民主党が目指す方向性について、党内では「保守か中道かリベラルか」といった論争が繰り広げられているというが、新聞報道だけでは民主党がどこへ向かおうとしているのかさっぱりわからない。ジャーナリストの長谷川幸洋氏が、こうした民主党の姿勢に対して苦言を呈する。
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民主党の結論より一足先に、私の見方を書いておこう。まず「中道とか右派とか左派、あるいはリベラルという言葉は政党自身が掲げる旗ではない」という点をはっきりさせておきたい。それはメディアが政党に貼り付けるレッテルである。
そもそも政党を名乗る以上「自分たちはこういう政策を目指します」という話が出発点だ。綱領に具体的な政策まで書けないというなら、政策のおおまかな枠組みでいい。「政権を預かったら、こんな政策路線を展開します」と約束して有権者の支持を仰ぐ。それが政党の原点である。
政策路線をほかの党と比較して、右とか左などと評価するのはメディアの仕事だ。相対評価でレッテルを貼れば、とりあえず少しは分かりやすくなる。その程度の話にすぎない。政党にとって肝心なのは、あくまで政策の中身、つまり「私たちの政権は国民のために何をするか」である。
そこを勘違いして「自分たちは中道だ」などと胸を張って、どうするのか。自分が自分にレッテルを貼って自慢できるのか。そんなことを言い出したら、いつだって他党の動きを横目で見ながら行動するはめになってしまう。よそがぐんと右へ動いたら、自分もちょっと右へ動いてポジションを守る。そんな話になる。
私に言わせれば、そんなのは政党ではない。自分の位置取りで帳尻を合わせるのに汲々となって、肝心要の主張が二の次になってしまう。それでは有権者の代表を唱える資格がない。
民主党の様子を見ていると結局、混乱の根本原因は「自分たちはこれを有権者に訴える」という柱を失った点にあるように思える。選挙カーの上から訴える言葉を見失っているのだ。
野田が「自分は保守だ」というなら、自民党と自分の政策路線がどう違うのか、しっかり説明してもらいたい。海江田が「中道とか右派、左派は古い時代の考え」というのもピンぼけだ。メディアや評論家はいつだって、そういうレッテルを貼る。まず自分が何をしたいのか。政治家なら、そこをはっきりさせてもらいたい。メディアもそこを突くべきだ。(文中敬称略)
※週刊ポスト2013年3月1日号