▲どこからどう見ても「セレブの乗り物」な現行BMW Z4ですが、実際の中古車相場は…… ▲どこからどう見ても「セレブの乗り物」な現行BMW Z4ですが、実際の中古車相場は……

地味な毎日も写真とキャプション次第でキラキラ男子に

今の時代、SNSを通じて「キラキラな生活を送ってる金持ちな自分」を偽装するのは比較的簡単である。例えば下の写真4点は筆者こと不肖伊達が生活のなかで撮ったあれこれだが、そこにいかにもそれっぽいキャプション(写真説明文)を付けてSNSに投稿すれば、見た人は「よく知らんけどこの伊達ってやつは意外と売れっ子で、意外と金持ちなんだなあ……」などと思うだろう。

しかし種を明かせば、某有名オシャレ雑誌の仕事は特集のほんの一部を孫請けとして手伝ったにすぎず、新車のアルピナは某雑誌の撮影で借りた広報車。高級そうなデザートの写真はたまたま参加したイベントで無料にていただいたものであり、乗っているボートは私物でも富裕な友人のものでも何でもなく、取材で海上釣堀へ行った際に古い「渡し船」の上でパシャッと撮ったものだ。

こういった詐称はどう贔屓目に見ても「趣味のいい行為」とはいえず、そして真実が露呈したときには限りなく恥ずかしい思いをするため、できればやらないでおくに限る。しかし実際は今日も多くの人がSNS上で、写真のトリミングとキャプションをあれこれ工夫しながら「イケてる自分」を偽装しているのだろう。なぜならば、「やろうと思えば簡単にそれができちゃう時代」だからだ。

▲モノは試しで、筆者の地味な生活のなかで撮った何枚かの写真をトリミングし、それっぽいキャプションを付けてみましょう。「依頼された某誌のネーム、未明になんとか脱稿。今回も大変だった~(笑)」 ▲モノは試しで、筆者の地味な生活のなかで撮った何枚かの写真をトリミングし、それっぽいキャプションを付けてみましょう。「依頼された某誌のネーム、未明になんとか脱稿。今回も大変だった~(笑)」
▲「僕のいちばん好きな、そしていちばん大切な空間……」 ▲「僕のいちばん好きな、そしていちばん大切な空間……」
▲「今日も今日とて代官山でランチ。ごちそうさまでした!」 ▲「今日も今日とて代官山でランチ。ごちそうさまでした!」
▲「束の間、海へ。また明日からシビアな戦いが始まるから、ちょっとだけ息抜きです(笑)」……なんて書いてSNSに上げれば、まるでイケてる毎日を送ってるかのよう。本当は地味な毎日なんですけど ▲「束の間、海へ。また明日からシビアな戦いが始まるから、ちょっとだけ息抜きです(笑)」……なんて書いてSNSに上げれば、まるでイケてる毎日を送ってるかのよう。本当は地味な毎日なんですけど

中古のZ4またはTTでも生活レベルの偽装はカンタン

それと同様に、車を利用して金持ちでイケてる自分を装うことも、やろうと思えば簡単にできてしまうのが今の世の中である。その場合はちょっとだけ派手な輸入2シーターまたは2+2(それでいて実は結構安く買えるモデル)が適任だろう。

例えば、現行BMW Z4の中古車を車両価格250万円程度で買ってみる。筆者のようなディープな中古車マニアは、今や現行Z4も結構安くなっていることを知っているが、車好きであっても中古車相場には詳しくない人なら「えっ? あいつ結構高いの買ったな……」と内心思うだろう。ましてや車に全然詳しくない婦女子などからは、高給取りで有名な大手総合広告代理店の正社員あたりと100%勘違いされるはずだ。

またあるいは「旧型」となったばかりの8J型アウディ TTを買うのもいい。新車時価格414万円~631万円だったこの車も、実は今や車両200万円以下で割と好条件な物件が買えてしまう。しかし、そんなことはつゆ知らずな人々から見れば、旧型TTを乗り回すあなたは「少なくとも年収1本(1000万円)は行ってる青年または中年」である。ちなみに本文趣旨とは関係ないが、TTのような車に乗ることを形容する際、人はつい「乗り回す」という単語を使ってしまうのが人生の不思議である。

▲09年4月に登場した第二世代のBMW Z4。初代Z4は布製のソフトトップを採用していたが、現行型はクーペカブリオレ方式のリトラクタブル式ハードトップに。中古車は約200万円から購入可能 ▲09年4月に登場した第二世代のBMW Z4。初代Z4は布製のソフトトップを採用していたが、現行型はクーペカブリオレ方式のリトラクタブル式ハードトップに。中古車は約200万円から購入可能
▲こちらは15年8月に「先代」となったばかりの旧型アウディ TT。初代TTほどのデザイン的インパクトはないかもしれないが、この造形もやはり美しい。しかし中古車相場の底値はおおむね110万円 ▲こちらは15年8月に「先代」となったばかりの旧型アウディ TT。初代TTほどのデザイン的インパクトはないかもしれないが、この造形もやはり美しい。しかし中古車相場の底値はおおむね110万円

