「役人の掟=規制」という切り口で、日本経済の問題点を網羅した1冊。
元キャリア官僚の著者ということで難しい内容なのかと思っていたが、とても平易な言葉で読みやすかった。
農業や医療といった大きな問題から、そこらで売っている弁当の話まで、
様々なところに、しかも似たようなかたちで規制をテコとした利権の網が張り巡らされていることがよくわかる。
こんなバカな規制があるのか、と面白く読み進められるが、そのうちに今まで存在を知らなかった既得権者の存在に腹が立ってくる。
著者は「なんでもとにかく規制緩和すればよくなる」という考え方の人物ではないようで、
問題のある規制にどのような特徴があるのか、といったことが読み進めるにつれてわかってくるようになる。
本書に書かれているのはよくある「単純な霞が関官僚悪玉論」ではなく、
よりよい方向に改革が進まないようにする仕組みがあることが冷静な筆致で解き明かされていく。
本書を読めば、そういう仕組みを変えていく必要があるのは明らかに思えるが、
国民の多くはそうした規制をテコにした既得権の存在を知らない
(著者は「知らないうちに既得権者に搾取されている」と表現)
ためにいつまでたっても利権構造にメスが入らない。
そうした意味でも、多くの人に読まれるべき本だと感じた。