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井村幸治
2014年7月3日 (木)

転入世帯に最大56万円を助成、東京23区の定住サポート策

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写真:iStock / thinkstock

人口減少が現実のものとなり、「自治体消滅」というショッキングな将来像も発表されるなか、若い世帯の定住サポート策を打ち出す自治体も増えている。しかも過疎の街ではなく、東京都庁のお膝元、東京都新宿区をはじめとした23区内でも実施されているのだ。

新宿区では子育てファミリー世帯の転入に最大56万円を助成!

新宿区の定住促進策は、子育てファミリー世帯向けの「転入助成」と「転居助成」の2つ。

「転入助成」は区外から新宿区内の民間賃貸住宅に移り住む場合、礼金・仲介手数料の合計額で最大36万円+引越し費用を最大20万円、合計で56万円もの援助を行うというもので、「いらっしゃい、新宿へ」とも言えそうな施策。

一方、「転居助成」は区内の居住者が区内の民間賃貸住宅へ住み替える場合に、家賃の差額分として毎月最大2万5000円を最長2年間、引越し費用を最大20万円援助するというもの。「そのまま居てね、新宿に」という声が聞こえてきそうな施策だ。

いずれの助成も、家賃18万円以下の民間賃貸住宅であることや所得制限などの条件があり、賃貸契約や引越しを行う前に「予定登録申請」を行うことが必要。やはり金額が大きいだけに人気もあり、平成26年度の予定枠各30世帯に対して、すでに半分以上の登録が行われているようだ(5月30日時点)。「新宿区に住みたい」と思う人は早めのアクションを!

○新宿区「転入助成」 http://www.city.shinjuku.lg.jp/content/000141801.pdf
○新宿区「転居助成」 http://www.city.shinjuku.lg.jp/content/000141802.pdf

新宿区内に住んでいる世帯へは毎月3万円×5年間の家賃補助も!

さらに新宿区では、すでに区内に住んでいる世帯向けへの「民間賃貸住宅家賃助成」も行っている。家賃負担を軽減することで新宿区に住み続けてもらおうという狙いで、学生および勤労単身者向けが毎月1万円×最長3年間、子育てファミリー向けが月額3万円×最長5年間と、家計にもかなりうれしい金額。ファミリーだけでなくシングルも対象としているのが大きな特徴だ。

それだけに人気が高く、平成25年度はファミリー向け募集50世帯に対して応募が273世帯と倍率5.46倍の狭き門となり公開抽選が行われたそうだ。ファミリー向けの条件は10月1日までに新宿区内の民間賃貸住宅に住んでいること、総所得が510万円以下、家賃が22万円以下など。今年も9月ごろに告知され、10月に募集が行われる予定なので、新宿区在住の子育てファミリーは見逃さないように! 

○新宿区「民間賃貸住宅助成」 
http://www.city.shinjuku.lg.jp/seikatsu/file07_02_00001.html

千代田区、北区、豊島区などでもファミリー助成制度を実施中

このほかにも東京23区では、定住促進を中心として各種の助成制度を行っている区も多い。それぞれに狙いと特徴を持っているので、気になる方は詳細を調べてみてほしい。

○千代田区 「次世代育成住宅助成」
新婚・子育て世帯を対象としており、住宅は民間賃貸&マイホーム購入のどちらでもOK。対象は以下のいずれかで、毎月の助成額は最高で8万円と高額。最長で8年間、1年ごとに助成額が減少する方式だ。
1)親元近居助成…5年以上千代田区内に住んでいる親がいる新婚&子育て世帯が転入or転居するケース
2)区内転居助成…千代田区内に1年以上住んでいる子育て世帯が区内で転居するケース
2人世帯…1年目2万円、2年目1万8000円、3年目1万6000円
4人世帯…1年目4万円、2年目3万6000円、3年目3万2000円
http://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/machizukuri/sumai/jose/documents/jisedai-jose-260131.pdf

○北区 「ファミリー世帯 住み替え家賃助成/転居費用助成」
区内の民間住宅に1年以上暮らす子育てファミリー世帯が、区内の民間賃貸住宅に転居する場合に家賃の差額分を毎月最大2万円×3年間(金額は毎年減額)、転居費用を最大30万円助成。
http://www.city.kita.tokyo.jp/docs/service/659/atts/065996/attachment/attachment_1.pdf

○豊島区 「子育てファミリー世帯への家賃助成制度」
15歳以下の子どもがいる世帯が豊島区内の民間賃貸住宅への転居&転入する場合、区の定める基準家賃との差額分を毎月1万5000円(4年目からは1/2)、最長5年間にわたり助成。
http://www.city.toshima.lg.jp/machi/sumai_yuushi/013306.html

○目黒区 「ファミリー世帯家賃助成」 
目黒区内に住んでいる世帯の定住と子育て支援が目的。18歳未満の子どもがいて区内に1年以上居住している世帯が対象で、毎月2万円を最長2年間助成。募集期間は平成26年7月1日~7月18日なので、要注意!
http://www.city.meguro.tokyo.jp/kurashi/sumai/enjo/yachin/shikaku/family.html

○板橋区 「区立住宅 新婚・子育て支援制度」
区が民間賃貸住宅を借り上げる「区立住宅」への家賃減額を行う制度で、新婚&小学生の子どもがいるファミリーが対象。最大で毎月4万円、最長3年間を支援。
http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_oshirase/002/002763.html

○品川区 「親元近居支援事業」
親世帯と近居または同居することになったファミリー世帯に、転居費用の一部を「三世代すまいるポイント」として交付(ポイントは協賛企業の品物と交換)。
http://www.city.shinagawa.tokyo.jp/hp/menu000014300/hpg000014254.htm

このように、東京23区内だけをみても各区が知恵を絞って若年人口の確保&定住に力を入れていることが分かる。自治体間での「居住者の奪い合い」、仁義なき戦いがすでに始まっているのだ…。

ちなみに、自治体の施策は4月から翌年3月末までの「年度」単位で計画&実行されるため、現在は平成27年3月までの対策が出そろっているタイミング。来年度以降も、定住促進を打ち出す自治体がさらに増加していくかもしれないので、気になる街の情報はしっかりとキャッチしておきたいものだ。

※それぞれの助成制度にはさまざまな条件や予定枠があります。詳細は各自治体に確認をしてください。

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