街・地域
地震・豪雨…防災対策、大丈夫?
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島田 美那子
2014年4月18日 (金)

地域コミュニティを活かした、路地・京町家の防火対策

六原では月一回『六原学区防災まちづくり会議』を開催。地域の安全・安心にむけた防災まちづくりに取り組むこの会議はもう20回を超えるそう(画像提供:京都市都市計画局 まち再生・創造推進室)
画像提供:京都市都市計画局 まち再生・創造推進室

風情ある街並みが魅力の歴史都市、京都。趣のある狭い路地に立ち並ぶ京町家のただずまいは、京都の街並みを支える大事な要素である一方、防災上の課題も気になります。そんな京都市では災害時に備え、街並みを保全しながら安全性を向上させるべく、行政と地域が協働し、地域特性を活かした防災対策を推進しているということで、どのような取り組みを行っているのかお話を伺いました。

防災意識が高い京都市民。自主防災組織の組織率は100%

京都には昔から、自分たちの街は自分たちで守るという意識で、自主防災に取り組む文化が根付いていると話すのは京都市都市計画局まち再生・創造推進室の文山さん。京都市では地域住民が自主的に防災活動を行う自主防災組織の組織率は100%に達しているという点からも、その防災意識の高さと、綿々と培われてきた地域コミュニティの力を感じます。

「京都の歴史的な景観を残しつつ、市民が安全に住み続けられるまちづくりを進めるために、個々の地域特性を活かした、防災対策を進めています。街や路地のあり方は、地域によって異なります。また、個々の路地や建物単位では難しいことも、地域全体で取り組めば実現可能なことがあります。地域の皆さんの思いや意向を踏まえ、一緒に取り組んでいくこと。防災まちづくりを進める上では地域コミュニティとの連携が不可欠だと考えています」

行政が一方的に進めるのではなく、地域の想いをしっかりと受け止めて防災まちづくりを進めていきたいということで、防災まちづくりの取り組みを進める、東山区の六原自治連合会事務局長の菅谷さんにもお話を伺いました。

『自立型』のコミュニティを目指す

京都市東山区に位置する六原は、清水寺と鴨川の間に位置し、昔ながらのお店や京町家が立ち並ぶエリア。六原自治連合会は平成12年に設立された比較的新しい組織であるものの、行政や大学などとも連携しながら、街の活性化に積極的に取り組んでいます。

六原では平成16年から、地域で連携して安心、安全の取り組みをしていこうと、『安心・安全マップ』をつくり始め、警察のデータや実際に歩いて得た情報をまとめて、地域内で暗い道などの防犯上気を付けるべき場所や災害時の避難場所などを地図に落とし込み、更新型のマップにして全戸に配布。その後、平成24年から行政との連携をはじめ、自主防災会が中心となり、マップの作成や細い路地の避難経路整備など、より安全な街づくりを進めているそうです。

例えば、行政と地域住民、建築の専門家などでエリア内のすべての路地を計測しながら防災上の課題をあぶりだす『まちあるき現地調査』は、今までに2回実施。袋路に非常扉を設け、2方向避難できるようにするなど、すでに対策を講じることができた場所もあるそうです。

また、現地調査の他にも、一軒一軒古い木造家屋をチームで回り、耐震化の働きかけを行う『耐震ローラー作戦』も実施。

「行政の人だけで回ったら、住民もびっくりするでしょう(笑)。地域の人間が一緒に回ることで、耳を傾けてもらえるんです。逆に、地域の人間だけで回ったら、顔見知りに家の中を見せることに躊躇される人もいると思いますが、第三者がいることで、相談もしやすくなる。行政と地域が協力することでスムーズに進められる事例の一つですね」(菅谷さん)

マップ製作やまちあるき調査など、地道に活動を続けている六原地域ですが、常に『自立型』のコミュニティを目指していることが、活動が長続きする秘訣だと菅谷さんは話されました。

「地域住民にとって『住んでいてよかった街、これからも住み続けたい街』がテーマなので、防災だけでなく、高齢化や空き家など、さまざまな課題に取り組む一連の流れの中で、防災対策にも取り組んでいます。行政は私たちに何をしてくれるか、というような『依存型』ではなく、地域の中に、『こういうまちづくりがしたい!』という想いがあった上で、行政の力も借りながら進めていっています」(菅谷さん)

地域コミュニティを活かした、路地・京町家の防火対策

【画像1】『まちあるき現地調査』では、一つ一つの路地を計測。袋路などに2方向避難できる場所を設けるには、地域住民の理解と協力が不可欠ですが、今後も防災まちづくりの活動を続けることで、随時増やしていきたいそう(画像提供:京都市都市計画局 まち再生・創造推進室)

地域コミュニティを活かした、路地・京町家の防火対策

【画像2】堅苦しい形ではなく、広く住民に防災まちづくりについて知ってもらうため、昨年の『六原フェスタ』という街のお祭で防災イベントを開催。消火器を使っての的あてゲームは、子どもも楽しみながら防災意識を高められると好評だったそう(画像提供:京都市都市計画局 まち再生・創造推進室)

行政と地域コミュニティ、双方のお話で共通していたのは、防災まちづくりをする上で『継続すること』がいかに重要かということでした。実際に行政と地域で連携して開催している定例会議、『六原学区防災まちづくり会議』は平成24年から月一回欠かさず開催されているそうです。

「急に目立った成果を出そうとするのではなく、コツコツと地道に続けていくことが、我々のテーマである『住んでいてよかった街、これからも住み続けたい街』の未来をつくっていくんです。防災まちづくりについて、今後行政の支援がなくなったとしても、今の取り組みを通して、地域コミュニティで自走できるような骨組みをしっかりつくっていくことが、大事だと考えています」という六原自治連合会の菅谷さんのお話が印象的でした。そういった地域住民ひとりひとりの当事者意識が、歴史都市京都の美しい姿を守ってきたのかもしれません。

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