国内

文科省は数さえ把握していない「高校の院内学級」の深刻な現状

 全国病弱虚弱教育研究連盟の調査(2011年度)によると、全国の病院に設置された院内学級は小学校163校、中学校108校。2011年度には小中あわせて421人が学んだ。

 一方、高校生向けの院内学級に関する調査はなく、本誌の取材で設置が確認されているのは、東京、沖縄などわずかな自治体にとどまる。

 全国の高校を管轄している文部科学省に問い合わせても、「高校の院内学級は各校の分教室(クラスのひとつ)にあたり、特別その数は把握していない」とのこと。院内学級を設置するかどうかは各地方自治体の教育委員会が独自に判断しており、国は支援どころか、数の把握すらしていないのが現状なのだ。

 なぜ高校生向けの院内学級は少ないのか。院内学級に詳しい大阪教育大学の平賀健太郎准教授(病弱教育)が言う。

「高校生は個人によって教育過程や学力に差があります。また、高校の場合、義務教育ではありません。院内学級を実施する学校に移るには、いったん今の高校を退学する必要があるなどハードルも高い。このため、高校の院内学級がなかなか普及しないんです」

 入院して院内学級に通った中学生の多くは高校への進学を希望して勉強に励む。

 しかし、夢が叶って高校に合格しても入院が長引いたり、再発して病院に戻ることがある。その際、学習の“空白期間”が生じることが大きな課題だと西南女学院大学教授(病弱教育)の谷川弘治さんが言う。

「院内学級があれば、入院しながら勉強して、学校の単位を取り、卒業することもできます。しかし、院内学級がない場合、生徒は学習する場を失い、復学が困難になります。欠席日数が多くて所属する高校を留年してしまうケースもあります」

※女性セブン2013年4月11日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン