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こんな校則、アリ?

 未成年者の多くは学生です。朝から夕方まで、あるいは一日働いた後貴重な何時間かを過ごす学校生活は、成長途上にある青少年にとって重大な意味を持ちます。
 もちろん、家庭生活も子どもの人格形成に大きな影響を及ぼしますが、学校は家庭のようなプライベートな空間ではなく、社会の一部であることが大きな相違点でしょう。社会であるからには、人と人とを規律するルールが存在します。彼らはそこで、社会生活のルールをも会得していくのです。
 今回は学校生活で起こりうる問題、特に学校側と児童・学生の間に緊張が生まれる場合を中心に取り上げてみました。

校則が異常に厳しいのですが

Q.

 息子が通う中学では、制服から靴下・ハンカチの色、ヘアースタイルまで厳しく校則で決められています。他校とくらべても異常に厳格だと思います。
 こんな校則に従わなければならないのでしょうか。

A.

 学生といえども、表現の自由(憲法21条)、幸福追求権(同13条)を保障されることは当然です。
 ただ、成長途上にあること、団体生活であることに配慮して、大人と同様の程度まで権利が保障されない場合があり、その一つが校則による制限だと考えられます。
 したがって、何よりもまず学生に利益となるよう配慮されたものでなくてはなりません。厳しすぎる校則は学生を萎縮させ、主体性や自己表現の楽しみを奪ってしまう恐れがあります。

 そもそも校則は、あくまで各学校がその校風・教育方針の指針とすることを目的として自主的に定める規則ですから、時代や情況に応じてより良い教育効果がもたらされるよう変更していくべきであり、硬直したものであってはなりません。
 欧米では、学校・生徒・保護者の代表からなる学校運営について検討する組織が設置され、校則の変更についても協議されるということです。日本では旧文部省が、1988年に厳しすぎる校則の見直しを指示した経緯があります。息子さんの学校でも、生徒会、PTAなどで意見をまとめ、変更に向けて話し合ってみてはどうでしょうか。

所持品検査・没収は許されますか

Q.

 校則では所持品検査が認められています。息子は塾の友達に返すつもりでヘルメットを持って行き、所持品検査で没収されてしまいました。没収されると1週間返してもらえないことになっています。
 こんな校則が許されるのでしょうか?

A.

 憲法は、所持品を勝手に検査されたり没収されたりすることのない権利を保障しています(35条)。令状がない場合は、たとえ捜査のためであっても、所持品検査や没収を強制することはできないのです。

 学校が生徒指導上必要と考え、やむをえず行う場合であっても、その目的から見て相当な方法で、学生の人権に配慮しつつ行わなければならないのは当然です。法令で所持が禁止されている物や危険物は別段、ヘルメットを没収することに合理性があるとはいえず、学生の人権を侵害する不当な行為です。

体罰は許されますか

Q.

 高校生の息子です。体育の教師がしばしばビンタするそうです。理由は、集合が遅いとか、たるんでいるからといった、はっきりしないものだそうです。
 教育のためなら体罰も許されるのでしょうか?

A.

 教育上必要だということで体罰を課している学校は依然としてあるようです。しかし、体罰は絶対的に禁止されています(学校教育法11条但書)。教育上必要があると認められるとき、懲戒をすることは許されますが、体罰禁止に例外はありません。

 もし、その教師に限って体罰をしているのなら、学校側にその事実を知らせて対応してもらわなければなりません。学校ぐるみで体罰が習慣化しているような場合は、教育委員会などに相談するほうがよいでしょう。

体罰が原因でケガをさせられました

Q.

 息子は教師に叩かれた拍子に転び、机の角で頭を打ち大ケガをしました。誰に、どのような責任が問えるのでしょうか?

A.

