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末吉 陽子(やじろべえ)
2014年10月21日 (火)

無垢材・珪藻土・漆喰…。自然素材を使った家ってなにがいいの?

人体への影響に対する不安や、環境意識の高まりを受けて需要が増えつつある自然素材(写真撮影:末吉陽子)
写真撮影:末吉陽子

建材に含まれる化学物質によって室内の空気が汚染され、目の痛みや鼻水、頭痛といったさまざまな健康被害が現れる「シックハウス症候群」。その症状には個人差があり全く影響を受けない人もいるというが、それでも家にいるあいだ常に化学物質に晒されていると思うと不安になる人も多いかもしれない。

そうした不安を軽減してくれるのが、化学物質を極力含まない”自然素材“で建てる家だという。家族が健康的に、安心して暮らせる自然素材。その魅力に迫った。

健康被害をもたらす危険な化学物質とは?

そもそも、シックハウス症候群を引き起こす化学物質とはどんなものなのか? 厚生労働省では、ホルムアルデヒドやトルエンなど13種類の「建材に使われる危険物質」を定めているが、じつはこれ以外にも健康被害を及ぼす可能性のある物質は無数に存在するという。

「住宅を建てるときに使われる化学物質は数万種類に及んでいて、そのすべての安全性については分かっていないことも多いです。発がん性をはじめ身体に何かしらの悪影響を及ぼす可能性がゼロでないのであれば、はじめから自然素材を使ったほうが安心ではないかと考えます。

実際に、新築に移り住んだ直後に具合が悪くなるといった例もありますが、自然素材にリフォームしたことで体調が元に戻ったという方もいます。家が原因で調子を崩されている方は、やはり環境改善をすることでずいぶん変わると思います」と話すのは自然素材を使ったリフォームを実施する「OKUTA」の丸山晃司さん。

なかでも影響が大きいのは、室内の大部分を占める「床」と「壁」。ここを自然素材に変えるだけでもだいぶ違ってくるとのこと。

「壁材としてよく知られる『塩化ビニールクロス』には、可塑(かそ)剤などさまざまな化学物質が使われています。可塑剤は固いプラスティックを柔らかくするためのものですが、じつはWHO(世界保健機関)でも発がん性があると報告されている化学物質なのです。ずっとクロスのなかにとどまってくれていれば問題ないのですが、長い年月をかけて少しずつ室内の空気中に揮発していくことが指摘されています。そうすると、呼吸器系に悪影響を及ぼすことが考えられます。

また、意外と知られていないのが、フローリングなどの合板に使われている接着剤。最近は毒性が低いものになってきてはいるのですが、こちらも揮発して空間の下の方に溜まってきます。室内の小型犬などのペットにアレルギーが増えているのも、この接着剤が原因のひとつでしょう。自然素材を使うことで、こうした化学物質による不安もなくなります」(丸山さん)

【画像1】写真は亜麻仁油を主成分とした国産自然塗料「LOHAS OIL」。紫外線で劣化しないため、塗ったときの質感を長く楽しむことができる(写真撮影:末吉陽子)

【画像1】写真は亜麻仁油を主成分とした国産自然塗料「LOHAS OIL」。紫外線で劣化しないため、塗ったときの質感を長く楽しむことができる(写真撮影:末吉陽子)

冬場は足元が温かい、夏場は湿気を吸収など健康面以外のメリットも

さらに、そのメリットは健康面だけにとどまらないようだ。自然素材を使うことで、より快適に、過ごしやすい住まいになるという。

「例えば、冬場底冷えして寒くてしょうがない、という場合には床を合板から無垢材に変えるだけで、足で感じる温度が違います。無垢材だと裸足で歩いていてもポカポカ温かいんです。合板は熱伝導率が高いのですぐに体温を奪ってしまいますが、天然の木はもともと小さい穴がたくさん空いているので、空気の層があります。
そうすると、熱伝導率が低く熱を奪わないので温かく感じるのです。また、珪藻土を壁に使うと湿度を調整してくれるので、夏場でもジメジメしません。逆に冬場は湿気を放出して空気の乾燥を防いでくれます。珪藻土に替えてからエアコンに頼ることが少なくなったというお宅も多いですね」(丸山さん)

なお、建築用の自然素材には、主に次のようなものがある。これらは住宅に使われる部材のほとんどに取り入れることができる。

【表1】100%自然素材は難しくても、床や壁といった内装材にこれらの素材を取り入れてみてはいかがだろうか(丸山さんのお話をもとに筆者作成)

【表1】100%自然素材は難しくても、床や壁といった内装材にこれらの素材を取り入れてみてはいかがだろうか(丸山さんのお話をもとに筆者作成)

【画像2】珪藻土の原料である珪藻頁岩に、霧吹きで水をかけると一瞬で表面が乾く。この吸水性の高さで室内の湿気も吸い取ってくれる(写真撮影:末吉陽子)

【画像2】珪藻土の原料である珪藻頁岩に、霧吹きで水をかけると一瞬で表面が乾く。この吸水性の高さで室内の湿気も吸い取ってくれる(写真撮影:末吉陽子)

自然素材を導入する場合のコストは?

健康に優しいだけではなく、自然素材にしか出せない風合いも魅力。無垢の木の温もりを気に入って、リノベーションする人も多いとか。とはいえ、自然素材というとコストがかさむイメージもある。実際、量産型で低コストの人工素材に比べると、自然素材のなかには3倍くらい値が張るものも。

「自然素材は木材の場合、植栽から間伐、加工などいろいろな工程を経てつくられるため手間がかかっています。また、一つひとつの木材によっても違いがあり同じものはないため、どうしても人の手による選別が必要で、その分が価格に反映されているのです。価格の違いは、製品になるまでの手間がかかるか、かからないかということですね」

しかし、長い目で見れば自然素材のほうがかえって安く済むという意見もある。

「合板の場合、経年劣化によって床がベコベコになってしまうことがあります。それは板同士を貼り合わせている接着剤が、湿気による水分で劣化してしまうからなんです。その点、無垢材のフローリングであれば、接着剤による面接着をしていないのでそんな心配はありません。傷がついたときでもサンディング処理で少し削れば、新品のようになります。また、ビニールクロスの場合は紫外線で色が劣化しますが、珪藻土や漆喰に使用されている天然無機質顔料は何百万年もの時間をかけてできたものなので、ちょっとやそっとの紫外線では変色しません」(丸山さん)

高度成長期以降、住環境の変化や住宅の低コスト化、建設にかかる時間短縮などによって使い勝手のいい人工的な素材が取り入れられるようになった。とはいえ、時代をさかのぼれば住宅には全て自然素材が使われてきた。人の暮らしに優しく寄り添ってくれる自然素材、その魅力を今一度見直してみてもいいのかもしれない。

●OKUTA
HP:http://okuta.jp/
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