これからの住まい・暮らし
連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2013年12月18日 (水)

住まいの2014年トレンド予測、団塊世代は定年後に「縁居」を求める

住まいの2014年トレンド予測、団塊世代は定年後に「縁居」を求める
写真撮影:リクルート住まいカンパニー
【今週の住活トピック】
「2014年のトレンドキーワード」発表/リクルートホールディングス

http://www.recruit.jp/news_data/release/2013/1210_7376.html

(株)リクルートホールディングスは、住宅や就職、学びなどの領域ごとに「2014年のトレンド予測」を発表した。住まい領域では、「縁居」をキーワードに挙げ、定年後の団塊世代は隠居的な暮らしより、新たな縁を創る暮らしに変わると予測した。

団塊世代は「地域やコミュニティに新たな縁や居場所を創る」傾向

定年後の団塊世代が求める新しい暮らしは「縁居」である、と聞いて、最初は「縁のある人の周辺に住む」ことかと思った。ところが、そうではない。自ら新しい「縁を創れる住まいを求める」というのだ。

団塊世代を含む今の60代は、「今後の生活の力点」(内閣府「国民生活に関する世論調査」平成25年度)で最多の約4割が「レジャー・余暇生活」と回答している。しかし、10年前と比べると、「自己啓発・能力向上」や「食生活」「住生活」に力点を置きたいという回答が多くなっており、逆に10年前は多かった「資産・貯蓄」は少なくなっている。

また、「住み替えやリフォームで、どんなことを実現したいか」(RSC「団塊世代の住み替え意向に関するアンケート」)で、その上の世代の回答と開きが生じたのは、「学び続けること」「趣味が増えること」「(多少なりとも)報酬を得ること」「地域やその集団の中で役割があること」「仕事があること」だった。

これについて「SUUMO」編集長池本洋一氏は、「従来の『健康・安心』に加え、『趣味・学び・役割を通じた交流』のある暮らし求める傾向があり、住まいの変化をきっかけ(=縁)として活用している」という。その結果、「健康なうちに自らの意思で、住み替えやリフォームなどを行うことにより、地域やコミュニティに新たな縁や居場所を創る」動きとなっているというのだ。

定年後に、趣味や学び、役割を通じた交流が広がる住まいの事例も

具体的な事例が紹介されている。まずは、千葉市稲毛区にある「スマートコミュニティ稲毛」の事例。50歳から入居可能な、定年後の生活を満喫するためのシニア向け分譲住宅だ。

その特徴は、30㎡台~70㎡台を中心とする住居棟に加え、多彩なレクリエーション、生涯学習、サークル活動などを行う共有のコミュニティ棟と広大なグラウンドがあること。現在は60代を中心に530名を超える契約者がいるが、事業者が用意したサークル活動だけでなく、入居者によって生み出されたものを合わせると、のべ200種を超えるサークルがあるという。

「2014年のトレンド予測」発表会の資料より

【画像1】「2014年のトレンド予測」発表会の資料より

次の事例は、東京都日野市にある多摩平団地の再生事業だ。昭和30年代に建築された団地の再生に当たって、4棟をそれぞれ「若者向けシェアハウス(2棟)」「ファミリー向け菜園付き共同住宅」「高齢者向け住宅」として再生したもの。(築50年の団地がここまで生まれ変わる!レポート1:「AURA243多摩平の森」見学記:https://suumo.jp/journal/2011/07/15/4860/

共用できる広場やハウスがあるので、イベントなどを通じて若者から高齢者までの多世代が交流できる団地となっている。例えば、高齢者の経験を活かした藍染教室や編み物教室のほか、花見や夏祭り、もちつきなどのイベントを通じて、自然な形でつながり、相互に活力を与え合うことができているという。

最後の事例は、栃木県那須町の「ゆいま~る那須」。70戸のサービス付き高齢者向け住宅で、図書室・音楽室・自由室といった共用スペースがあり、書道、体操、コンサート、講演会、料理教室など多彩な文化活動が行われている。

注目したい点は、「ワーカーズコレクティブ “ま〜る”」を創設し、地域に密着した仕事を創出する仕組みを導入したこと。高齢者が自分の趣味やこれまでの仕事の技術を活かして昼食の手打ちそばを提供したり、美容師としてヘアカットをしたり、手仕事品の販売をしたりしている。

池本氏によると、自発的な住まい選びができている人のほうが、その後の生活が充実するという。「平均寿命の長さより健康寿命の長さのほうが大切。自分の意志で最適な住まいを選ぶことは、健康寿命を延ばすことにつながり、超高齢化社会の解決の一助になる可能性がある」とまとめた。

これまでも団塊世代は、新しいトレンドをつくってきた。定年後の暮らしも、その上の世代とは違う暮らし方を求め、積極的に社会とのつながりを維持するスタイルを志向していくようだ。

その他の領域のトレンド予測は以下の通り。

●リクルートホールディングス 2014年のトレンドキーワード発表
HP:http://www.recruit.jp/news_data/release/2013/1210_7376.html
https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2015/05/97a3e7d658abcc014cf75ce60ff9c1b1.jpg
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