食品偽装の連鎖には呆れるしかないが、ホテルの厨房には、あらゆる偽装がまかり通っているようだ。関東のある一流ホテルの厨房に食材を届ける卸業者によれば、“段ボールマジック”とも呼べる偽装工作があるという。
「ホテルのレストランに納品される食材の量は小規模。なので、配達用の容器にひとまとめで届けられることがある。野菜は産地などが記された段ボールで管理しますが、そこに他の産地の野菜も入れて一つにまとめれば、産地偽装も可能なんです。伝票がなければ、産地を証明するものは担当者の記憶と善意だけです」
その担当者が悪意を持てば、偽装は容易。実際に、こんな信じられないような偽装工作があったという。食品の管理に詳しい「食品安全教育研究所」代表の河岸宏和氏の話だ。
「あるレストランが、冷凍肉団子を入荷した際の話です。段ボールの外部には賞味期限や原材料などが書かれていますが、中の小袋には何も書かれていない。それをいいことに、厨房の担当者が賞味期限切れになりそうな肉団子を新しい段ボールに入れ直した。賞味期限を延命させたのです。
こうした偽装を防ぐには、段ボールと内袋に商品名、原材料、賞味期限をそれぞれ明記、伝票もすべて正確に書くよう徹底するしかない。私はこのことをある業界紙に投稿しましたが、掲載されませんでした。私の主張する内容がまさに業界にとっての“不都合な真実”だからです」
※週刊ポスト2013年11月22日号