旭化成ホームズが、消費や住宅需要に対するアベノミクスの影響について調査した。それによると、アベノミクス効果で消費意欲が高まっているという。調査結果を詳しく見ていくことにしよう。
「アベノミクス」とは、長期間続いているデフレを脱却し名目経済成長率3%、物価目標2%を目指すため、「財政出動」「金融緩和」「成長戦略」という「3本の矢」を柱とした、安倍晋三内閣が実施する経済政策のこと。6月23日に行われた東京都議会議員選挙では、アベノミクスが一定の評価をされ、自民党が圧勝したところだ。
旭化成ホームズでは5月30日・31日に、「消費税増税前の消費意識に対するアベノミクスの影響」(調査対象:全国の30歳以上の既婚者858名)と「消費税増税前の新築住宅需要に対するアベノミクスの影響」(調査対象:全国の30歳以上の既婚者のうち、3年以内に新築住宅の購入意向がある449名)の2つのインターネット調査を行った。
それによると、「アベノミクス効果によって、景気が回復しているという実感はあるか」という問いに対して、「実感している」(2.9%)、「多少実感している」(17.9%)と、実感している合計は20.8%だった。しかし、「実感はないが今後は回復すると思う」が43.1%と最多となり、期待値は大きいことが分かる。
「アベノミクス効果が消費税増税前の消費意欲を後押ししていると思うか」については、「後押ししている」が52.3%(「していると思う」(9.7%)、「少ししていると思う」(42.6%))と過半数を超えた。では、「消費税増税前に、なるべく早く買っておきたい商品やサービスのジャンル」は何かというと、30~50代で「住宅」が1位(40.7%)、2位に自動車(34.4%)、3位に白物家電(28.0%)が続いた。
安倍晋三内閣が発足して半年たった。アベノミクスにより、株価は急激な上昇と下落を繰り返したが、半年前よりは高値を維持しており、投資熱が高まっている。また、日銀の「異次元緩和」により、円安が進んだ。
しかし、金利については狙いとは裏腹に上昇している。政府が新たに発行する国債の多くを買い取る施策を取ったために、住宅ローンの長期金利の指標となる長期国債の金利が上昇したからだ。5月には、銀行ローンの10年固定型の金利が引き上げられ、6月になると、フラット35の最多金利が2%を超えた。
調査結果を見ると、「アベノミクスの金融緩和により、住宅ローン金利は、今後どうなって行くと思うか」を聞いたところ、「上がっていく」という見方が83.3%(「上がって行くと思う」(33.0%)、「少しずつ上がって行くと思う」(50.3%))と、大半の人が金利の上昇基調を予測している。
さらに「金利上昇気配を感じるので、早めに新築住宅を購入しておきたいと思うか」どうかは、購入派が62.2%(「そう思う」(21.2%)、「ややそう思う」(41.0%))を占めた。
一方で、2014年4月には消費税増税が予定されており、「消費税増税を踏まえた新築住宅の消費意識」については、「消費税増税前に購入したい」が80.8%と圧倒的多数となった。なお、「消費税増税後に買うべきだ」と回答した人にその理由を聞いたところ、「住宅購入は、増税に関係なくゆっくりと考えるべきものだと思うから」が最多の61.6%と、冷静な見方をしている側面もうかがえた。
史上最低水準といわれて久しい住宅ローン金利。今後の金利動向は不透明ではあるが、アベノミクス効果で景気が本格的に回復すれば、金利は上がっていくことになる。金利上昇による購入者の負担は大きいことから、
購入するタイミングをはかっていた人には、金利先高観は後押しをする材料になるだろう。
また調査結果からは、消費税増税により住宅価格が上がったり、増税による負担が増えたりすることを懸念して、駆け込み需要の傾向がうかがえるが、消費税増税に伴う負担軽減措置も用意されている。住宅ローン減税の拡大と給付措置だ。
給付措置については、詳細が決まっていなかったが、住宅ローン減税を拡大しても、所得税などの納税額が少なくて控除額を使いきれないと想定される中低所得層に現金を給付する(8%時には年収510万円以下で10万~30万円、10%時には年収775万円以下で10万~50万円)といった方針が公表された。住宅ローンを借りずに現金で住宅を購入した場合でも、50歳以上で一定の年収以下であれば、給付措置が受けられる。
このように、消費税率が8%になっても、増税となる分を減税で軽減する仕組みも整ってきた。したがって、増税前にとあわてて購入し、冷静な判断ができなかったという状況だけはないようにしてほしいものだ。