(おとぎ話)
音は、空気が震えてるだけだから、すぐに消えてしまう。
良い音楽も悪い音楽も
平等に消えていく。
だけど何かわからないけど残るもの、受け継がれていくfeelingがあるって事を思い出させてくれるバンドです。
そんなものに出会う度に、私は胸を撫でおろす
そこに賭けるしかないと考えます。
私は忘れないでしょう。
mokixxがいたことparadiseがいる事ことを。

丸山康太(ドレスコーズ)
東京でロックをやり続ける困難さはよくわかっている。
所詮、子どもの街だから続けたところで色気は出ない。
今の閃きと、ときめき。
ぼくは、Paradiseが羨ましい。
自分より若いバンドでそう思うのは、彼らがはじめてかもしれない。

豊田道倫

PROFILE

Paradise
2000年代伝説のバンド、Mokixxを母体に2006年より活動開始。2010年アルバム『Alcohol River』、2011年2枚組アルバム『N'importe ou hors du monde』、同年4曲入りシングル『Blue devil, Baby evil』を発表。2012年、新ベーシスト瀬尾マリナ(咽笛チェインソ〜BARAMON)加入。圧倒的に不穏な雰囲気を漂わせ、死者の世界までもを求める彷徨詩人にして神秘への憧憬を歌う稀有なボーカリスト呼詩を中心に、(昆虫キッズや豊田道倫理&mtvバンドでも活躍する)冷牟田王子のギターは触れば切れんばかりの鋭く尖った光を放ち、Mokixx時代からの盟友、ドラマー関口萌は現在活動中のアンダーボーイズでおなじみのポップな面をこのバンドに持ちこみ、ヴォイスパフォーマーとしても知られるベーシスト瀬尾マリナが新たな色を加える、Paradiseはこの4人が奏でるどこまでも独創的で屹立した美しさを魅せる覚醒ロック・バンドだ。

Mokixx
全身全霊稀代のボーカリストこうた(現・宮腰呼詩)とドラマー関口萌を中心にギタリスト冷牟田王子が加わり2004年から約3年活動したMokixx(正式名称 Nhisteer-theer-neats-mokixx-droogue)は、Paradiseの前身として知られるが、2006年12月24日(渋谷サイクロン)、その最後のライヴで販売された9曲入りCDRアルバム『ファーストラスト』が数人の手に渡り、このたった1枚の音源が今に至るまで噂が噂を呼んだ伝説のバンドである。

[インタヴュー] Paradise

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