年収偽装だけのために買うのは虚しい。しかし車自体はかなりオススメだ

さて、こういった車種すなわち現行BMW Z4あるいは旧型アウディ TTの購入による「年収偽装」は、前述のSNS系偽装と同様に、基本的にはやらないでおくに限る。なぜならば、繰り返しになるがバレたときに限りなく恥ずかしい思いをするからだ。

だがそれはあくまでも「年収偽装のためだけに買うのはやめといた方がいいですよ」であって、これらの車種自体は買ってもいいというか、むしろ積極的に買うべきなのではないかと考える不肖筆者ではある。

なぜならば両モデルとも、ついつい年収偽装でハッタリをカマしたくなるお年頃の男性(28~35歳ぐらいか?)にとって、純粋に素晴らしい自家用車たりえるからだ。

まず第一に走りが素晴らしい。Z4とTTとでは厳密に言えば若干キャラが違い、この年代のモデルに限って言えば「動のZ4」と「静のTT」と言えるはず。よりキビキビ曲がりたいならZ4が比較的オススメで、落ち着いた走りを堪能したいならTTの方が比較的向いているだろう。しかしそれは「比較的」であって、俯瞰してみれば誤差の範囲でしかない。どちらもビュンビュン走り、それと同時に落ち着いた走りっぷりも堪能できる素晴らしく硬質なドイツ車なのだ。

そして第二にサイズ感が素晴らしい。男も40代ともなれば様々な「荷物」をその人生に抱えていることが多いため、小ぶりでスポーティな車を選ぶのはなかなか難しかったりもする。しかし20代後半あるいは30代前半であれば、まだ何かと身軽だろう。で、せっかく身軽なのに、意味もなく図体のデカい車に乗るのはもったいない。もちろんお子さんがいらっしゃるとか、大きな道具を必要とする趣味に打ち込んでいるなどの理由があるなら話は別だが、もしもそうでないのであれば、「質量が小さくて重心が低い車ならではの歓び」ってやつをぜひ知っておくべきだと思うのだ。……上目線からの勝手な意見を押し付けるようで恐縮だが、この世の真実である。

▲初代Z4同様、とにかくクイクイとよく曲がる車である現行BMW Z4 ▲初代Z4同様、とにかくクイクイとよく曲がる車である現行BMW Z4
▲こちら旧型アウディ TTも、その走りっぷりと曲がりっぷりは現行Z4とほぼ同程度に素晴らしい ▲こちら旧型アウディ TTも、その走りっぷりと曲がりっぷりは現行Z4とほぼ同程度に素晴らしい

微妙にだがモテる可能性も? 独身男は買うしかないぜ!

さらに第三の理由として「正直モテる」というのもある。いや正確にいえば「モテる可能性が上昇する」であり、実際モテるかどうかは車よりも本人の資質による部分の方がデカい。しかし少なくともこれらステキな車に乗っていれば、乗っていない場合と比べてモテの確率は少々アップする。

……車離れが喧伝される昨今ではあるが、筆者調べによれば婦女子の皆さんというのは一般論として、なんだかんだいいつつ「ステイタス性が高いブランドのプロダクツ」が好きであり、貧困生活よりは安定した、要するに金に困らない生活を望むもの(※あくまで筆者調べです)。それゆえ、そういった諸々を想起させるBMWまたはアウディに乗るということは、「かなり」ではなく「少々」ではあるものの、モテに対しては確実にワークするのだ。

以上のように強烈な魅力を備えた現行BMW Z4およびアウディTTの良質物件が、今や国産中型ミニバンを買うのとほとんど似たような予算感で買えるのである。で、あまりオススメはしないが、その気になれば「年収偽装」も可能。……もしもあなたが2シーターや2+2でも特に不便はない生活を送っているのであれば、そしてもしもあなたが「車好き」と呼ばれる性質を備えた人であるならば、これはもうイクしかないと思うのだが、どうだろうか。

▲現行BMW Z4の内装。比較的クールな方向性のデザインテイストでまとめられている ▲現行BMW Z4の内装。比較的クールな方向性のデザインテイストでまとめられている
▲こちらは旧型アウディ TT。漆黒の中にワンポイントのシルバーとレッドが浮かび上がるセクシー系 ▲こちらは旧型アウディ TT。漆黒の中にワンポイントのシルバーとレッドが浮かび上がるセクシー系
text/伊達軍曹
photo/BMW、AUDI、伊達軍曹