総務省が、平成25年10月1日時点の日本の人口推計を発表した。生産年齢人口(15~64歳)が32年ぶりに8000万人を下回る一方で、65歳以上人口は増加し続け、総人口に占める割合も初めて25%を突破した。本格化する高齢化社会で、65歳以上の住まい選びにはどんな選択肢があるのだろうか。
人口推計は、国勢調査を基に毎月の人口移動などを加味して算出するもの。平成25年10月時点で、65歳以上人口は前年より110.5万人増加して3189.8万人となり、そのうち75歳以上の人口は41万人増加の1560.3万人。総人口に占める割合では、生産年齢人口が平成4年をピークに低下し続けるのに対して、65歳以上人口は一貫して上昇し続け、ついに4人に1人が65歳以上の高齢者となった。
日本の人口ピラミッドは、第一次ベビーブーム期(団塊世代)と第二次ベビーブーム期(団塊ジュニア世代)の2つの山があるひょうたん型となっている。団塊世代が65歳人口に移行したことから、高齢化に拍車をかけることになった。
厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」によると、65歳以上人口は平成32年に3612万人に増加すると予測している。65歳以上人口は、その後しばらくは緩やかに増加するが、団塊ジュニア世代が65歳以上になる平成54年には3878万人のピークとなると見ている。
また、「日本の世帯数の将来推計(平成26年4月推計)」によると、世帯主が65歳以上の高齢世帯に占める一人暮らし世帯の割合は、平成47年には46都道府県で30%以上となり、特に東京都(44.0%)、大阪府(43.8%)で高い割合を示している。
こうした高齢化の加速、高齢者の一人暮らし世帯の増加は、住宅にも大きな影響を及ぼす。
―――高齢期の住まいの選択肢―――
■自宅に住み続ける
→自宅を高齢者向けにリフォームする
→自宅を二世帯住宅等に建て替える
■住み替える(新居の購入または賃貸)
→田舎や都心、海外に移住
→二地域居住
→高齢者向けの住宅(サービス付き高齢者向け住宅や高齢者向け分譲マンション)
→早めに介護サービスが受けられる施設などに住み替える
65歳以上の高齢者の住まいの選択肢は、今の自宅に住み続けるか、住み替えるかなどをはじめとして、さまざま考えられる。誰とどこで、どのように暮らしたいか、整理しておくとよいだろう。
例えば、元気なうちは、今の自宅をリフォームして、夫婦二人で暮らすという選択肢もあるだろう。思い切って、夫婦で田舎暮らしを始めたり、海外生活を楽しんだりということも考えられる。また、子ども世帯とのつながりを強めたいのであれば、子ども世帯のいる都心部に近居、あるいは二世帯住宅に建て替えて同居という選択肢もあるだろう。
リフォームや建て替え、住み替えの費用については、貯蓄からまかなうのか、自宅を売却したり賃貸したりして充てるのか、長期的な視点で判断する必要がある。
一方、介護が必要になったら、自宅で在宅介護を受ける選択肢もあるが、家族の負担を考えて、充実した介護サービスが受けられる介護施設に住み替えるという選択肢が考えられる。介護サービスが受けられる住み替え先として、「サービス付き高齢者向け住宅」「有料老人ホーム」「グループホーム」「特別養護老人ホーム(特養)」などがある。
(サービス付き高齢者向け住宅については、筆者の記事「『サービス付き高齢者向け住宅』ってどんなもの? 注意点は?」https://suumo.jp/journal/2011/10/05/7865/、「急増しているサービス付き高齢者向け住宅 整備事業の募集で今後も増える?」https://suumo.jp/journal/2014/04/16/61006/を参照)
このうち「サービス付き高齢者向け住宅」と「有料老人ホーム」は、自立して生活できる高齢者向けのものと介護が必要な高齢者にさまざまな介護サービスを提供するものがあり、前者は要介護になると住み続けられない場合が多い。
また、比較的低額な費用で済む公的な介護施設である「特養」は、厚生労働省の調査によると全国で52.4万人の待機者がいる。要介護度が高く自宅での介護が困難な高齢者が優先されるため、入所することが難しくなっている。
したがって、早い段階から、一人暮らしになった場合や要介護になった場合も視野に入れて、高齢期の住まいについて長期的に考える必要があるということになる。
65歳以上になってからの人生はまだ長い。元気なうちは新たに熱中できるものを見つけ、生活を楽しめる拠点として住まいを選ぶほうがよいだろう。ただし、介護が必要になった場合にどういった選択をするかを想定し、資金計画を立てたり、家族と会話をしておく必要はある。
しかしながら、急増する高齢者に対して、住まいや施設が追いついていないのが実態だ。政府には、その対策を急いでほしいものだ。