写真撮影:西村祥子
広島市西部にある古い団地「五月が丘」。今年もこの街で「五月が丘まるごと展示会」というイベントが開催された。団地内の住人が自宅を開放し、趣味や特技を活かした作品展示やお茶会、庭の公開などを行うこのイベントは、今年で8回目。昨年に引き続き、イベント中の街を歩いてみた。
街なかをゆっくり歩きながら、イベントに参加する家々をまわる
イベント初日の朝、JR西広島駅からバスに乗って約20分。五月が丘に着くと、すでに多くの人がパンフレット片手に歩く姿が見受けられた。今年イベントに参加する家は35軒。今回初めて参加する家もいくつかあるというので、気になる家をチェックしながら、街の中を歩く。
30年以上前に分譲されたこの団地は、敷地面積が広い区画が多い。歩いていても、立派な構えの大きな家や、庭を丁寧につくり込んだ家もよく見かける。モッコウバラやコデマリの花に癒やされながら、ゆっくり歩いて回るのも、このイベントの楽しみ方の一つだ。ただし、高低差のある通りもあるので、今年からは手をあげれば自由に乗り降りできる巡回バスも運行。さらに回りやすくなった。
【画像1】 団地内をまわる巡回バス(写真撮影:西村祥子)
「大変だけど楽しい!」と、住人を元気にするイベントパワー
イベントに参加する家の企画内容はまちまち。趣味を活かした小物などの展示・販売をする家もあれば、自慢の庭を公開する家もある。普段から自宅をアトリエや展示スペースとして公開する家もあるが、ほとんどがごく普通の家々。いくつかピックアップしてみよう。
【画像2】趣味でステンドグラスや寄せ植えを楽しんでいるというKさん。「以前からイベントには誘われていたのですが、今回、寄せ植えで賞をいただく機会などもあって、今回初めて『やってみようかな』と参加しました」。当日は、ステンドグラスの先生を招いて予約制の体験製作会を開くなど、ユニークな試みも(写真撮影:西村祥子)
【画像3】「町内会の役員になって、イベントの関係者が頑張っているのを見て、『何か役に立てることはないかな』と思いました」というAさんは、自宅で趣味の日本画を展示。玄関を入ってすぐのところにある幅広の廊下がギャラリー替わり。趣味の域を超えたステキな作品が並ぶなか、絵画好きの訪問者との会話にも花が咲く(写真撮影:西村祥子)
【画像4】Wさんのテーマは雑木とバラの庭。「ちょうどお花が少ない時期になってしまって残念」とはいうものの、緑豊かな庭に足を踏み入れ、木々の間から差し込む木漏れ日を感じていると、なんともいえずゆったりした気持ちになる。「イベント参加を決めてから、今まで交流のなかった人とも庭好きの輪が広がって、準備は大変でしたが、参加してよかったです」(写真撮影:西村祥子)
団地内の交流を深める、新しい「家開き」のカタチ
街を歩いてみても感想は、住んでいる人がとにかく明るくて元気!ということ。できて30年を超える古い団地は広島市内にもたくさんあるが、ここは「さびれた高齢化の街」というイメージからは程遠い。訪問者を出迎える家の人たちとは、まるでご近所さんのような気分で、気軽に言葉を交わすことができる。「街を元気にしたい」「自分も何か役に立ちたい」そんな思いが広がって、さらに参加する楽しさも浸透して、イベントはますます盛り上がっていきそうだ。