壁にペンキを塗ったり、床の素材を変更したり。自分好みに手を加えられる、いわゆる「カスタマイズ賃貸」が増えていることは、これまで当サイトでも幾度となく紹介してきました。賃貸物件は汚さず傷つけず、そのままの姿で住まうべし――。そんな「原状回復思想」に縛られた日本の賃貸シーンの風向きは、大きく変わりつつあります。
そんななか、SUUMOでは去る3月7日・14日の2日間にわたり「DIYワークショップイベント」を開催。築40年超の賃貸物件をDIYで素敵な部屋に再生するワークショップと、DIYにまつわるトークセッションを実施しました。「もっと自分らしい賃貸ライフを!」を合言葉に、多くの参加者が楽しくDIYにチャレンジしたイベントの模様をお届けします。
ワークショップの舞台となったのは、UR都市機構の高島平団地。板橋区が世界に誇るマンモス団地です。しかし建設当初は「東洋一」と謳われた集合住宅も建設から40年あまりが経過し、さすがに老朽化は否めません。そんな団地の一室をDIYの力で再び魅力あふれる部屋に仕立て直してしまおうというのが今回の試み。当日はビギナーから経験者まで十数名が参加し、みんなで力を合わせてペンキを塗ったり、壁紙を張ったり、一日がかりで作業にあたりました。
なお、本ワークショップの講師を務めたのはデザイン会社「夏水組」の坂田夏水さん。カラフルなパーツやゴージャスなインテリアを絶妙なバランスで組み合わせ、遊びゴコロあふれる部屋を生み出す気鋭の空間デザイナーです。
さて前置きが長くなりましたが、なにはともあれ、まずは部屋のビフォー・アフターをご覧いただきましょう。DIYリノベにより、劇的に生まれ変わった部屋がコチラです。
これまで大規模な修繕を行っていなかったこともあり、地味な雰囲気だったザ・昭和な部屋が、見事なまでに華やかな空間へと生まれ変わりました。ちなみに、改修に要したのはおよそ7時間。いくら十数人がかりとはいえ、たった半日でここまで激変するとは驚きです。
では、このオシャレルームができあがるまでの経過を見ていきましょう。
うん、楽しそうですね。今回は女性の比率が高く、終始ワイワイと和やかなムード。近頃は各所でDIYの女子サークルが組織されるなど女性のDIY熱が高まっているなんて話も聞きますが、確かにそのムーブメントを感じさせる盛り上がりっぷりでした。
なかには「DIYには前々から興味があったけど、自分が借りている部屋は大家さんがそれを許してくれない。ぜひこの機会に体験してみたかった」と、あふれんばかりのDIY欲をここぞとばかりにぶつける女性参加者もいたのですが、体験後はさらにその意欲が高まったようで「自分の部屋でもやりたいので大家さんを説得してみます! 駄目なら引越します」と改めて闘志を燃やしていました。確かにこの部屋の出来栄えを見たら、火がついてしまうのも致し方ないでしょう。
ちなみに、今回のワークショップは高島平団地にも導入予定のUR「DIY住宅」で行われました。通常、賃貸物件は入居者が入れ替わる度に改修が行われますが、「DIY住宅」の場合はあえて清掃と最低限の設備だけの状態で引き渡されます。そのぶん、DIYで自分好みの改修が楽しめ、原状回復も原則不要(退去時に修繕費を請求されない)。古い物件でもここまで変えられるなら住みたい人はいるでしょうし、UR側としてもDIYによりむしろ物件の価値が上がるのであれば、修繕費をかけて業者にリフォームしてもらう以上のメリットがあるのかもしれません。
ただ、こうした特殊な賃貸物件でなくてもカスタマイズを楽しむ方法はあるようです。今回のワークショップで行われたのはリビングのペイントを除き、基本的には「賃貸の原状回復に抵触しないカスタマイズ」、すなわち部屋を傷めたり傷つけたりせずにできるDIYが中心でした。壁や建具に張ったクロスも床のクッションフロアも既存の内装の上から施工でき、粘着力がありながらもキレイに剥がせる接着剤を使用しているので、カンタンに元通りの状態になります。これなら退去時に修繕費用を求められる心配もないでしょうし、特別な技術も不要ということで、誰しも手軽にトライできそうです。賃貸でも衣替え感覚で気軽に内装を楽しむ時代が、すぐそこまでやってきているのかもしれませんね。
なお、完成した部屋はモデルルームとして公開される予定。興味のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか?