リクルート住まいカンパニーでは、「2014年版 みんなが選んだ住みたい街ランキング 関東版」と「2014年版 みんなが選んだ住みたい街ランキング 関西版」をそれぞれ「20代~40代編」と「50代~60代編」に分けて発表した。今回は、関東(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)に居住している人を対象に「関東版」の結果について、詳しく見ていこう。
まず、20代~40代の住みたい街(駅)ランキングを見よう。1位と2位は昨年に引き続き「吉祥寺」と「恵比寿」。3位以降は、下表のように「池袋」「中目黒」「横浜」…と続く。人気沿線で2トップのJR山手線と東急東横線の街(駅)が圧倒的な強さを見せた。
2014年版の注目ポイントは、「池袋」と「中目黒」「武蔵小杉」の躍進だ。
まず「武蔵小杉」については、新たに横須賀線の駅が開業して以降、駅周辺の開発が進んで利便性が高まるとともに、高層マンションが次々と建築・分譲され、最も活気を見せている街のひとつだ。2013年の公示地価でも上昇率がトップだったことで分かるように、資産価値の向上も期待されている。
「池袋」と「中目黒」については、副都心線にヒントがありそうだ。
池袋・新宿・渋谷の三大副都心を縦断する東京メトロ副都心線は、人の動きを変えたといわれている。2013年3月に副都心線と東急東横線が相互直通運転を開始するのに伴って、東京メトロ日比谷線と東急東横線の直通運転がなくなった。日比谷線は「中目黒」で折り返しとなるため、東急東横線における「中目黒」の注目度が高まったといっていいだろう。
「池袋」も副都心線の影響を受けているはずだが、それだけで13位から3位に躍進するものだろうか?
All About「住みやすい街選び(首都圏)」ガイドの中川寛子さんに聞いてみた。「池袋駅周辺は、街の開発などのハード面では大きく変わっていませんが、ソフト面が変わってきています。」
ポイントは行政面だ。赤字を抱えていた豊島区は、現区長の高野之夫さんが就任して以降、人員削減などで借金の軽減を図る一方で、文化事業に力を入れているという。当然「池袋」は、その核となる。例えば、池袋ジャズフェスティバル、東京フラフェスタin池袋、池袋演劇祭、ふくろ祭りなど、池袋駅周辺で開催されるイベントは多い。街の雰囲気も変わってきていると、中川さんは指摘する。
同じ20代~40代でも、男女別でランキングに違いが表れる。男性総合ではトップ10内を「品川」「池袋」「横浜」「新宿」「渋谷」「東京」のターミナル駅が占め、12位に「秋葉原」がランクインするなど、交通利便性の高い街(駅)が強みを発揮している。働き盛りの男性陣は、通勤や仕事の移動などの交通利便性が極めて重要なポイントのようだ。
一方、女性は「吉祥寺」や「恵比寿」に加え、「自由が丘」や「表参道」「二子玉川」が上位に入るなど、おしゃれなブランドエリアが重要なポイントであることがうかがえる。
50代~60代でも、ランキング1位と2位は「吉祥寺」と「恵比寿」。ただし、20代~40代では上位だった池袋、新宿、品川などの主要ターミナル駅がランク外となり、11位から25位だった「鎌倉」や「たまプラーザ」「荻窪」「二子玉川」がトップ10にランクインした。交通利便性や商業施設も重要ではあるが、落ち着いた街並みや豊かな自然を併せもつことの評価が高いことがうかがえる。
男女別でみると、男性は「鎌倉」や「浅草」など伝統や歴史を感じさせる街がトップ10に入り、女性は「青山一丁目」が9位に入るなど「恵比寿・自由が丘・表参道・二子玉川」とともに、おしゃれで街歩きが楽しめる街(駅)が トップ10の半数を占めた。
このほか、20代~40代編では、シングル、DINKS、ファミリーのライフステージ別や住みたい沿線ランキング、住みたい行政市区ランキングなども発表されている。
全体的に、交通アクセスが便利で、商業施設が充実していることに加え、街並みがきれいだったり、緑が豊かだったりする街(駅)に人気が集まっている。住みたいと憧れる理由は分からなくはないが、現実的に住めるかどうかは別物。地名のブランドに惹かれている部分も大きいように思う。
一方で、開発が進んでいる街や交通アクセスが変わった駅など、活気を見せる街(駅)が上位にランクインしている点も見逃せない。ランクインした街以外でも、交通が便利で、商業施設が整い、活気のある街は多い。もっと身近にある、自分なりの住みたい街を見つけてほしいとも思う。