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やまくみさん正方形
山本 久美子
2013年6月28日 (金)

国土交通副大臣が力を入れる「中古住宅流通市場の活性化」とは?

日本不動産ジャーナリスト会議/研修会の様子。中央が鶴保庸介/国土交通副大臣

筆者も所属する日本不動産ジャーナリスト会議では、月1回の頻度で研修会を開催している。2013年6月に日本記者クラブ内会議室で開催された研修会では、国土交通副大臣の鶴保庸介さんを講師に招き、今後の住宅政策について伺った。気になる、その内容とは?

「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」で改革のスピードアップ

鶴保副大臣は、以前の自民党政権時代、扇千景国土交通大臣の下で政務官を務めていた。2002年~2003年のことだ。その当時から中古住宅市場の活性化が不可欠だと感じていたが、自民党が政権復帰して、副大臣として戻ってみると、10年前とあまり状況が変わっていないことに驚いたという。

副大臣の感じる課題は、
・木造一戸建ては、いまだに20年で建物価値がなくなる、といった現状がずっと続いていること。
・売却物件の情報がオープンでなく、買い手は不安を抱えたまま価格に魅力を感じて購入していること。
・昨年来「中古住宅・リフォームトータルプラン」の策定、「不動産流通市場活性化フォーラム」の提言を受けたが、改革スピードが遅いこと。
・売り手、買い手、仲介事業者、金融機関などのプレーヤーが市場の主役であるので、行政の役割はプレーヤーの障害の排除、市場拡大の支援をすべきこと。
・プレーヤーの行動に着目して、何が足りないのかなどの課題を洗い出し、現状をブレイククスルーさせる必要があること。

そのために「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」を2013年3月に立ち上げた。この研究会では、次の三本を柱とする新たな施策を提言していく予定だ。
(1)建物評価手法の抜本的な改善
(2)中古住宅流通市場へのアプローチ
(3)住宅金融へのアプローチ
これまで、住宅金融へのアプローチはあまりされていなかったこともあり、研究会のオブザーバーとして、金融庁から銀行監督第一課長を招いた。また、縦割りと言われる省庁だが、研究会では住宅局の住宅政策課、住宅生産課、土地・建設産業局の不動産業課の関連する3課を参加させている。

既に、リフォーム・買取再販業者、不動産鑑定関係会社、金融機関、不動産流通関連団体などに幅広くヒアリングを行っており、研修会後の6月21日には報告書案が出された。

建物評価の抜本的な見直しと融資審査での活用に注目

これまでも、中古住宅流通市場の活性化策として、ホームインスペクションのガイドラインや中古住宅の長期優良住宅制度、買取再販事業の負担軽減、仲介時点で多様なサービスをまとめて受けられるワンストップサービス強化、性能強化リフォームの支援などが挙がっており、中古住宅流通市場へのアプローチについて、「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」でもそれらを踏襲して検討している。

しかし、建物評価の抜本的な見直しと、建物評価を金融機関の融資審査に活用する仕組みについては、これまであまり進んではいなかった。「住宅の質を高めるリフォームなどの住宅投資を行えば、それが建物の価値として適正に評価される」という状況になれば、リフォームが促進される。
さらに、価値の上がった住宅を売却して現金化したり、担保にしてリバースモーゲージで借り入れができれば、後期高齢期の住み替えや生活の資金を確保できるという点でも、効果が大きいという構想だ。

鶴保副大臣は、「中古住宅流通市場活性化については、考えられる限りのことをしていこうと思っている」と語った。
これまで、中古住宅流通市場の活性化のためには、リフォームした住宅の適正な担保価値の評価と、金融機関による融資審査への適用が、大きな課題として語られてきた。その点に踏み込んだ施策が提言され、かつ、改革スピードを上げるという点には、大いに期待したい。

●国土交通省「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」について
HP:http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk1_000009.html
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