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小野 有理
2014年4月24日 (木)

自分の暮らしに愛着を持つ。ハンドメイドタウンでの体験で気づいたこと

ワークショップを終えてみんなで集合写真。つくったレンガはじっくり干されて、街のみんなが使える石窯になる(写真撮影:SUUMO編集部)
写真撮影:SUUMO編集部

今年6月、東武野田線(アーバンパークライン)清水公園駅(千葉県野田市)の目の前に、従来とは一風変わった約500区画の街が誕生する。名前は「ソライエ清水公園アーバンパークタウン(以下、ソライエ清水公園)」。「自然を感じる暮らし」「自分らしい暮らし」「コミュニティでつながる暮らし」を街づくりのコンセプトとし、「ハンドメイド」や「環境共生」をコンセプトに置いている。
販売前の3月16日、街の暮らしを考えるフォーラムに合わせて、近隣住民を巻き込んだ「日干しレンガづくり」のワークショップが開かれた。なぜ「日干しレンガ!?」。家と私たち住み手の、新しい関係性について考えてみる。

「手は何よりも使える道具」。手から手へ、つながるコミュニティの先に

朝11時、快晴。清水公園駅前に広がる分譲区画には、抜けるような青空によくマッチした、大きなブルーシートが敷かれている。シートの上では、子どもたちのはしゃぎ声。思い思いの場所で、木型に粘土をぎゅうぎゅう押し込みレンガをつくっている。最初はおしゃべりしていたお母さん方も、20分後にはすっかり真剣な面持ちで粘土と格闘している。

自分の暮らしに愛着を持つ。ハンドメイドタウンでの体験で気づいたこと

【画像1】近くに住む親子。最初ははしゃぎながらスタートしたレンガづくりも、重い粘土を木枠の隅に押し込むのに一生懸命。表面をコテでならす姿も真剣そのものだ。「このレンガの石窯で、私たちも新しく来る方と一緒に何かできれば楽しいですね」(写真撮影/スーモ編集部)

「手は何よりも使える道具です」と説明され、始まったワークショップ。手袋をはめた手でレンガ原料の弾力を感じながら木型に押し込み、初めての左官コテを使い表面を平らにする。青空の下、手の感覚を楽しみながら作業していると、初対面の相手でも会話が弾む。そのうち、でき上がったレンガの表面には、絵や自分の名前が描かれだした。真面目な面持ちの大人たちも、意外にかわいらしいイラストを描いている。

この物件が掲げるコンセプトのひとつ、「ハンドメイド」の一端がここにみられる。「私たちの暮らしは本当に豊かでしょうか」と、ソライエ清水公園のプロデューサーである甲斐徹郎さん。

「『自分色に染める余地のない家』よりも『自分らしい暮らしに沿い手を入れられる家』が今こそ必要なのでは」。確かに、生きている限り、私たちは多くの人に会い、日々変化し成長する。暮らしを支える家や街は、この私たちの自然な成長を受け止められる箱であってほしい。最近のDIYやリノベーションの流行は、その思いの裏返しとも言えるだろう。

ワークショップでつくったレンガは、街の人々が使う石窯になるそうだ。ここでは、街の顔となる駅前の広場に、石窯を設置し住民の憩いの場となるカフェと工房がつくられる。住民は、この工房を自由に使って専門のスタッフからアドバイスを受けながら自宅に手を入れる(DIYする)ことができる。
だからこそ、この街では、住人が家に手を入れられる余地(楽しみ)を残して販売する。でも、決して中途半端なものを売っているわけではない。素人でも簡単に楽しめるような箇所(ウッドデッキや壁の塗装の一部など)をあえて残し、入居者自身がハンドメイドを実践できるようにして販売する。

ハンドメイドのツールをそろえた工房が拠点となって、ソライエ清水公園というものづくりの街は近隣住民と助け合える街にもなる。こうやって住民の暮らしはどんどん、地域に根を張っていく。「ハンドメイドは有機的な街づくりにつながる」(甲斐さん)のだ。

野田には、関東平野の豊かな自然が詰め込まれている

東武野田線は4月1日から「東武アーバンパークライン」という愛称が導入された。この愛称の通り、清水公園という都心近郊では有数の自然を満喫できる立地ながら、都心(秋葉原)までは1時間弱で通勤可能だ。野田市は古くから味噌や醤油の醸造が盛んな地。江戸時代には野田市を中心に醤油業が栄え、今では全国の醤油出荷量の約1/3を占めているという。日本を代表する醤油メーカー、キッコーマンが本社を置くことでも有名だ。

