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2012年11月10日 (土)

大阪府の給食率は10.5%。全員給食に取り組む大阪市の思惑とは?

大阪府の給食率は10.5%。全員給食に取り組む大阪市の思惑とは?
Photo: Comstock Images / thinkstock

大阪市が市内の中学校に「全員給食」を2013年度中に導入する方針を固めたことが先日報道された。

文部科学省の調査によると、2010年度の公立中学での「完全給食」の実施率(学校数ベース)は全国平均で82.4%。しかし、大阪府は全国最下位の10.5%、大阪市にいたっては、2008年の段階では市立の中学校全てが「未実施」で、「家庭弁当持参」を基本としていた。

「未実施」から「全員給食」へと大きな変革を計画する大阪市。その目的とは一体どんなものなのだろう。大阪市に直接お話を聞いてみた。
今回答えてくれたのは、大阪市教育委員会事務局の学校保健担当である堀川隆史さん。

「これまで大阪市の中学校では、家庭からの弁当持参を基本としており、8割以上の生徒が弁当を持参する状況にありました。しかしながら一方では、家庭弁当を持参しない生徒は、パンやおにぎりといった簡易な食事で済ませるケースも多く、そういった生徒の栄養バランスを心配する声も上がっていました。そこで、平成24年9月から市内45校において『家庭弁当との選択制』を導入しながら中学校給食を開始、来年1月からは、新たに52校において同様に中学校給食を開始予定となっております。また他の中学では、平成25年度以降に『全員給食』とするか『家庭弁当との選択制』とするかは、区長が区民の皆様のご意見をお聞きして判断する予定です。『全員給食』となった区は、早ければ平成25年9月から移行します」

行政の判断だけでなく、区民と意見交換をしながら「全員給食」は導入されているようだ。では、その給食の内容とは?

「弁当箱でのデリバリー方式により実施しております。民間の調理事業者が給食を弁当箱に詰めて学校へ配送し、給食時間に配膳します。配膳等が迅速にできることから、現在の授業時間や行事等の教育活動への影響が最も少ない方式です。また献立については、教育委員会が安全で良質な食材を調達し、成長期の中学生に必要な栄養量、栄養バランスに十分配慮した献立を作成します。そして骨の成長に必要なカルシウムを摂取できるよう牛乳を提供しています」

なお、大阪市では平成24年3月以降、各区において中学校給食等をテーマとした区民の集まりを開催し、また独自のアンケート調査を実施するなど、さまざまな方法で区民の意見を聞き取ってきた。そこでは以下のような声が上がったという。

「全員給食」を希望する保護者
・「学校給食」とは、全員で食べるのが当然のものである
・家庭弁当は、夏場は傷みやすく、衛生管理に不安がある
・栄養バランスのとれた弁当を毎日つくり続けるのは大変である
・つくる人の体調不良等により、弁当がつくれないことがある

「家庭弁当との選択制」を希望する保護者
・わが子の好みや体調に合わせて、食事内容や分量を調整できる
・学校給食の場合、アレルギーなどの個別対応が十分にしてもらえない
・親や家庭のぬくもりをわが子に伝えることができるとともに、弁当をきっかけに親子の会話が広がる

双方の意見とも十分に理解できる。「全員給食」か「家庭弁当との選択制」か、各家庭の状況にもよるが、両者のメリット・デメリットを考え、多角的な視点から検討しなくてはならないだろう。保護者、また各区としても難しい判断を迫られることになりそうだ。

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