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連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2013年12月11日 (水)

地方でも都市部でも空き家が増加。なぜ増える?どんな問題が生じる?

写真: iStock / thinkstock
写真: iStock / thinkstock
【今週の住活トピック】
「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」開催/国土交通省

http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr3_000022.html
消費者(空き家所有者、空き家利用意向者)アンケート/価値総合研究所
http://www.mlit.go.jp/common/001020854.pdf

国土交通省が開催している「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」の資料として公表された調査結果で、空き家所有者の7割がそのまま放置していることが分かった。空き家が増えている理由はなにか? 空き家が増えるとどういった問題が起きるのか?

空き家の所有者の7割が特になにもしていないまま

国土交通省では、既存の住宅を活用した賃貸流通市場の整備を図ることを目的として、「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」を設置し、検討を進めている。その第3回目の会議において、価値総合研究所が行った「空き家」に関する調査結果が公表された。

それによると、調査対象者1万5193人のうち17.7%が空き家を所有していた。内訳は一戸建て(74.1%)が多く、立地は田舎(農山漁村地域)や郊外よりも市街地(35.5%)のほうが多いことが分かった。
空き家となった理由では、別の住宅に住み替えた後、当面は売却や賃貸をするつもりがないまま放置していたり、親から相続したままだったり、あるいは別荘などとして購入したが使っていないといった状況が浮かび上がった。

また、空き家所有者のうち、売却や賃貸などを検討しているのは24.0%で、71.0%の人は特に何もしないまま放置している状況。さらに空き家について、特に管理すらしていない人が12.8%もいた。

空き家はなぜ増えるのか? なぜ売却したり賃貸したりしないのか? 掘り下げてみよう。

地方でも都市部でも空き家が増加。なぜ増える?どんな問題が生じる?

【図1】消費者(空き家所有者、空き家利用意向者)アンケート/価値総合研究所

空き家のまま放置されれば、防犯、防災などさまざまな問題も

全国の空き家の総数(総務省平成20年)は約757万戸で空き家率は13.1%と高い。そのうち個人住宅が約268万戸を占め、増加の一途をたどっている。理由はさまざまあるが、処分しづらい古い家が余っているということに尽きる。

既に住宅ストック数は総世帯数を上回り、家余りの状況にある。立地条件が良いなどで、受け継いで住みたい、あるいはそれなりの価格で売却できる、リフォームしてもそれなりの賃料で貸せるという住宅であれば、空き家にはならない。処分しづらい家が、適切な管理もされず劣化が進み、資産価値も下がるという悪循環が生じているのが現状だろう。

税法上の問題もある。空き家を取り壊して更地にすると固定資産税が高額になるので、とりあえず住宅のまま置いておくということもある。また、現行の建築基準法に合致せず、今と同程度の大きさの住宅が建築できないため処分できないといった場合もある。

管理がなされていない空き家は、景観が悪くなるだけでなく、ゴミの不法投棄のたまり場になったり、放火や不法侵入など犯罪の温床になる懸念があるほか、地震などの災害が発生した場合に倒壊して、避難路をふさぐといった大きな問題を生じさせることになる。

国土交通省や地方自治体も対策に乗り出しているが課題は多い

こうした問題を受けて、空き家対策の条例を制定する地方自治体も出てきた。埼玉県所沢市の「所沢市空き家等の適正管理に関する条例」では、空き家を適正に管理するよう助言、指導、勧告、命令及び氏名の公表ができるようにしている。また足立区の「足立区老朽家屋等の適正管理に関する条例」では、倒壊の恐れのある住宅の解体費用を補助することにしている。また、住宅を再活用したり、他の用途に転用したりすることを支援する措置なども取られ始めている。

ただし、空き家を相続しても登記の書き換えを行っていないなどの理由で、空き家の所有者が特定できない事例も多い。危険な空き家の情報収集や所有者の特定から始めることになる。

国土交通省でも「空き家再生等推進事業」で、空き家の解体や活用、所有者の特定などに補助を行っているほか、「高齢者等の住み替え支援事業」や「空き家住宅情報サイト」などの施策を打っている。また、空き家を含めた個人住宅の賃貸流通を促進するための課題の分析や、そのために必要なルール、ガイドラインなどの策定を主な検討事項とする場として、先に挙げた「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」が設置された。

空き家の課題解決は一筋縄ではいかない。過疎地域、郊外型団地、木造住宅密集地などによって、空き家が発生する経緯や解決すべき課題、対応方法などが異なるからだ。今後は人口の減少や単身世帯の増加などで、さらに空き家は増えると見られている。国、地方自治体、地域住民や民間の力をまとめて、ひとつひとつ解決していくしかないだろう。

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連載 今週の住活トピック 住宅ジャーナリストが住まいの最新ニュースを紹介&解説する連載。毎週水曜更新の「今週の住活トピック」。
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