<入居者プロフィール>
吉田さん(42歳)/夫婦/職業 会社員
■ 住まいデータ
所在地:大阪府箕面市
築年数:築35年
アクセス:阪急千里線「北千里」駅からバス約17分
間取り:2LDK/約47 m2
家賃:5万8200円(共益費込み)
入居時期:2013年7月
大阪府箕面市にあるUR賃貸住宅の箕面粟生(あお)第3は、いわゆる“団地”と呼ばれる集合住宅だ。最寄駅からはバス便になるが、緑豊かな環境に恵まれ、生活利便施設も団地内にある暮らしやすい物件。築35年を迎え、入居者の高齢化も進みつつある典型的な郊外型団地とも言えよう。
この団地では「DIY賃貸」がすでに20戸以上も契約されるなど、若い世代にも注目を集める物件となっているという。実際にDIY賃貸に暮らす吉田さんご夫妻の住まいを見せていただいた。
吉田さん夫妻は結婚2年目、当初は民間の賃貸住宅に暮らしていたが、周囲の騒音が気になって住み替えを考え始めた。吉田さんの実家は京都で、将来はそこに住む可能性もありマイホームを購入するという考えはなかったそうだ。箕面という場所にもこだわりがあったわけでなく、たまたま出合った物件が粟生(あお)だった。
「DIY賃貸のことは住宅情報誌を見て知りました。DIYモデルルームがあるというので見学に来たのですが、そこでひと目ぼれ。賃貸なのに壁の塗り替えがOKで、しかも退去時に元に戻さなくてもいいと聞いて、すごいと思った。ふたりともDIYの経験はなかったのですが、そのまま仮契約してしまいました(笑)」と吉田さんの妻。
実は粟生団地にはDIY賃貸の先駆者的な主婦・mariさんが手がけた「DIYモデルルーム」が常設されているのだ。シンプル&ナチュラルテイストが好きで、カフェ風の家に憧れを持っていたという吉田さんの妻は、「賃貸でも憧れの住まいを実現できる」ということを知って即決した。
しかし、ふたりともDIY未経験、不安はなかったのだろうか?
「図工は苦手科目だったのですが、妻が惚れ込んでしまったので、もう頑張るしかない…(笑)」と吉田さん。DIY雑誌とモデルルームを参考に、できるところから始めていったというふたり。吉田さんはトイレの壁紙から、吉田さんの妻は洋室の漆喰壁からと、分担しながらDIYを始めていったそうだ。
「失敗もありました。洗面所との仕切り壁をつくったけれどドアが重すぎてうまく動かなくて取り外し。ドアは飾り棚に再利用して、仕切りはカーテンで代用しています。でも、臨機応変に工夫することもだんだん楽しくなってきましたよ」
「材料を探してホームセンターをはしごしたことも。木材は意外と高いので、腰壁をつくるために安価なベニヤ板を裁断して羽目板風に打ち付けたのですが、密着させすぎて元のベニヤの一枚板に戻ってしまってがっかり。わざとすきまを空けたり、削ったりと苦労しましたが、その分愛着がわきますね」
1年のDIY経験で、どうやら吉田さんもDIY賃貸住宅にどっぷりとはまってしまったようだ。
吉田さんご夫妻のお話を聞いていると、プロのような完璧な仕上げにならなくてもいい、コストをかけずに創意工夫で楽しく住まいをつくりあげていけるのがDIY賃貸の醍醐味だと思えてきた。
DIY賃貸は可変範囲も思った以上に広い。作り付け家具を壁に設置することや、和室の襖や鴨居を撤去してもOK、遮音性能を満たせば床をフローリングに張り替えることも可能。キッチンや浴槽やトイレの便器、洗面台も取り替え可能だ。そして、改造をしたまま退去ができる、原状回復の義務がないのだ。(すべてUR賃貸住宅のケース)
自分の理想のスタイルがハッキリしている人なら、DIY賃貸を活用してローコストな住まいを手に入れることもいいだろう。また、理想が明確になっていないとしても、自分に合った住まい方を見つけるために、まずはDIY賃貸というスタイルもありだ。住みながらいろいろとトライができるDIY賃貸は、賃貸物件を自分好みにカスタマイズしながら暮らしたいという人や、将来中古物件を購入してリノベーションしたいという人にとって、賢い選択肢なのだと思う。