住宅金融支援機構が毎年調査をしているのは、「民間住宅ローンの貸出動向調査」。2015年度は、2015年9月8日~10月30日に実施し、全国の308の金融機関から回答があった。
この調査で、金融機関に対して「今後の積極化方策」を聞いたところ、「商品力強化」(57.7%)、「借換案件の増強」(54.8%)、「金利優遇拡充」(45.6%)、「販売経路拡充や見直し」(39.0%)、「営業体制強化」(37.9%)などが上位に挙がった。なかでも前回調査(35.9%)より伸びたのが、「販売経路拡充や見直し」だ。
では、住宅ローンの販売チャネルとして何を重視するのだろう?重視チャネルのトップが「住宅事業者ルート」(81.6%)だ。住宅を販売する事業者が用意している提携ローンなどが該当する。また、前回より伸びているのが3位の「取引企業等の職域ルート」(勤務先の企業が雇用者のために用意している提携ローンなど)の68.1%で、2位の「窓口等での個別対応」69.7%に肉薄している。
一方、最も重視する顧客層としては、年収では「400万円程度」(50.5%)と「600万円程度」(46.0%)、融資物件では、「新築注文住宅」(71.8%)と「新築建売」(18.8%)で、それぞれ合わせると9割を超える。一戸建てを新築したり購入したりする、子育てファミリー層で、平均的な年収層(400万年程度)かそれよりややアッパー層(600万円程度)に住宅ローンを売り込みたいということだ。
また、融資の本審査で重視度が増していると考えられる審査項目については、「返済負担率(毎月返済額/月収)」(59.5%)や「職種、勤務先、雇用形態」(49.7%)が上位に挙がり、収入の安定性や返済の確実性などが重視されるようになる。
さて、日銀が1月29日、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を決定した。その影響で、株価や為替が乱高下している。金融機関も大混乱というのが現状だ。
個人ユーザーに対しては、金融機関の預金金利がマイナスになることはないが、金利は引き下げられて利息が期待できないほどだ。一方で、最低水準といわれていた住宅ローンの金利も引き下げられたので、住宅ローンを借りて家を買おうという個人にとってはメリットがある。
ただし、新たな局面を迎えたこの低金利が適用されるのは、これから引き渡しのために融資を受け取る場合だ。住宅ローンの金利は申し込みの段階ではなく、融資を受け取る際の金利が適用されるのが一般的だからだ。
確実にこの低金利を活用するなら、引き渡しが早い中古住宅を購入したり、竣工間近の新築住宅を購入したり、すでに借りている住宅ローンの借り換えをするといった選択肢が考えられる。
注意したいのは、金融機関の低金利競争が続いていて、すでに低金利が金融機関の採算性を悪化させるレベルまで来ていたということ。
調査結果を見ると「住宅ローンについて懸念するリスク」として、2015年秋の段階でも「金利競争を伴う利鞘縮小」(95.4%)、「中長期的な採算性の悪化」(56.5%)を過半数の金融機関が挙げており、ほかに「他機関への借り換え」(59.8%)、「金利上昇局面における延滞増加」(38.9%)、「景気低迷による延滞増加」(34.0%)などが上位に挙がっている。
低金利だから希望額まで借りられたという人には、金利上昇や収入の減少で返済を延滞させるリスクがある。調査時点でも、融資の審査基準について、現状維持が大半(「ほぼ変わらない」63.2%)ではあるが、厳しくしたり(「厳格化した」0.3%、「やや厳格化」2.6%)、慎重に審査したり(「慎重になった」13.6%、「時間を要する案件が増えた」2.6%)する傾向も見られた。さらなる低金利になったといっても、確実に返済できるかどうかしっかり審査されることに注意しよう。
さて、住宅ローンを利用する消費者にとっては、類まれな超低金利になっている。これを賢く活用するには、金利だけでなく、住宅価格や建築費の動向、消費税や住宅ローン減税の影響、自分の収入見通しなどを幅広く考慮して検討するのがよいだろう。