首都圏における不動産流通市場の動向（2013年7～9月）／（公財）東日本不動産流通機構（東日本レインズ）
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_201307-09.pdf
東日本不動産流通機構（東日本レインズ）は、四半期ごとに首都圏の不動産流通市場の動向をまとめているが、最新データ（2013年7～9月）によると、中古住宅の取り引きの増加基調が続いているという。新築住宅の消費税増税による駆け込み需要が指摘されてきたなか、中古住宅の市況はどうなっているのだろう。
消費税増税の影響は少ない中古住宅
消費税率が2014年4月から8％に引き上げられることが決まっている。住宅の場合は、土地は非課税だが、建物が消費税の課税対象となるほか、諸費用の一部も増税の影響を受ける。ただしこれには、経過措置が用意されている。
注文住宅の建築を依頼する契約や新築住宅を購入する際に内装工事などの注文を含む契約などの場合には、引き渡しが消費税増税後であっても、半年前、つまり2013年9月までに契約を締結すれば、現行の5％が適用されるというのが経過措置だ。そこで、注文住宅や新築の分譲住宅では、9月までに契約をする駆け込み需要があったといわれている。
一方、売り主が個人の中古住宅の場合、消費税の課税対象とはならない。（不動産会社が買い取ってリフォームした中古住宅を販売する場合は、課税対象となる）。仲介手数料やローンを借りる際の手数料などの一部は、増税の影響を受けるが、建物価格の増税ほどの大きな影響ではない。したがって、ほとんどの中古住宅は、駆け込んで購入する必然性は低いことになる。
では、中古住宅の市況はどうなっていたのだろう？
中古住宅の取り引きは増加基調だが、品薄状況にも
東日本レインズの首都圏の四半期最新データ(2013年7～9月)を見ると、売買が成立した成約件数は、中古マンションで8期連続、中古一戸建てで9期連続で前年同期を上回っている。取り引きは、ここ２年ほど増加傾向にあるということだ。
特に、中古マンションでは、今年に入ってからの3期は前年同期で2桁以上（1～３月12.2％、４～６月22.1％、7～９月11.9％）も増加しており、そのため、成約価格も成約㎡単価も前年同期をわずかに上回る結果となっている。取引が活発化してきたことの表れだろう。
一方、新規登録件数（新たに売り出した物件）は、中古マンションで5期連続、中古一戸建てで3期連続で前年同期を下回っている。成約件数が増加しているのに、新しい物件が少なく、市場に流通する物件が減っているという構図となっており、中古住宅はやや品薄の市況にあることが分かる。
特に、東京都区部では、中古マンション・中古一戸建てともに、成約件数の増加が大きい（7～９月の前年同期比は中古マンションで19.8％増、中古一戸建てで13.1％増）一方で、新規登録の減少が大きく（7～９月の前年同期比は中古マンションで13.4％減、中古一戸建てで11.5％減）、特に品薄になっていると考えられる。
【図】成約件数（棒グラフ）と前年同期比（折れ線グラフ）
（出典：東日本レインズ「首都圏における不動産流通市場の動向（2013年7～9月）」）
消費税増税の駆け込み要因だけでなく、アベノミクスによる景気浮揚感や住宅ローンの金利上昇懸念などが、住宅購入の決断を促し、新築・中古問わず住宅市況が活発化していると見ていいだろう。今後は東京五輪への景気期待感や住宅価格の上昇懸念などもあり、これまで様子を見ていた消費者が購入を決断する可能性も高い。買い替えが進めば、中古住宅の売り出し物件も増えるので、新築・中古の品ぞろえが増えてより選びやすい環境になると考えられる。
なお、個人が売り主の中古住宅は、消費税の課税対象ではないことから、増税の影響も受けないが、増税の緩和策である住宅ローン減税の拡充・給付金の対象にもならない点に注意してほしい。（参考：https://suumo.jp/journal/2013/08/01/49301/）
