東京スカイツリーの足元で、開業3年目を迎えたすみだ水族館。8月は館内の展示にとどまらず、かつて下町を巡り歩いていた“金魚屋台”を復刻、“ゆかたで銀ぶら”や“すみだ錦糸町江戸マルシェ”など都内のイベントに屋台を引いて参加し、多くのお客様に涼しげで懐かしい光景を提供した。
ところで、なぜ水族館内を飛び出し、街中での展示を始めたのだろうか。その理由を、すみだ水族館副支配人の山内さんと、企画担当の栗原さんに伺った。
一瞬、頭に“?”が浮かんだが、栗原さんが続けて説明してくれた。今も下町情緒が残る墨田区には、昭和30年代まで金魚売りの掛け声が響いていた。彼らは金魚を売るだけではなく、飼っている人のアフターケアをするため、町内の家々を回って歩いていたそうだ。金魚売りは、人と魚、そして町の人々のつながりを密にする仕事だったということなのだ。そんな金魚売りの在り方は、すみだ水族館が目指す姿にリンクした。
そんな決意の表れが、金魚屋台だった。
企画に使われたレトロモダンな屋台は、墨田区を中心に活動するクリエイター集団『すみだクリエイターズクラブ』の協力で制作された。墨田区らしい雰囲気を感じる細かな造りは、地元のクリエイターと、水族館のスタッフが打ち合わせを重ねることで生み出されたものだったのだ。
下町文化をキーワードにした活動を今後も続けていくという、すみだ水族館。地元の方々が『自分たちの水族館』だと感じてくれる日も近いのではないだろうか。