清水公園はもともと、1894年にキッコーマン創業者の父が、広大な敷地を活かしてつくった遊園地を自然公園にしたもの。大きさは東京ドーム6個分。創業から120年もの間、地域に密着して自然を育み地元に愛されてきた。日本最大級のアスレチックフィールドを始めとして、500種もの季節の花をそろえたフラワーガーデン、キャンプ場など自然とともに遊ぶための空間が広がっている。

自分の暮らしに愛着を持つ。ハンドメイドタウンでの体験で気づいたこと

【画像2】大自然を活かした清水公園内のフィールドアスレチック。大人も子どもも思う存分楽しめる公園だ(画像提供/清水公園)

豊かな自然と都市の利便性をダブルで享受できる、この土地の利を活かさない手はない。二つ目のキーワード、「環境共生」がしっくりくる。

自分の暮らしの責任は自分で持てる。だからこそ自由な家づくりを。

ソライエ清水公園で提供される住宅は、パッシブハウスと呼ばれる工夫が施される。家の快適性を、エネルギーを使った機械の力で維持するのではなく、自然の力をうまく使って快適に保つ工夫のことをパッシブと呼ぶ。

パッシブハウスは、家が外に向く仕組みだ。これまでの住宅は、自宅だけをエネルギーを使って快適にする、内側を向いた家だった。

ソライエ清水公園では、家の中をエアコンで空調整備するのではなく、夏は風が通りやすく、冬は日だまりが暖かい家を、その土地の特性を考えながら建てていく。周りの自然を最大限に活かすべく、さわやかな風の元となる樹木を植え、風の通りを妨げないような住戸配置。自然と、住民の視点が外に向き、コミュニティが生まれる仕組みにもなっている。

パッシブハウスがもたらす「外へ向いた家」は、樹木の管理など「手入れが必要な家」でもある。環境と共生していこうと考えるとき、ハンドメイドは相性がいい。「住宅業界は、購入者が手入れをしなくても良いように、隅々まで完璧で『問題の無い』住宅を提供してきた。

しかし、これでは住み手はいつまでも『お客様』のまま。家を『自分らしく』変える選択肢もわずかなままだ。住み手がお客様の意識を持つと、周辺のコミュニティへの関与も限られ無機質になる。住宅業界にとっても、住み手側にとっても最適な関係とは言えないのでは」と、甲斐さん。

完璧に出来上がって手を入れる余地のない家より、自由に自分らしく家に手を加えたいと考える人々が増えている。DIYしかり、リノベーションしかり、壁紙を変えられる賃貸住宅しかりだ。実は、今回取材して最も印象深かったのは、子どもたちの真剣に取り組む姿と、レンガづくりを通して初めてでもすぐ打ち解け笑顔になる、笑顔の連鎖だった。

大人の難しい意図は気にせず、子どもたちは根っからの実践者。この街の子どもたちは、清水公園という自然に育まれ、工房を中心とする手づくりのコミュニティの中で、自らのクリエイティブを磨くだろう。暮らしの達人になるんだろうな、という予感がした。この街のこれから、が楽しみな一日だった。

自分の暮らしに愛着を持つ。ハンドメイドタウンでの体験で気づいたこと

【画像3】皆でつくったレンガ。これからじっくり乾かして、街の石窯のひとつになる。「私のつくったレンガはどこに使われるんだろう」、そんな声が聞こえてくる。出来上がった暁には今一度、自分のレンガを確かめに来たいような感覚。愛着がわくというのはこういう事なんだろう(写真撮影:SUUMO編集部)

なお、4月26日(土)には、「住民モニター募集」説明会が開催予定とのこと。「ソライエ清水公園アーバンパークタウン」では住宅2邸が、DIYに必要な部材の無償提供、専門家によるプランニングとDIY作業のサポートがついてくるモニター住宅として販売される(モニターはハンドメイド実践例や街の魅力を情報発信するなど)。家に手を入れ自分らしく住むことに興味がある人は、清水公園のアスレチックで遊ぶついでに話を聞きに行ってみるのもいいかも。詳細は、下部に掲載している公式ホームページURLをチェックしてください。

●ソライエ清水公園アーバンパークタウン
HP:http://www.solaie.jp/shimizu/
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