これからの住まい・暮らし
やまくみさん正方形
山本 久美子
2014年9月30日 (火)

三井不動産レジデンシャルが「2020年のふつうの家」を想像する理由

『2020 ふつうの家展 ~Park Homes EXPO 2014~』(写真撮影:山本久美子)
写真撮影:山本久美子

『2020 ふつうの家展 ~Park Homes EXPO 2014~』に参加した。これは、三井不動産レジデンシャル、トラフ建築設計事務所、面白法人カヤックがプロデュースした、少し未来の「すまいとくらし」について考える展示。どんな未来になるのか、展示の目的はなにか、取材した。

住まいがパートナーになる、ワクワクする暮らしがやってくる!?

展示内容は4つ。それぞれについて、説明しよう。

第一が、「キオクスル食卓」。
大きなダイニングテーブルの真上(天井)にカメラが据え付けられている。このカメラで食卓に並んだ食事、テーブルに置いて家族で見た思い出の品などを記録撮影。音声も録音できる。それを見たいときに同じテーブル上に再現する仕掛けだ。
記念日の思い出を積み重ねて振り返ったり、夜間に帰宅したお父さんがその日の夕食の様子を知ったりといった使い方が想定されている。

【画像1】キオクスル食卓。真上から撮影したダイニングテーブルが再現される(写真撮影:山本久美子)

【画像1】キオクスル食卓。真上から撮影したダイニングテーブルが再現される(写真撮影:山本久美子)

第二が、「ツクル空間」。
大きなアイランドキッチンには、3Dプリンターも組み込まれている。引き出したり閉まったりできる壁式のツール棚やタブレットのアプリとも連携して、さまざまな情報が管理されている。
例えば、今日の夕食のメニューは、冷蔵庫の中の食材に限定したり、過去のメニューとのバランスを考えたり、同じマンションに住むお料理自慢の家庭のメニューを参考にしたり…で、おすすめメニューが入手できる。キッチンのワークトップに料理の作業工程も表示されるので、それに従えば料理ができる。使用する調理器具もスポットライトが当たるので迷うことなく選べる。しかも、ロボットがおしゃべりしながら、ナビゲートしてくれる。
本日は、子どもが粘土でつくった世界遺産タージマハルを3Dプリンターで型枠をとり、ご飯を型に入れて形づくったカレーが夕食に、といった具合だ。

【画像2】ツクル空間。ワークトップがモニターになって、ロボットとおしゃべりしながら、メニューを考えたり、調理したりできる(写真撮影:左 SUUMOジャーナル編集部/右 山本久美子)

【画像2】ツクル空間。ワークトップがモニターになって、ロボットとおしゃべりしながら、メニューを考えたり、調理したりできる(写真撮影:左 SUUMOジャーナル編集部/右 山本久美子)

第三は、「ツナガル窓」。
オンラインビデオ通信システムを窓に見立てて住空間に組み込むことで、離れた場所に暮らす祖父母と食卓を囲んだりと、どこの家とも窓越しに空間を共有できる仕組みだ。
本日は、お父さんや田舎のおばあちゃん(役者さんが演じた)とゲームをしたり、風鈴を鳴らしたりといったデモンストレーション。

【画像3】ツナガル窓。田舎のおばあちゃん(おばあちゃんに見えないけど…)と会話を楽しめる。風を送ることもできるので、こちらからうちわで風を送るとおばあちゃんの風鈴がなった(写真撮影:山本久美子)

【画像3】ツナガル窓。田舎のおばあちゃん(おばあちゃんに見えないけど…)と会話を楽しめる。風を送ることもできるので、こちらからうちわで風を送るとおばあちゃんの風鈴がなった(写真撮影:山本久美子)

最後の第四が、「オトノナル扉」。
扉を開けると事前に登録した音が流れる。お父さんが遅くまで飲んで帰ってきたら、お母さんの怒りを表現した音が鳴るといった具合だ。

三井不動産レジデンシャルが少し未来の住空間を提案する理由

冷蔵庫の食材を登録してメニューを提案するだけならすでにアプリがあるし、Skype(スカイプ)を使えば今でも田舎の祖父母と会話ができる。今回の展示の狙いは、どこにあるのか? 2020ふつうの家展担当の町田俊介さん(三井不動産レジデンシャル市場開発部商品企画グループ主査)に伺った。

展示の狙いは、普及しつつあるICT(情報通信技術)と住空間を一体化させることにあるという。ICTを住空間に組み込むことで、「実用的」な住まいから「ワクワク楽しい(emotional)」住まいへと変換させる試みでもあると。

たしかにキッチンには、電子レンジではなく3Dプリンターが設置されていたし、引き出す壁式のツール棚には、調理器具と大工工具が並んで置かれていた。キッチン=調理する場としてだけでなく、家族のモノづくりの場とすれば、ライフスタイルが変わってくるということだろう。

「2020 ふつうの家展」の副題に「家は、パートナーになりたいと思った。」とあるが、ロボットが話しかけたり、扉を開く音が変わったりして、住まいがずいぶんと人間らしいのも、提案のひとつだ。

そもそも、こうした展示会を開催することの目的は何だろう? 町田さんによると、住まいを探すという顕在層だけでなく、潜在層とのコミュニケーションをはかるという側面に加え、バックキャスティング型で商品企画に役立てるという側面もあるという。

バックキャスティング型というのは、まず2020年という近い未来を想像して住まいを描き、それがどう受け入れられるかを分析して具体化に向けていく手法ということのようだ。来場者アンケートで、展示会の前半ではこうした住まいがアリかナシか、後半ではいくらまでなら出してもほしいかを聞いている。商品企画に活かすための声の収集だ。

今回の展示内容やその目的を伺って、筆者が感じたことはといえば、住宅の機能としては、もうこれ以上大きく進化するのは難しい(細かい進化は続くと思うが)というレベルまで来ている。これからは、ICTの技術をどこまで住まいに取り込んで、暮らしを豊かにするかというステップに進んでいるということだ。

●『2020 ふつうの家展 ~Park Homes EXPO 2014~』公式ウェブサイト
HP:http://www.31sumai.com/parkhomes-expo2014/futsunoie/
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