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グラミー賞受賞アーティスト、アリシア・キーズはマドンナやU2のマネジメントを手がけるガイ・オセアリー(Guy Oseary)とロン・ラフィット(Ron Laffitte)と新たにマネジメント契約を結び、キーズ本人とキーズの会社AK Worldwideにおける音楽ビジネス、新規事業、慈善活動を強化していきます。

マドンナのマネージャーでありビジネス・パートナーでもあるオセアリーは、エンターテイメント・サービス会社MaverickのCEOを務めています。また最近ではU2のマネジメントも手がけ始めました。さらに俳優のアシュトン・カッチャー、投資家のロン・バークルと共に投資会社「A-Grade Investments」を設立、 Spotify、Uber、Shazam、Soundcloud、Airbnbなどテック系スタートアップを支援しています。

ラフィットは、現在ファレル・ウィリアムス、OneRepublicのマネージャーを務めています。

キーズは今年ファッションブランドのジバンシィと契約、キャリアで初めてビューティ・ブランドからのエンドースメントとなりました。その他にはリーボックとのコラボによるスニーカーをデザインするなどしています。ですが、彼女の知名度やブランドイメージを考慮すると、ブランドや企業とのパートナーシップを今後さらに拡大できる可能性があります。

また彼女はHIVに感染した子供や家族を支援する団体「Keep a Child Alive」の活動を積極的に行うなど、音楽以外での社会活動に力を入れているアーティストの一人です。

アリシア・キーズのマネージャーは、2010年からRed Light Managementのウィル・ボットウィン(Will Botwin)が務めてきました。

デジタル時代に増すマネージャーの重要性

アリシア・キーズと新たなマネジメント契約は、スマホやソーシャルが普及しているデジタル時代に、アーティストのブランディングを強化する目的があると予想されます。CDやダウンロードの売上だけが優先事項でなくなった今の音楽産業において、ネットで話題性を作り、ファンとのつながりを向上できるかは、アーティストのビジネスとクリエイティヴ両方で大きな影響を与えます。

例えば、U2は今年1月に行われたスーパーボールのテレビCMを使って新曲を発表する、大規模なPR戦略を実施しました。さらにU2は、アップル(iTunes)と大手銀行バンク・オブ・アメリカと協力して、楽曲のフリーダウンロードを実施、そしてダウンロード1回あたりにつき、ボノの慈善団体(RED)に義援金を寄付する、チャリティ企画を期間限定で行いました。

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その結果、60秒のテレビCMから始まったチャリティ企画は3億円以上の寄付金を集める結果となり大成功を収めました。

この戦略を立案したのは、今回アリシア・キーズが契約した、ガイ・オセアリーと言われています。

デジタルに精通した戦略を立てられるマネージャーは、アーティストにとってビジネスパートナーでありコンサルタントであり、マーケッターでもあります。日本ではまだまだアーティストがテレビCMとタイアップすることが重要視されますが、情報量が増え続ける現代において、どのように人とつながり、共感共鳴を得られるかは、アーティストの長期的戦略において重要視されてきています。デジタル時代に適したアーティストのブランディングにおいて、既存価値にとらわれない、新しい要素を兼ね備えたマネージャーの存在価値は高まりつつあります。

アリシア・キーズは2012年の「Girl on Fire」リリースを経て現在6枚目のアルバムの準備にとりかかっています。これまでグラミー賞を15回受賞し、米国だけでアルバム1840万枚以上の売上を記録し、実績、アーティスト性、社会貢献意欲の高いアリシア・キーズが今後どのようなデジタル戦略を仕掛けてくるのか、注目です。

ソース
Alicia Keys Signs with Guy Oseary and Ron Laffitte(7/18 Billboard.biz)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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