平成27年1月から「相続税」改正により、課税対象者が増えると言われている
(参考:https://suumo.jp/journal/2014/03/31/60098/)。「二世帯住宅」や「賃貸併用住宅・店舗併用住宅」を建てることで相続税対策になるのであれば、正しく理解して、賢く取り入れたいもの。前回の「二世帯住宅編」に引き続き、今回は「賃貸併用住宅・店舗併用住宅」について紹介しよう。
相続税の概要については、こちら(二世帯住宅編):
https://suumo.jp/journal/2014/05/09/62635/)
平成25年の税制改正により、相続税の基礎控除額は平成27年以降、下記のように引き下げられることになった。
基礎控除までの遺産額なら相続税は課税されないが、この基礎控除額を超えると相続税の対象に。つまり、基礎控除額の引き下げにより、相続税の課税対象者が増える可能性が高まったというわけだ。
これを緩和するため、拡充されたのが「小規模宅地等の特例」。居住用や事業用の宅地等については、一定面積まで評価額が減額されるという特例だが、下記のように居住用の宅地の限度面積が拡大されるとともに、居住用宅地と事業用宅地の完全併用が可能になるなど、これまで厳しく定められていた要件が緩和されることになったのだ。
◎居住用と事業用の宅地の適用面積
【改正前】居住用240㎡・事業用400㎡までの合計400㎡まで適用可能
↓
【改正後】居住用330㎡・事業用400㎡までの合計730㎡まで適用可能
前回取り上げた「二世帯住宅」(https://suumo.jp/journal/2014/05/09/62635/)とともに、相続税対策として注目されているのが「賃貸併用住宅・店舗併用住宅」。自宅の建物の中に賃貸マンションやアパート、貸店舗などの賃貸スペースをつくることにより、入居者からの家賃収入を得ることで、ゆとりのある土地を有効活用することができるという住宅プランだ。
「賃貸併用住宅・店舗併用住宅」は、自宅スペース・賃貸スペースをどのように配置するかによってさまざまなプランが可能。例えば1階を自宅にして2階以上を賃貸マンションやアパートにすれば、自宅は駐車スペースや庭に直結し、階段の上り下りが少ない平屋感覚の暮らしが可能となる。また、最上階を自宅にすれば、より採光・通風条件の良いスペースに自宅を構えられ、眺望を楽しんだり、屋上を利用したりすることも可能。エリアなどによっては、1階部分を貸店舗にすることもでき、さまざまなスタイルで土地を有効活用できる。
「賃貸併用住宅・店舗併用住宅」の最大の魅力は、なんといっても家賃収入。家を建てる際、住宅ローンの返済は大きな負担となるが、建物の一部に賃貸スペースを設けた「賃貸併用住宅・店舗併用住宅」なら、入居者からの家賃収入を住宅ローンの返済にあてることもできる。つまり、専用住宅として建てる場合よりも借りられる金額が増えるため、高額だからとあきらめていた仕様を取り入れることもできる。また、ローンを完済した後も家賃収入は得られるので、将来の安定収入として見込むことができ、老後の暮らしにも大きなゆとりをもつことができるのだ。
所有する土地にゆとりがある場合だけでなく、新たに土地を購入して賃貸併用住宅・店舗併用住宅を建てる場合もメリットは大きい。住宅ローンの返済に家賃収入をあてることにより、例えば地価の高い人気エリアに一戸建てを建てるとしても、専用住宅を建てる場合に比べ、少ない費用負担で可能になるというわけだ。
さらに、「賃貸併用住宅・店舗併用住宅」は将来のライフスタイルや家族構成の変化に対し、フレキシブルに対応できるのも大きなメリット。例えば二世帯住宅を建てる際、いずれは親世帯部分をリフォームして賃貸住宅として活用できるように建てるというのも一案だ。この場合、親世帯・子世帯の生活スペースを内部で行き来できないなど、できるだけ独立性の高いプランにしておくことにより、親世帯スペースだけをリフォームすれば賃貸スペースとして活用することができる。さらにまた将来、自分の子ども世帯との二世帯住宅として暮らす場合には、二世帯住宅に戻すこともできる。というわけだ。
反対に、今は賃貸併用住宅・店舗併用住宅として建てておき、将来は賃貸部分をリフォームして二世帯住宅に…といったことも可能。ライフスタイルや家族構成の変化に合わせて、自宅スペースを拡張・縮小できるというのも大きなメリットだ。
また、現在の住まいの老朽化が進んでいる場合、安心して暮らせる新築住宅に建て替えて老後を快適に暮らすことができる、というだけでもうれしい話。しかも、副収入を得て、相続税対策も同時に行えて、とさまざまなメリットがある。
このように、さまざまな発想でフレキシブルな計画を立てることができるのが賃貸併用住宅・店舗併用住宅。二世帯住宅の計画と併せて考えることにより、さらにさまざまなケースに対応できる住まいとなりそうだ。また、総合住宅展示場でモデルハウスを見学することも可能だ。
「二世帯住宅」かつ「賃貸併用住宅・店舗併用住宅」で建てる場合、相続税の改正により自宅部分と賃貸部分の「小規模宅地等の特例」の評価額減の他に貸家建付地としての評価減額を併用できる。
また、賃貸部分の評価額は居住建物の評価額よりも30%ほど減額になる。詳しくは国税庁のホームページ(http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku/aramashi/)で確認しよう。
もともと賃貸併用住宅や店舗併用住宅を検討していた人にとっては、今回の相続税改正はメリットも多いといえそう。ただし、「賃貸併用住宅・店舗併用住宅」を建てるということは、「貸付事業」を「経営」するということ。言ってみれば会社を起業するのと同じくらい、「事業設計」が必要だ。その土地にあった賃貸需要の分析をし、どんな賃貸物件にすれば借り手がつくのかなど、空き室になるリスクを極力回避するための経営戦略・経営努力が求められる。さまざまなリスクもあるということを十分理解したうえで、信頼できる住宅メーカーやファイナンシャル・プランナーに個別相談し、活用できる制度は有効に活用しよう。