小保方さん問題  なぜここまで稚拙な論文不正を「プロ」は見抜けなかったのか?

論文捏造 (中公新書ラクレ)
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村松 秀
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 昨日、理化学研究所は理事会を開き、STAP細胞の論文で不正があったと認定された小保方晴子研究ユニットリーダーの不服申し立てに対し、再調査しないことを決めました。

 先の記者会見で「STAP細胞はあります!」、「STAP細胞の作成に200回以上成功しています!」と豪語していた小保方さんですが、今回の理事会での決定で、彼女の研究不正が「確定」したことになります。

 小保方さんの代理人の弁護士は「非常に不服」と不満を示しておりますが、今回、公開された小保方さんの実験ノートの内容に対しては、専門家だけでなく一般人からも「これはないわー」という反応がほとんどです。

 理研側や専門家は、ノートの記述からは証拠を示すデータが一切なく、第三者による再現不可能という的確な指摘。一般人からは「♡(ハートマーク)」や「陽性かくにん!」といったメモのあまりの幼稚さに対する無慈悲なツッコミ。

 科学的知識がないから、この問題のことはよくわからんと態度を保留されていた方、もしくは「小保方さんのように若い女性研究者をいじめる理研や、科学的知識がないくせに証拠もない中、一方的に小保方さんを叩くマスコミは許せん!」と憤っていた世の殿方も、今回のノート公開で、さすがに擁護できるレベルではないということがわかったのではないでしょうか。

 それにしても、そもそもの問題として、彼女のような科学に対して不誠実とも言える態度の研究者が、理研のユニットリーダーという地位にまで上りつめ、またあのような論文が多くの「プロ」を騙すことができたのか不思議でなりません。一部週刊誌の報道による、いわゆるひとつの "不適切な関係"が背景にあったとして、それだけで説明がつくようなものでもないでしょう。

 
 今から9年前に出版され話題となった『論文捏造』は、科学の殿堂・ベル研究所に所属し、超電導の分野でノーベル賞に最も近いといわれたヘンドリック・シェーン氏の論文捏造について迫った1冊です。どうしてあのような捏造が行われたのか、また不正を見抜くことが出来なかったのか等、現代の科学界の構造を浮き彫りにしています。興味深いのは、シェーン氏の捏造も、今回のSTAP細胞論文捏造とまったく同じ構造だという点です。

 今回の理研の決定で、一連のSTAP細胞論文捏造問題が幕を下ろすことはないようです。今後、理研では懲戒委員会を設置し、小保方さんや共著者の笹井芳樹発生・再生科学総合研究センター副センター長らの処分を決めることになっています。もちろん、どこまで不正を正すのかはわかりませんが、少なくとも小保方さんのみを「しっぽ切り」するわけではないようです。

 再び同じ過ちが繰り返されないよう、適切な処分と再発防止のための抜本的な構造改革が必要かもしれません。

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