医学技術の進化は日進月歩。米女優アンジェリーナ・ジョリー(37)の乳房切除によって注目を浴びた遺伝子検査は、「がん」のみならず、「ボケ」のリスクや「寿命」の長さを推定するところまできている。
自らの遺伝子について知ることは、もはや安心な老後を送るうえで欠かせないものとなりつつある。その最前線を取材した。
超高齢化社会に突入しつつある日本では、“ボケ”は多くの人の関心事といってもいいだろう。実は、最新の医学では、遺伝子検査によって、事前に罹患確率が予測できるのだ。
最近の研究結果ではアルツハイマー病は<アポE4>という遺伝子が危険因子だということまでわかっている。昭和大学歯科病院口腔がんセンター長の新谷悟氏が解説する。
「欧米の研究機関で行なわれた大規模な疫学的調査の結果、アポE4が1つ含まれるとアルツハイマー型認知症の発症リスクが3倍になることが判明しました。これは片親につき1つなので、両親から受け継いでいるとリスクはさらに膨らみ、8倍にもなります」
一般的に85歳まで生きた人がアルツハイマーになる確率は10%といわれている。アポE4所持者はその確率が上がり、1つ持っている人は30%、2つ持っている人は80%の確率で発症することになるという。
では、実際にどのような検査をするのか。香川県高松市の「こくぶ脳外科・内科クリニック」院長の政田哲也氏に聞いた。
「綿棒に口の中の粘膜を擦りつけるだけの簡単な検査です。粘膜と唾液から遺伝子を解析し、アポE4の存在の有無を確認します。結果が出るのは約1か月後。料金は2万円程度です」
では、検査で実際にアポE4が確認された場合はどうしたらいいのか?
「もしアポE4が見つかったとしても、確実にアルツハイマーになると決まったわけではありませんし、年齢によっては改善策もある。まだ40代や50代の方ならば、コレステロール、糖尿病、高血圧などの生活習慣病がアルツハイマー病を引き起こす要因になりやすいので、食事に注意したり適度な運動をすることで予防したり発症を遅らせることができます」(前出・政田氏)
まずリスクを知ることが重要なようだ。
※週刊ポスト2013年6月14日号