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相続税、改正内容から税対策まで
籠島 康弘
籠島 康弘
2014年11月14日 (金)

相続税の対策はどうする? 親と子で意識の差が大きい

相続税の対策はどうする? 親と子で意識の差が大きい(写真:iStock / thinkstock)
写真:iStock / thinkstock

子どもに資産を残したい親は約89%もいる

来年1月から相続税を支払う人が増えそうだ。相続税は、相続財産(金融資産や不動産)から一定の控除をされた後に、その額に応じて課税されるのだが、この一定の控除=基礎控除の額が1月から下がるからだ。

相続財産は実家(親の家)ぐらいだから、相続税なんてお金持ちのお話でしょ?なんて思っている人は多いだろう。しかし、最近は都市部を中心に土地の価格が上がり始めており、実家(親の不動産)が狭くても、課税対象となるケースが増えるという。そもそも相続税は関係ないと思っている人ほど、親の土地の評価額を調べようとはしないのではないだろうか。

そんな中、住宅メーカー9社が共同で住宅に関する情報提供を行っている「イエノミカタプロジェクト」から、2014年8月に実施した興味深い調査結果が発表された。結婚または婚約している子どもをもつ50歳〜69歳の親世帯を対象に、子どもとのコミュニケーションや相続税対策などについて聞いたものだ。

それによると、子どもに遺産を相続させたいと考えている親は88.6%にものぼる。また相続ではないが、子世帯の住宅取得を援助したいと考えている親は62.7%もいる。このように子どもに資産を残したい、あげたいという親は多い。やはり親にとって子どもは、いくつになってもかわいい子どもなのだ。

【図1】資産をなるべく使わず相続させたいという13.2%と、適度に使って遺産相続させたいという75.4%を合わせると、88.6%の人が子どもへの遺産相続を希望している/出典:イエノミカタ調査

【図1】資産をなるべく使わず相続させたいという13.2%と、適度に使って遺産相続させたいという75.4%を合わせると、88.6%の人が子どもへの遺産相続を希望している/出典:イエノミカタ調査

【図2】住宅を自ら建てる住宅取得の支援より、資金援助を希望する人のほうが多く、全体の約半数の50.6%にのぼる/出典:イエノミカタ調査

【図2】住宅を自ら建てる住宅取得の支援より、資金援助を希望する人のほうが多く、全体の約半数の50.6%にのぼる/出典:イエノミカタ調査

相続税対策を行っている親は約6%しかいない

しかし、相続税が来年1月から改正されることに対して39.4%が相続税を支払う必要があると考えているが、その中で実際に対策していると答えた人はわずか15%に過ぎない。また相続税を払う必要はないと考えている人に、相続税の改正で支払う必要が生じると思うか尋ねると、39.4%の人が「わからない」と回答している。

つまり、相続税の心配をしていても実際に対策をしている人は、全体のわずか5.9%、相続税を支払う必要はないと考えているものの実はよくわからないという人が39.4%いるということ。

【図3】「相続税を支払う必要があり、対策をしている」人は全体で見ると5.9%、相続税を支払う必要があると考えている人の中では約15%の割合だ/出典:イエノミカタ調査

【図3】「相続税を支払う必要があり、対策をしている」人は全体で見ると5.9%、相続税を支払う必要があると考えている人の中では約15%の割合だ/出典:イエノミカタ調査

【図4】「相続税を支払う必要はない」と考えてはいるものの「相続税・贈与税改正により、相続税を支払う必要が生じそう」と感じている人も5.3%いる/出典:イエノミカタ調査

【図4】「相続税を支払う必要はない」と考えてはいるものの「相続税・贈与税改正により、相続税を支払う必要が生じそう」と感じている人も5.3%いる/出典:イエノミカタ調査

生前に相続税対策を怠ったことで、親の家と土地を売ってもまだ足りなかったなんてケースもある。これでは子どもに資産どころか大きな負担を残してしまうことになる。

子どものほうは「相続税とは無縁」「まだ先の話」と考えている

一方で、子どものほうに相続について対策をしているかどうか尋ねた調査がある。リクルート住まいカンパニーが2014年8月に行ったもので、全国の25歳以上〜60歳未満の男女で、親(または配偶者の親)が一戸建て住宅を所有している人に調査したものだ。

それによると、87%が相続税の対策を検討していない・わからないと回答。その理由を尋ねた結果が下記のグラフだ。

【図5】そもそも「相続対策の必要はない」と考えている人と、「まだ先のことだから」のように相続対策の必要に迫られていない人が上位を占める/出典:リクルート住まいカンパニー調査

【図5】そもそも「相続対策の必要はない」と考えている人と、「まだ先のことだから」のように相続対策の必要に迫られていない人が上位を占める/出典:リクルート住まいカンパニー調査

親のほうは先述のように相続税について対策を講じていないし、子どものほうも相続税は無縁のものだったり、まだ先のことと捉えている。つまり親子が相続や相続税について考えたり話し合うという土壌がまだまだないというのが現状だ。

親が元気なうちに、相続税対策を行っておきたい

しかし相続税の改正や土地の値上がりによって、誰もが無縁だと言い切れなくなっているのは前述の通り。また、相続が発生してからでは対応策の選択肢が減る。むしろ「まだ先」である今のうちに、対策を講じておく必要がある。まずは将来相続をどう考えているのかくらいは、親が元気なうちに話すようにしておきたい。

そのきっかけとして、子世帯の住宅取得支援について話してみるのはどうだろう。先述のように62.7%の親は子どもの住宅取得を支援したいと思っている。子どもが家を建てる際に親が援助をすれば、相続する資産を減らすことができる。また二世帯住宅を建てるなら小規模宅地の特例というものがあり、相続税を軽減することもできる。

まずは子世帯の家をどうするか(どうするつもりか)。そこから相続について少しずつ話してみてはいかがだろうか。

ただし下記のように、普段から親とコミュニケーションを取っていない子どもは、親の支援が期待できない可能性が高くなるので、まずは今すぐ親に電話をすることから始めよう。

【図6】子どもとのコミュニケーションが月に1回程度や1回未満だと、支援すると答える人が少なくなり、支援したくないという人も増える傾向/出典:イエノミカタ調査

【図6】子どもとのコミュニケーションが月に1回程度や1回未満だと、支援すると答える人が少なくなり、支援したくないという人も増える傾向/出典:イエノミカタ調査

●イエノミカタ
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相続税、改正内容から税対策まで 2015年1月に改正された相続税。改正のポイントを把握して対策を。なかなかハードルが高い、親への会話の切り出し方も紹介しています。
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