1
かつて世界を舞台に活躍した若手ライダーの1人に、若井伸之(わかい・のぶゆき)選手がいる。その若井選手が、日本から遠く離れたスペイン・ヘレスの地で命を落としたあの“悲劇”から、今年でちょうど20年を迎える。

若井選手は、1967年千葉県生まれ。1990年からロードレース世界選手権(WGP、現在のMotoGP)の125cc、250ccクラスに参戦し、細身で長身な体格と長い手足を折りたたむライディングスタイルで当時、「フラミンゴ」の愛称で親しまれて活躍した。

だが、1993年5月1日、スペイン南部のヘレス・サーキットで行われたスペインGPの予選で、タイムアタックしようとフル加速でピットロードから出ようとした瞬間、目の前に観客が飛び出してきた。両者は接触し、観客は軽傷で済んだものの、若井選手はバランスを崩してピットロードのコンクリート壁に激突して頭部を強打し、懸命の治療にも関わらず帰らぬ人となった。まだ25歳だった。

陽気で面倒見のいい性格だった若井選手は、世界選手権のパドックでも人気者だった。事故の後、募金で集まった資金で、ヘレス・サーキットに若井選手をしのぶフラミンゴのモニュメントが建てられた。

このフラミンゴのモニュメントは現在もヘレス・サーキットの敷地内にある。数年前、以前あったパドックの最終コーナー寄りから、現在はパドックの北のほう、自由席でも入場できるエリアに移動した。一時、金メッキが剥がれかけていた時期もあったと聞くが、現在は再び塗装がなされたようで、金色に輝き、花もきれいに生けられていた。

若井選手が亡くなって20年、日本人選手の顔ぶれはガラリと変わった。今年のスペインGP、かつて参戦していた250cc、現在のMoto2決勝では、20歳の中上貴晶選手が3位表彰台を争い、地元・スペインの強豪ライダーと大接戦を演じていた。残念ながら4位に終わったが、今後、大いに期待できる活躍ぶりを若井選手が見守るヘレスの地で目の当たりにできたのがとてもうれしかった。
2

Circuito de Jerez : Portada

(Written by AS)