毎日2万から3万回もの回数、当たり前のように繰り返している呼吸に、心と体を健康にするカギが隠されているという。仕事や生き方に悩む多くの人に、心身医学や脳生理学からセルフコントロール術を授けている、心理学博士の響怜於奈(ひびき・れおな)さんはこう話す。
「全身が映る鏡の前に立ち、1分間何も考えずに呼吸してみてください。ゆったりと深い呼吸をしているときは、肺のある胸やお腹がへこんだり膨らんだりします。しかし、浅くて速い呼吸をしているときは、鎖骨のあたりで呼吸をしているので、うまく空気が肺に入らず、口で“ハッハッ”と浅くて速い呼吸をしているでしょう」(響さん、「」内以下同)
響さんは、正しい呼吸により心身を整える「瞬間呼吸法」を提唱している。
「私たちは呼吸をしなければ生きていくことができません。呼吸によって外気から酸素を取り込み、その酸素は細胞の活動に使われ、生きていくエネルギーが作られます。その際の老廃物として二酸化炭素が発生し、呼吸によってそれを排出しています」
私たちは寝ているときも、息を吸ったり吐いたり無意識に呼吸をしている。なぜ、無意識に呼吸ができるのかというと、そこに自律神経が働いているから。
「自律神経は、私たちの体のさまざまな機能をコントロールしてくれている司令塔のようなものです。交感神経と副交感神経の2種類があり、アクセルとブレーキのような役割を果たしながら、呼吸や内臓の働き、体温調節などを司ります」
例えば、ストレス時には交感神経が優位になり、呼吸の回数も増え、心拍数が上がり血管も収縮する。これが「ドキドキ」している状態。これを緩和するのが副交感神経。副交感神経が優位になると、呼吸数も心拍数もゆったり落ち着き、身も心もリラックス状態になる。つまり、副交感神経を優位にすれば、耐えがたいドキドキ感や不安な心を解消できるということだ。
「そして、自律神経をコントロールできるのが呼吸なのです。呼吸を深くゆったりしたものに変えることによって、副交感神経を優位にすることができます」
※女性セブン2013年8月8日号