 刑事上、民事上の責任追及が可能です。

 まず、刑事責任としては、教師本人を傷害罪(刑法204条)で告訴することができます。教師の行為は教育上の懲戒を逸脱したものです。前述のように、学校教育法でも体罰は禁止されているのです。

 次に、民事責任としては、学校が国公立か、私立かで違います。国公立の場合には学校の設置者である国、地方公共団体に損害賠償請求します(国家賠償法1条)。本人は、地方公務員法により、戒告・減給・停職等の懲戒処分を受けることになります(29条)。また、監督者である校長も同様に処分されることがあります。
 私立の場合は、債務不履行(民法415条)、不法行為(同709条)に基づき、教師本人および当該学校法人に損害賠償請求します。

 その他には、日本体育・学校健康センターから、災害救済給付金(医療費、見舞金)を受けることができますが、事故の責任を問う性質のものではありません。
 また、法務局の人権擁護委員会・弁護士会に人権救済の申立てをして、これらの機関から学校・教育委員会に対し勧告や警告を行ってもらうこともできます。

子どもが登校拒否しています

Q.

 中学生の娘です。近頃学校へ行きたくないというようになりました。私は少し様子を見た上で対処してやりたいと思っているのですが、学校からは登校させるように通告書が届き、「登校させないと保護者として就学義務違反になる」などと書いてあります。
 どう対応したらいいでしょうか?

A.

 就学義務とは、子どもの教育を受ける権利(憲法26条1項)を実現させるために親が負う義務(同条2項)、それを踏まえた学校教育法17条1項(小学校)、同2項(中学校)などの規定を指します。
 そして、これらに違反するとは、親が子どもを働かせて学校に行かせないなど、正当な理由がないのに子どもの教育の機会を奪うような行為をすることをいいます。身体的に虚弱な子どもや不登校の子どもなどを必要に応じて休ませたりすることを指すのではありません。

 登校することが子どもの負担になるような場合には、むしろ様子を見て対応を考えるほうが子どもの成長に資する場合もあります。学校や教育委員会と話し合いの機会を持ち、彼女にとってベストの方法を選んであげればよいのです。

自主退学勧告に応じないと退学処分にする、といわれたのですが

Q.

 娘は体が弱く、学校に行ったり休んだりの繰り返しです。通っている学校は有名な進学校で、成績も低調な娘への対応に困るのか、「長期にわたって休むのなら自主退学するか、そうでなければ退学処分にせざるをえない」と言ってきました。
 退学処分になれば次の受入れ校を探すとき不利になると聞いたことがあるので、このままでは自主退学するしかないとも思い、困っています。

A.

 学校教育法施行規則26条3項は、退学処分の対象となる学生について、次のような厳しい要件を定めています。

  1. 性行不良で改善の見込みがないと認められる者
  2. 学力劣等で卒業の見込みがないと認められる者
  3. 正当な理由がなくて出席常でない者
  4. 学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者

 退学処分は、学生からその身分を奪う最も強硬な処分である以上、学校が恣意的にできるものではないことがお分かりでしょう。自主退学の勧告も、形式上は自分から退学する形を取っていますが、勧告に従わなければ退学処分にするというのですから、事実上の退学処分と変りません。
 そうであるならば、勧告による自主退学についても、これらの要件を満たすときにのみ認められると考えるべきです。いわんや、教育機関である学校が、成績の伸び悩みを疎んじて退学を勧告するのは、許されることではありません。

内申書の内容を確認したいのですが

Q.

 中学生の息子が受験を迎えることになりました。ところが、2年次担任だった教師がかなり思想的に偏った人で、息子とはホームルームなどでしばしば衝突しており、内申書が正当に作成されているか疑問に感じています。
 内申書の内容を確認したいのですが、このような要求はできるのでしょうか?

A.

 内申書は、正式には調査書といい、中学校が指導要録に基づいて学生の成績・出欠・性格・行動の記録などを独自に記載し、進学希望の高校に提出するものです。その内容は学校が把握する学生の自己情報にほかなりません。
 そうであるならば、憲法13条が保障するプライバシー権の現代的変容として、かかる情報の本人への開示は積極的に認められるべきでしょう。

 最近では、個人情報保護条例に基づく開示請求に対し内申書の開示を認めるべきだという判断(個人情報保護審査会・大阪府高槻市)も出されるようになっては来ましたが、開示に踏み切る学校はまだ少ないようです。担任や進路指導の担当と話し合い、理解を求め、開示してもらいます。
 非開示の決定に対しては個人情報保護審査会に不服申し立てをすることができ、審査会も非開示を支持した場合は非開示処分の取消しを裁判上でもとめることになります。

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