『GOOD OVER 50’s 都市型コンパクトライフのススメ展 二人暮らしの50m2』、”50’s”という数字に「私だ…」と思わず足を運んだ企画展。50’sの大人視点でレポートしてみた。(11月11日(火)までリビングデザインセンターOZONEにて開催中)
子育てが終わり、親は高齢になり、自らの老後の暮らしについてリアルに考え始める世代。それが『OVER 50’s』50歳以上世代である。既に首都圏を中心にシニア層は生活利便性を考え、郊外の一戸建てから都心のマンションに移り住む人が増えている。国も医療・介護サービスの効率化を図るために、コンパクトシティ、中心市街地への集住を地方含めて推進したい方針だが、元気な50代にとって都市部への住み替えの発想はまだ湧いてこない。
都心=狭い住まい・自然が少ない・ゆとりが無い…と拒否反応も多い。そこで今回、建築家の末光弘和+末光陽子(SUEP.)さんたちが視点を変え「住まいを地域に開いて暮らすという新しい豊かさを持ったライフスタイル」を表現した。
画像2の模型のように廊下などの共用部分が広いと、共用部分の各住戸へのコスト負担は専有面積割り(坪単価)すると割高になるが、「新しい別の豊かさの価値観にシフトして行く必要があると考えました」と末光さん。
【住戸65m2分の価格】→【住戸55m2】+【共用10m2】→30戸分で【共用(地域に開かれたファシリティ)300m2】
この300m2が新しい価値という考え方。シェアハウスの分譲マンション型、これは余裕のある大人であればこそ受け入れられるモデルと言える。
また、各住戸についてもカフェなどのお店やオフィスとして住まいを開くことで、お互いのスペースをシェアしながら地域と交流するライフスタイルを提案している。
今回の『二人暮らしの50m2』提案では、娘が独立して夫(58歳)妻(53歳)の二人暮らしになったケースを想定。郊外の一戸建てを売却して都心の分譲マンションに住み替える資金シミュレーションも掲示し、住み替え先のシェアハウス型分譲マンション、リアルサイズの50m2モデルの見学もできる。
早速、アプローチで目を引いたのはミニ家庭菜園。エコロジーな生活提案が都心の暮らしに豊かさを演出していた。
住戸モデルは50m2のフロアに段差を設けた、変則1LDK。共用廊下に面したキッチンダイニングは、カフェとしてガラス折り戸でフルオープンに開くつくり。
このベッドルームを見て、思わず「断捨離(だんしゃり)しなきゃ住めない…」と茫然。というのは、この住戸の収納クローゼットは幅3mだけなのだ!(他にマンション内のシェアロッカールームも利用できる前提だが)
断捨離=不要なモノなどの数を減らし、生活や人生に調和をもたらそうとする生活術や処世術。モノへの執着から解放され、身軽で快適な人生を手に入れる…これこそが『都市型コンパクトライフ』の神髄であると実感した。物は持つことより、シェアして使う暮らし方提案の意志を感じた。
親の死後、家の片づけをしたことがある人なら「何でこんなに物を沢山持ってたんだろう!?」と辟易(へきえき)した経験があるはず。しかし、自らを省みれば…同じように服や食器の山。50歳を過ぎれば、死に向かって生きていることを自覚し、人に迷惑をかけないよう身の回りを整理すべきときだと筆者は考える。
今回の展示から、プライベート空間を断捨離し、パブリック空間で物や時間をシェアすることが生活の豊かさを生む可能性を感じた。一人になったら、こんな暮らし方が良いかも…。