トップ選手、沖縄で育成目指す 福永さんら那覇にスポーツ教室


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦
トレーニングボールを使って子どもたちと触れ合う福永昇三さん=8日、那覇市銘苅のアスリートアイランドアカデミー

 元プロラグビー選手の福永昇三さん(40)=那覇市=が代表、柔道で五輪3連覇の野村忠宏さん(41)がアドバイザーを務める子ども向けスポーツ教室「アスリートアイランドアカデミー(AIA)」が8日、那覇市銘苅に開校した。トップアスリート同士の幅広い人脈を生かした選手の育成を目指し、将来の目標として沖縄に日本やアジア中からアスリートの卵が集まる「スーパートレーニングセンター」を構想する。東京五輪の開催決定を機に「スポーツの産業化」の議論が進む行政からも熱い視線が寄せられる。

 北島康介、大畑大介、吉田沙保里、上原浩治、井上康生-。AIAの開校に寄せられた花束や祝福メッセージに、そうそうたるアスリートの名前が並んだ。
 ラグビーU-23日本代表、三洋電機(現・パナソニック)ワイルドナイツ初代キャプテン、2008~09年の日本選手権連覇などの実績を誇る福永さん。日本代表クラスの選手が利用する国立スポーツ科学センター(JISS)を通じ、競技を超えて交流を広げた。
 福永さんは高校時代に右ひざのじん帯損傷で回復に1年を要し、精神的にも追い詰められる体験をした。プロになり左ひざを同様に痛めたが、JISSでのリハビリによって約5カ月で復帰でき、けがをしにくい練習法など専門的な理論と支援の重要さを学んだ。
 引退後の12年、「けがでスポーツを断念させないためにも、中高生でも利用できるトレセン(トレーニングセンター)をつくりたい。沖縄はトレーニング環境として計り知れない魅力がある」と那覇に移り住んだ。
 昨年、野村さんと共同出資で「アスリートアイランド」を設立。テニスの錦織圭らを輩出するIMGアカデミー(米フロリダ州)のような、国際的な養成機関を沖縄で展開するという大きな構想を掲げる。
 AIAは幼稚園から小学生を対象にリズム感や体幹など運動能力全般を養う少人数の教室で、まだまだ小さな一歩だ。「経営者としてはルーキーだけど、スポーツ選手が引退後にも関われる場所に広げたい」と、アスリートのセカンドキャリアの場づくりとしても沖縄に可能性を見いだす。
 沖縄総合事務局経済産業部の大城敦史課長補佐は「トップアスリートの周辺にはトレーナーやメーカーがいる。キャンプ・合宿地に加えてアカデミーのような拠点ができれば、スポーツ産業クラスターが形成できる」と指摘する。
 スポーツビジネスの集積を通じた沖縄振興の調査事業を進める中で「行政だけでは掛け声にすぎないが、民間のスポーツベンチャーが出てきた」と期待を込めた。(与那嶺松一郎)