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やまくみさん正方形
山本 久美子
2014年1月31日 (金)

住宅の購入・建築を検討するなら、消費税を正しく理解しておこう

写真: iStock / thinkstock
写真: iStock / thinkstock

リクルート住まいカンパニーが、「消費税増税が住宅購入・建築検討者に与える影響調査」の結果を公表した。それによると、「増税前に購入・建築をしたい」と回答した人が6割いる一方で、「個人間売買の中古住宅は非課税」「増税の影響を平準化する措置が検討されている」ことの認知は3割未満だった。消費税について正しく理解しているか、再確認してほしい。

消費税増税前に住宅を購入・建築したいといいながら…

リクルート住まいカンパニーは、首都圏、東海圏、関西圏及び札幌市、仙台市、広島市、福岡市に在住の住宅の購入または建築を検討している人を対象に、2013年11月に、「消費税増税に関する住宅検討意向調査」を実施した。

消費税増税決定後「増税前に購入・建築をしたい」と回答した人は59.4%で、消費税増税決定前の57.4%から2.0ポイント増加。依然として、増税前の購入・建築の意識は高いということが分かった。

住宅の購入・建築を検討するなら、消費税を正しく理解しておこう

【図1】(出典:リクルート住まいカンパニー『消費税増税が住宅購入・建築検討者に与える影響調査』)

また、消費税が上がるタイミングの認知度(2014年4月から8%: 93.9%、2015年5月から10%(予定):74.0%)は高い一方で、「土地の売買については非課税取引で、消費税増税の影響を受けるのは建物の売買価格のみ」40.4%、「課税されるのは契約時ではなく引き渡し時」31.3%、「個人間売買(一般的に最も多い取引形態)の中古住宅は非課税」24.8%、「増税の影響を平準化すべく『必要な措置』を検討することが法案の附則に盛り込まれている」23.3%と、まだ正しい情報を認識している割合は低いことが分かった。

住宅の購入・建築を検討するなら、消費税を正しく理解しておこう

【図2】(出典:リクルート住まいカンパニー『消費税増税が住宅購入・建築検討者に与える影響調査』)

調査結果で特に認知度の低かった、中古住宅の消費税と増税の影響を平準化する緩和措置について、詳しく説明しよう。

消費税増税の影響を受けないものもある

まず、消費税が課税されるのは住宅の建物価格で、土地は非課税。住宅を購入する場合は、建物価格と諸費用の一部などで増税の影響を受ける。住宅を建築する場合は、建築工事費用が課税対象となるほか、土地の造成や整地費用、諸費用の一部などで増税となる。住宅や土地を仲介会社を通して購入した場合は、仲介手数料も増税の影響を受ける。

ただし、中古住宅の場合は、個人が売主の場合は課税対象外。個人が売り出す住宅を宅地建物取引業者がいったん買い取ってそのまま売り出す場合や、買い取った住宅をリフォームしてから売り出す場合などは、課税対象となるので、消費税増税の影響を受ける。

一方で、消費税の影響を受ける宅地建物取引業者から購入する中古住宅の場合は、増税の影響を緩和する措置の恩恵が受けられるが、個人が売主の場合の中古住宅では、緩和措置の恩恵は受けられない。

見逃せない「住宅ローン減税」の拡充や「すまい給付金」などの緩和措置

では、どういった緩和措置があるのか?
まず、「住宅ローン減税の拡充」がある。住宅ローン減税とは、年末のローン残高の1%が10年間にわたり、所得税から控除されるもの。所得税だけで引ききれない場合は、翌年の住民税から一定額まで控除される。現行では、控除の対象となるのは、年末のローン残高の2000万円まで。ただし、2014年4月以降で8%の消費税が適用された場合は、4000万円まで引き上げられるなどの拡充措置が用意されている。

しかし、年収が低いなどで納税額が少ない世帯や住宅ローンの借入額が少ない世帯などは、住宅ローン減税の拡充の恩恵を受けられない可能性が生じる。それを補完するものとして「すまい給付金」が用意されている。補完が目的のために一定の年収以下に限定されるが、8%が適用された場合で10万円~30万円、10%が適用された場合で10万円~50万円が給付される。一定の年収とは、目安として、8%で510万円以下、10%で775万円以下とされているが、実際には都道府県民税の所得割で判断される。

また、「すまい給付金」の場合は、第三者機関の検査によって住宅の品質が確認された住宅という条件も加わる。必ずしも、住宅ローン減税の拡充とすまい給付金がダブルで受けられるとは限らないのだ。一方で、現金で住宅を購入した場合は、住宅ローン減税の対象とならないが、年齢が50歳以上などの一定の条件を満たしていれば、現金で住宅を取得した場合でもすまい給付金が受けられる。

住宅の購入・建築を検討するなら、消費税を正しく理解しておこう

【図3】すまい給付金の給付額(出典:国土交通省『すまい給付金制度 制度概要パンフレット』)

ほかにも、長期優良住宅や低炭素住宅を現金で取得した場合の減税措置も拡充される。
こうした緩和措置があるので、消費税増税前に購入したほうが負担が少ないと必ずしも言えない。

土地1000万円、建物2000万円の住宅の場合、消費税は5%なら100万円だが8%になると160万円となり60万円の負担増となる。しかし、住宅ローンを3000万円(長期固定で金利2%)で借りた場合、10年間の住宅ローン減税は拡充措置により200万円から265万円と65万円の還付が受けられる。つまり、諸費用の増税分を考慮すれば、増税分を緩和措置でカバーできることになる。

もちろん、建物価格や住宅ローンの額、所得税などの納税額などによって状況は異なるが、増税分のほうが多い場合でも年収によっては給付金が受けられるので、増税後の緩和措置を受けたほうが有利となるケースも多い。

増税の防衛策として最も重要なのは、正しい知識を得ることによって冷静に判断するということだ。消費税が増税になるからと言って、あわてて住宅を購入したり、建築したりすることは後悔のもと。増税の影響をきちんと把握し、納得のいくマイホームを得ることこそが大切だ。

●調査結果について
リクルート住まいカンパニー/『住宅購入・建築検討者』の実態調査(2013年度)
HP:http://www.recruit-sumai.co.jp/press/2014/01/2013-38032404.html
●消費税増税の緩和措置については、以下の記事も参照
2014年4月、消費税率が8%に引き上げ!住宅購入に与える影響は?
HP:https://suumo.jp/journal/2013/10/01/53046/
住宅購入時の消費税増税の影響を緩和する「すまい給付金」の詳細が決定
HP:https://suumo.jp/journal/2013/08/01/49301/
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