今年3月、ベビーシッターに預けられた2歳児が亡くなるといういたましい事件が起きたが、母親を非難する意見も多くあった。
10年前、保育所で見てもらえない病気の子供を預かる「病児保育」サービスを立ち上げ保育事業に参入、子育て支援を続けているNPO「フローレンス」代表理事の駒崎弘樹氏が、事件の背景や世論の反応について見解を述べる。
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事件は、保育の公的インフラがいかに脆弱であるかを示唆するものだと思います。近くで公的に安いお泊まり保育サービスがあれば、母親は信頼性の低いベビーシッターを頼む必要はなかった。
現在、24時間対応の保育園は認可では全国に5園しかありません。自治体が独自に運営するものもごくわずかで、370万都市の横浜市でもたった2園。少なすぎます。
一方で子供を預ける保護者は平日だけでなく土日や夜間にも仕事をする人が多い。今やサービス業が雇用を最も多く吸収しており、全国的に働き方が多様化しています。しかし保育インフラはそれに追いついていない。
ある政治家はブログで「親として無責任な面があったのでは」と書きましたが、まったくもって誤りで、行政の不備を放置している政治家のほうが無責任です。母親を責めたところで何一つ前進しません。
※SAPIO2014年6月号