住まいの雑学
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佐藤 由紀子
2011年9月21日 (水)

爪とぎで壁や柱がボロボロに?!猫好きさんの悩みを解消するあの手この手

「シングル女性がマンションと猫をかうと、やばいらしい…」何がやばいかはおいといて、犬派だった私が、あるとき猫の魅力にはまり、今や猫は暮らしの大事なパートナーに。優美な仕草、思いきり手足を伸ばした寝姿、ツンデレ具合にもうっとり。
しかし、そんな愛猫家でも家具や壁、柱でガリガリ爪とぎをされるのは悩みの種。猫の国勢調査2011(アイリスオーヤマ調査)によると、飼い猫の飼育環境は完全室内飼いが80%以上で、住居は一戸建てが60%以上。飼い猫で困っていることは、長期の外出が出来ないことに次いで、臭い、部屋の汚れや損傷が気になる人が多いという結果が出ています。

賃貸マンションでも、新築の家でも、家や家具を傷つけられるのを恐れて猫を飼うのを躊躇している人は多いはず。そこで、爪とぎで家や家具が傷む心配なく猫と暮らすために、爪とぎ対策、防止策を調べてみました。

■猫は何故爪とぎをするの?
さて、まずは問題点を明らかにすることから始めましょう。何故猫は爪とぎをするか?ペットどっとコムの砂田紘子さん(愛玩動物飼養管理士)にお話をうかがいました。

「猫の爪とぎには大きく2つの理由があります。ひとつは爪のお手入れ。猫にとって爪は狩りのときに大切な武器となるので、常に新しく鋭い状態をキープしておくのです。猫の爪はロケット鉛筆のように下からどんどん新しい爪が生えてきます。爪をといで、外側の古い爪をはがし、新しく鋭い爪を準備しておきます。爪をといだ後に落ちているはがれた爪をよく見てみると、構造が分かるかと思います。ちなみに、爪とぎをするのは前足だけで、後ろ足の爪は、自分の歯で噛んではがします。
もうひとつはマーキングです。肉球にはその猫特有のニオイを出す腺があり、爪をとぎながらお気に入りの場所にニオイをつけてまわります。だから爪とぎの場所や素材にこだわる猫が多く、必ずしも飼い主さんが望んだ場所で爪をといでくれるとは限らないのです」

それでは猫の爪とぎをやめさせる方法はないのでしょうか?
「爪とぎの行動は猫がもともともっている習性なので、爪とぎをさせないようにするのは困難ですし、猫にとって大きなストレスとなります。かといって、猫の好き勝手に家中の家具やソファで爪とぎをされるのも困りますね。爪とぎをしても良い環境を整えたり、定期的に爪切りをしてあげることで、猫も人も快適に過ごせるようにしてあげてください」

■猫の爪とぎ被害を防ぐ「壁まもる」
爪とぎで壁や柱がボロボロに?!猫好きさんの悩みを解消するあの手この手岩手県盛岡市の「ビックリエイト」が開発した「壁まもる(特許登録済)」は、木や布を使った製品で、壁の表面やコーナー部分に画鋲で止めて、家を傷つけないよう守りながら猫に思う存分爪とぎをさせる、または爪とぎをしても傷になりにくいアイデア商品です。大きく分けて3種類あり、壁や柱のコーナーを覆う「コーナー用」、突き出た壁の端部を覆う「三面用」、壁の平面部からコーナーまで幅広く覆える「布プラ板」があります。また、コーナー用や三面用には、岩手県産の杉板をそのまま使った「ノーマルタイプ」をはじめ、猫が爪を引っかけやすいよう木に鋸目を刻んだ「鋸目(のこめ)タイプ」や麻布を貼った「麻タイプ」、白い壁とマッチする「帆布タイプ」など、猫の性格や部屋の雰囲気に合わせたバリエーションを設けています。「布プラ板」は、「コーナーだけでなく壁の平面に貼るタイプもつくってほしい」というお客さまの要望から生まれた、プラスチックの薄い板に布を貼り付けたもの。開発者の濱田さんも、飼っていた猫が壁の角で爪とぎをするのを何とか防ごうと、試行錯誤の末、開発し製品化したそう。「木が好きな猫もいれば布で爪とぎをするのが好きな猫もいて、100匹100様。どのタイプを好むかは試してみないと分かりません」と話しています。
いずれも、プロの手を借りなくても自分で取り付けることができて手軽に試せるので、猫の性格や内装に合わせて選んでみては。価格は2205円~(画鋲付き。規格外製品を除く)。※土壁や凸凹デザインの壁など「壁まもる」を設置できない場所があります

