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藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#30 ベルリン

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次にイメージ作りが続く。
これは体が絶好調で、心が晴れ渡っている時の自分をまず思い出す。意外とこれが難しい。不調の時は心の柔軟性も落ちるし、悲観的なトーンに支配されやすい。だが、ここは頑張り所だ。自分の笑顔を思い描くのもいい。快活な笑顔で過ごしている自分は、調和のとれた良い状態なはずだ。そのようにしてうまくイメージが作れたら、そこを戻るべきゴールとしてセットする。これから快活な笑顔で過ごしている自分へと帰るのだと、目標を作るのだ。病気というのは言わば、心身が迷子になっている状態だ。今は苦痛の中にいるのだが、それを認めつつ、本来の自分へと帰ろうと促してあげる。目的地もないままに膝を抱えてその場に坐りこむような状態から、帰ろうと促すのだ。脱力しつつの深呼吸とイメージ。これだけで回復の速度が飛躍的に高まる。なんとか剤のお世話になる前に是非試していただきたい。慣れてしまうと、戻る場所がわかっているので、それほど慌てはしない。家を離れて過ごす旅行期間などはその担保がとても心強い。ベルリンでは丸一日寝ただけで回復し、翌日はちょうど季節のホワイトアスパラガスを友人宅でたっぷりといただいた。いったい何本食べたかわからないくらいに。あちらではホワイトソースで食べるのが主流だが、ただ焼いただけのものに塩を振っていただいた。その美味しさを例える言葉をあいにく自分は持っていない。

旬なもの、とくにアスパラのように天へと突き出して伸びる植物には、正す力が強いように思えた。その土地での旬をいただくのは、それ自体ヒーリングと言えるのだと実感した。

さて、新鮮かどうかの問題は別として、羊の肉にも旬というのがあるのだろうか。きっとあるのだろうな。



(つづく)



※『藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」』は、新月の日に更新されます。
「#31」は2016年7月4日(月)アップ予定。
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