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連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2014年7月2日 (水)

DIYをあきらめた人は約2割。賃貸の不自由を解消する「借主負担DIY型」とは

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写真:iStock / thinkstock
【今週の住活トピック】
「賃貸住宅におけるDIY意向調査(2014年4月実施)」を発表/リクルート住まいカンパニー
http://www.recruit-sumai.co.jp/press/2014/06/diydiy46942.html

リクルート住まいカンパニーは、賃貸住宅でのリフォームやカスタマイズなどの経験や意向を把握するため、賃貸住宅に住む首都圏の618人に対して調査した結果を発表した。実際のリフォームやカスタマイズの実施経験は少ないが、国土交通省が提案している「借主負担DIY型」の利用意向は半数近くあることが分かった。

賃貸住宅居住者は、持ち家よりも好みや自由度が制限されると感じている

現在賃貸住宅に住む人に、今後の住まいは賃貸か持ち家かを聞いたところ、持ち家志向(「できれば持ち家を購入したい」「持ち家を購入するつもりである」)が53.1%と半数を超え、賃貸志向(「できれば賃貸に住みたい」「賃貸に住むつもりである」)は35.6%という結果となった。

持ち家志向者にその理由を聞いたところ、「とてもあてはまる」「ややあてはまる」の合計が高いのは、「好みの間取りや広さの住宅を手に入れられるから」(86.9%)が1番目、「設備を自由に決めたり、リフォームが自由にできるから」(77.7%)が3番目になるなど、「好み」や「自由」に関する項目が上位に入った。

一方、現在居住している賃貸住宅で、「入居前や入居後にカスタマイズ(壁紙や照明の交換など)やリフォーム(トイレやキッチンの交換など)をしたことはあるか」を聞いたところ、「リフォームやカスタマイズをしたことがある」はわずか4.2%、「したいと思ったがあきらめたことがある」は18.8%だった。

さらに「したいと思ったがあきらめたことがある」の回答者に実現していない理由を聞くと、「許容範囲が分からない」(50.4%)、「契約上許されないから」(45.4%)が、3番目の「実施費用がもったいないから」(40.4%)を抑えてトップ2となった。

現状では、「現状回復義務」があるため賃貸住宅の借主が手を加えてよい範囲は限られる。原状回復義務とは、借りたときの状態に戻すこと。といっても、一定期間住むことによる傷みや劣化は対象外。例えば、家具や家電を長く置いたときに生じる跡(へこみ)や画びょうの穴、壁紙の日焼けなどは元に戻す必要はない。

しかし、借主の故意や過失による傷みや不具合は復旧する必要がある。例えば、タバコのヤニがこびりついたり、金具のサビや結露によるカビを放置したことでできた床や壁の変色、大きな釘穴などは借主の負担で元に戻す費用を負担することになる。

具体的な許容範囲は、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun.pdf)」を公表しているので、それを参考にするとよいだろう。

国土交通省が提示した「借主負担DIY型」は、貸主・借主双方にメリットがある

借主が借りたときの状態に戻す義務を負う一方で、貸主には普通に住める状態にして貸す義務を負うのだが、相続や住み替えで生じた空き家が放置されたままで、老朽化が進んでいることが問題になっている。なぜならこうした空き家を賃貸化しようとすれば、住める状態に改修してから貸さなければならない。その改修費用を負担できないなどの理由で、空き家のままという事例も多い。

そこで、国土交通省が新しい賃貸借契約の形態となる「借主負担DIY型」を提示した。2014年3月に提示したばかりなので、認知度は8.7%にすぎなかったが、どういったものかを説明したうえで、利用意向を聞いたところ、利用意向(「とても利用してみたいと思う」6.8%、「やや利用してみたいと思う」40.1%)は46.9%にのぼり、半数近いニーズがあることが分かった。

DIYをあきらめた人は約2割。賃貸の不自由を解消する「借主負担DIY型」とは

【図1】「借主負担DIY型」の説明(出典/リクルート住まいカンパニー「賃貸住宅居住者のDIY意向調査(2014年4月実施)」)

DIYをあきらめた人は約2割。賃貸の不自由を解消する「借主負担DIY型」とは

【図2】あなたは、 「借主負担DIY型」賃貸借契約を利用してみたいと思いますか。<単一回答>(出典/リクルート住まいカンパニー「賃貸住宅居住者のDIY意向調査(2014年4月実施)」)

多少の老朽化や不具合があるので、安い賃料で借りることができるうえ、老朽化した部分などは自分でDIYしたり、自分が選んだ事業者にリフォームを依頼したりできる点が大きな魅力だろう。

もちろん、どこまで手を入れられるかは、契約前にきちんと決めておく必要はあるのだが、貸主にも借主にもメリットがあるので、注目を集めつつある賃貸借契約の形態なのだ。
※借主負担DIY型などについては、国土交通省で、「個人住宅の賃貸活用ガイドブック」(「空き家」を活用するための知恵袋)を作成している。詳しくは、筆者の記事「DIY型で空き家を解消。国土交通省が「空き家を活用するための知恵袋」発行(https://suumo.jp/journal/2014/05/28/63292/)を参照

新しい賃貸借契約のスタイルなので、借主負担DIY型が普及していくにはまだ時間がかかるだろう。
しかし、いま賃貸住宅を探しているなら、一定レベルのDIYやリフォームをしてよいか、交渉する余地はある。賃貸住宅のオンシーズンは年度末なので、いまのようなオフシーズンであれば、じっくり物件を探せるからだ。居住者のカスタマイズ志向が強まっていることは、賃貸住宅のオーナーも認識しつつあるので、交渉に応じてくれる可能性もある。

https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2015/05/97a3e7d658abcc014cf75ce60ff9c1b1.jpg
連載 今週の住活トピック 住宅ジャーナリストが住まいの最新ニュースを紹介&解説する連載。毎週水曜更新の「今週の住活トピック」。
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