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米テック系メディアTechCrunchが23日、アップルが今年5月に買収した定額制音楽ストリーミングサービス「Beats Music」を終了するとレポートして、ネットが一瞬にして騒がしくなりました。

TechCrunchは、有名なアップル社員やBeats社員を含む5人のソースからの情報として、Beats Musicのエンジニアの多くはすでにアップル社内でiTunesなど別プロジェクトに移動しているとレポートしていました。

しかしその後アップルはTechCrunchに対して、終了するレポートは事実ではないと伝えてきました。

さらに米メディアRe/codeの取材に答えたアップルのPR担当者Tom Neumayrは、TechCrunchのストーリーは事実ではないと改めて強調。音楽ストリーミングは今後も生き残ることが確認されました。

しかしRe/codeは、Beats Musicとアップルについてもう少し深堀りした情報をレポートしています。それはBeats Musicの将来についてのアップルの計画。

アップルの事情に詳しい情報ソースによると、アップルは音楽ストリーミングサービスを終了することはしないながらも、サービスには徐々に修正を加えていく予定で、「Beats Music」のブランド名を変更する可能性もありえると報じています。

もしこれがアップルの計画している「終了」を意味しているのであれば、TechCrunchがつかんだ情報も一部は事実と言えるかもしれません。サービスは別のブランド名で継続し、Beats Musicの名前だけが他のサービス名に変わることを示唆しているともいえます。

想像できるのは、何かしろ「iTunes」ブランドと紐付けたサービス名に変わることが予想できます。先日のアップルとU2の無料アルバムダウンロードもそうですが、iTunesのブランド力と影響力は今のアップルのネットサービスにとって欠かすことができません(U2のアルバムが勝手にiPhoneにダウンロードされるシステム的問題は別として)。ビジネス的にもiTunesが5億人規模のユーザーアカウントを保有しているのに比べ、Beats Musicは今年1月に開始し獲得した有料会員は25万人規模と言われるほど認知が広がっておらず、Spotifyの有料会員数400万人以上とは比べ物になりません。

5月の買収からもうすぐ半年が経とうとしていますが、アップルがBeatsにおける製品戦略を未だに提示していないことも気になります。また、先日行われたiPhone 6 / 6 PlusとApple Watchの発表会でも、Beats MusicがiPhoneやApple Watchと一緒に紹介されることはありませんでした(U2の「Songs Of Innocence」がBeats Musicで配信去れることには触れたが)。

さらにBeats MusicのCEOイアン・ロジャースがアップルの無料ストリーミングサービス「iTunes Radio」責任者を兼任するという位置付けも、Beats MusicよりもiTunesサービスへ注力させる動きの1つかもしれません。

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音楽ストリーミングサービスの分野は、SpotifyやRdio、Google Music、YouTubeやPandoraなど競合が数多く存在し、それぞれユーザーの獲得にしのぎを削っています。Beats Musicでは、音楽ライターなど人的なキュレーションによる音楽プレイリストやレコメンデーションを売りに、他社と差別化を図っていることは、「ヒューマンキュレーション対アルゴリズム」による音楽との出会い方の議論が広がる世界の音楽業界内で高い注目を集めています。

はたしてアップルは音楽ストリーミングサービスでどんな戦略を生み出せるのか、iTunesとの住み分けはどうするのか、音楽をダウンロードする消費者を満足させながら、音楽をストリーミング再生する消費者を獲得できるのか。アップルの音楽戦略が今年から来年には大きく動きそうです。

ソース
Apple Plans To Shut Down Beats Music (9/23 TechCrunch)

Apple’s Beats Music Brand May Go Away. Apple’s Beats Music Service Is Sticking Around. (9/23 Re/code)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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