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連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2014年8月20日 (水)

「年収倍率」って何? 自分の年収から住宅購入の予算を立てるには

写真:iStock / thinkstock
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【今週の住活トピック】
「2013年新築マンション価格の年収倍率」と「築10年中古マンションの年収倍率」を公表/東京カンテイ
http://www.kantei.ne.jp/release/PDFs/80bairitsu-new.pdf(新築)
http://www.kantei.ne.jp/release/PDFs/80bairitsu-chu.pdf(中古)

東京カンテイが発表した、「2013年新築マンション価格の年収倍率」は6.59倍(全国平均)、「築10年中古マンションの年収倍率」は4.58倍(全国平均)だった。「年収倍率」は、住宅の買いやすさを示す指標になっているが、実際に自分の年収では、マンションの予算はいくらにしたらよいのだろう?

年収倍率は新築で6.59倍、中古で4.58倍。前年より微増

まず、東京カンテイの「年収倍率」の算出方法を押さえておこう。年収倍率=平均年収(都道府県「県民経済計算」を基にした予測値)÷平均マンション価格(新築の場合は2013年に分譲された新築マンションの価格を70㎡換算したもの、中古の場合は築10年の中古マンションの価格を70㎡換算したもの)で求めたものだ。

年収倍率は低いほど買いやすく、高いほど買いにくいことになるので、新築より中古のほうが買いやすいことになる。また、いずれも前年(新築6.53倍、中古4.56倍)より年収倍率は微増した。全体的に平均年収は高くなる傾向にあったが、マンションの価格上昇がそれを上回った結果だ。

もちろん、エリアによって年収倍率は異なる。
新築では最も買いやすいのは山口県(4.95倍)で、次いで香川県(5.05倍)、鳥取県(5.32倍)の順。逆に最も買いにくいのは、東京都(9.79倍)で、続いて京都府(9.78倍)、神奈川県(9.16倍)の順だ。
中古で最も買いやすいのは香川県(2.94倍)、高知県(3.36倍)、三重県(3.48倍)の順で、逆に買いにくいのは東京都(7.20倍)、沖縄県(6.98倍)、京都府(6.58倍)の順。

最も買いにくい東京都で、新築マンションの年収倍率の推移を見ると、最も高かったのはバブル期の1990年で、実に年収倍率は18.12倍だった。バブル崩壊後は年収倍率は下がり続け、2000年の7.13倍を底にじりじり高くなりつつある状況だ。

「年収倍率」と「年収負担率」で考える 住宅購入の予算の立て方とは?

【図1】新築マンション価格の年収倍率推移(出典「中長期的な年収倍率」東京カンテイ)

年収でいくらまで無理なく借りられるかが基本

さて、「年収倍率」は一般的に5倍程度が会社員にとって買いやすい状況といわれている。中古は比較的買いやすい状況だが、新築では2番目に買いやすい香川県でも5倍を超えてしまうので、年収との見合いでは買いにくい状況といえるだろう。

では、実際に自分の年収で考えた場合、いくらのマンションなら無理なく買えるのだろうか?

住宅価格は、頭金といわれる自己資金の額と銀行などからのローンの借入額で払うのが一般的だ。
自己資金の額は、各世帯の貯蓄の額や親からの贈与の額などによって、大きく異なる。
問題になるのは、ローンの借入額だ。

借入額の目安として、一般的には「年収負担率」が指標として使われる(「返済負担率」ともいう)。
年収負担率=住宅ローンの年間返済額÷年収(税込)となる。
銀行が融資する額を決める際にも、年収負担率が参考にされている。

年収負担率が25%以内であれば、返済に無理がないといわれている。ただし、年収が低ければ負担率は20%以内にしたほうが無理がなく、年収が高いほど負担率が高めでも無理はないと見られている。

しかし、住宅ローンの種類は豊富で、金利が低いローンを選べば、当初の年間返済額は少なくなる。
例えば、みずほ銀行の8月の金利で見ていこう。(8月8日時点)
「変動型」の住宅ローンを借りる場合、最も低金利なものは、0.775%。
当初10年間だけ金利を固定する「固定金利選択型」で最も低金利なものは1.30%。

最長35年間の「全期間固定型」のうち「フラット35」(手数料定額型)で最も低金利なものは1.918%。

例えば、3000万円を35年返済で借りる場合、年収が500万円(税込)で見ると、選ぶローンによって年収負担率は変わってくる。

「年収倍率」と「年収負担率」で考える 住宅購入の予算の立て方とは?

ここで「当初の」と敢えて書いているのは、全期間金利が固定されるローンを除き、返済途中で金利が変わり、返済額も変わってしまうからだ。当初は年収負担率が20%前後であっても、返済途中で金利が上がると年収負担率が25%を超えてしまうということもありうる。

逆に、年収負担率だけで借入額を見れば、フラット35なら3000万円が安全圏となるが、変動型なら、3600万円借りても年収負担率は23.5%におさまり、安全圏となる。

これでは同じ年収なのに当初の返済額を抑えられる低金利のローンを選べば、たくさん借りても安全圏ということになってしまう。それはおかしなことだということで、借入額の目安を、年収の5倍程度に設定するファイナンシャル・プランナーもいる。年収500万円なら2500万円強までが安全圏の借入額となる。3600万円借りてしまうと、7.2倍となって借り過ぎゾーンに入ってしまう。

年収負担率(年間返済額は年収の1/4まで)や年収倍率の両方で借入額の目安をつけて、頭金として用意できる額を加えた金額が、無理なく購入できる住宅の予算という考え方をすればよいだろう。

実際に住宅ローンを決めるときには、長期的な視点も忘れずに

ただし、実際に住宅ローンを借りるときは、こうした計算だけでは不足だ。
・定年までに返済を終えることができるか
・収入の増加はどの程度見込めるか
・教育費などの予算は用意できるか
・ライフスタイルのリスク(家族構成の変化等)に対応できるか
など、長期的な観点で自分のライフスタイルを見直し、それで無理がないかどうか判断することが必要だ。

●東京カンテイ「中長期的な年収倍率の変遷」
HP:http://www.kantei.ne.jp/release/PDFs/80bairitsu-trend.pdf
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