■引っかき傷に強い「ペット共生クロス」など
内装建材メーカーからは「ペット共生クロス」など、猫の爪とぎによる引っかき傷がつきにくいペット用の壁クロスなどが販売されています。家を新築・リフォームする際は、メーカーに「ペットの引っかき傷に強い壁紙」をリクエストするのもいいでしょう。

例えばサンゲツの「スーパー耐久性(ペット対応)」壁紙は、表面を強化しているため、引っかき傷に対して一般ビニル壁紙の約10倍の強さ、耐衝撃性については約3倍の強さをもちます。また、生鮮食品の包装にも使用される特殊フィルムを壁紙の表面にラミネート加工しており、高い抗菌性をもち、付着した汚れを落としやすいのも特徴です。価格は1㎡当たり1144円~(施工料別)。※参考

日本ビニル工業会ビニル建装部会の表面強化試験には、ペットの爪に似た摩擦子で傷をつける「三本爪試験」があり、引っかき傷の程度を目視で1級~5級まで評価し、3級以上を「耐・ひっかき傷」壁紙と定義しているものもあります。
また、ホームセンター等でペットの引っかき傷や汚れから壁紙を守る「ビニルカベ紙用キズ・汚れ防止シート」が比較的安い価格で販売されているので、気軽に試してみるのもよさそう。

■「爪とぎ」をしてもいい環境を与える
爪とぎで壁や柱がボロボロに?!猫好きさんの悩みを解消するあの手この手さて、壁にカバーをしただけで万全というわけではありません。「家具や壁、柱で爪とぎをしないようにするには、爪とぎを思う存分できる環境を与えることです」というのは砂田紘子さん(前出)。

「まず、爪をといでも良い環境をつくってあげてください。猫はとぎ心地が良いものや、マーキングしたい場所(家の中で目立つ場所など)を選んで爪とぎをします。猫がとぎ心地が良いと思うのは、爪が適度に引っかかりやすく、安定感がある場所、高さがある場所などです。猫が好みそうな数箇所にさまざまな素材の爪とぎを置いて、猫が好む場所・素材を探してみてください。
爪とぎは市販されている爪とぎを利用すると便利です。使い込んで古くなると、とぎ心地が悪くなるので、消耗品と考えて新しく取り替えられるものがオススメです。素材は一般的にダンボールや麻が好まれるようで、これらの素材の商品はたくさん売られています」

爪とぎで壁や柱がボロボロに?!猫好きさんの悩みを解消するあの手この手今は、爪とぎの種類も豊富。砂田さんのおすすめは、爪をといだクズが散らかりにくいプラスチックのケースに入った「ダストレスネコの爪とぎ」、箱の中に段ボール素材の爪とぎがセットされた「つめとぎBOX」、柱部分に麻素材の爪とぎ(傷んだら取り換えも可能)がセットされたキャットタワー「爪とぎ付キャットランド」。(写真参照。価格はオープン)

ほかにも、ベッド型、座布団型(角型)、ボール型(丸型)、ハウス型、ハンモック風など、さまざまな爪とぎが販売されているので、愛猫が気に入る爪とぎを見つけて与えましょう。

■定期的に爪切りをするのもポイント
「室内で暮らす猫の場合、鋭い猫の爪はカーペットやカーテンに引っかかって猫自身がケガをしたり、人も鋭い爪でケガをしやすくなるので、定期的な爪切りをオススメします。爪切りは単に爪を切るだけでなく、猫の体の変化にも気づきやすくなるので、健康管理にも役立ちます。爪切りの方法は、猫をひざの上に乗せて猫の手を持ち、肉球を軽く押して爪を出します。そして中の血管と神経を切らないよう注意して、爪の先だけカットしてください」※参考

猫も人も快適で楽しく暮らすために、爪とぎに強い内装材・建材などを採り入れ、思いきり爪とぎをしてもいい場所を用意して、猫の心身の健康を管理しながら、愛情たっぷりの毎日を過ごしましょう。だって、いたずらされても、そっけなくても「やっぱり猫が好き」だから。

取材協力
アイリスペットどっとコム 猫といっしょ
HP:http://www.iris-pet.com/nyan/
ビックリエイト「壁まもる」
HP:http://bikkuri8.web.fc2.com/index.html

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