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街を変えるリノベーション
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矢部智仁
2014年4月10日 (木)

進化するリノベーションスクール@北九州。創発されるまちのあり方(3)

写真: iStock / thinkstock
写真: iStock / thinkstock

北九州市の都市政策である「小倉家守構想」をもとに、中心市街地のにぎわいと雇用の創出の実現を図るための核として平成23年から始まった「リノベーションスクール@北九州」。

リノベーションスクールについてはSUUMOジャーナルでも2013年9月に第五回の様子を伝えている(https://suumo.jp/journal/2013/09/10/51440/)。そこでも伝えているとおり、核となるスクールのプログラムは実際に存在する遊休不動産を題材に、全国から集まった受講生が、与えられた不動産でどのような事業を展開し、そのために必要なリノベーションプランを練り、アイデアと収支を事業計画にまとめ不動産オーナーに提案するまでを四日間で行うというもの。

それだけでも十分に実践的な再生活動だと思えるが、第六回である今回のリノベーションスクールでは、当初の目的であった「中心市街地のにぎわいと雇用の創出の実現」にむけてさらに進化を遂げている。

今回はスクールの成果をリノベーション事業計画コースで生み出された提案を例に振り返る。

事業計画コースの成果

受講生は四日間にわたって現地に足を運び、そこに住まう人々の声に耳を傾け、提案を練るわけだが、最終日にはほぼ徹夜に近いユニットワークによって事業提案が生み出される。提案はどれも具体的で、提案を受ける側に熱い思いを湧き上がらせるものであった。

例えばユニットHの提案したTANGA TABLEのプロジェクト提案では、市民の誰もがその情景を思い浮かべる旦過市場にある「食」を活かしまちのゲストと市民が繋がるゲストハウスのプランには、アドバイザーの中からそのプロジェクトに出資すると言わしめるほどのやり取りも起こるほどであった。

また、過去の事業提案ではあまり出なかった不動産を活用するための専門的なスキーム(例えばSPCの活用など)が、専門家ばかりでない受講者も混じるユニットワークから提示されるなど、会場聴衆の多くが提案の具体性についてうなずく場面が多く見られた。

このようなことが起こる背景には、ユニットマスターのファシリテーションのレベル向上が影響しているだろうし、あるいは参加者自体の目的意識の高さもある。また、過去にスクールを受講した経験をもつ地元金融機関の職員が自ら会場に入り、各ユニットが提案内容を練り上げる過程で「金融機関としての目線」で事業計画の精度についてアドバイスを加えていたことなどこれまでにないサポートの存在も関係していると思われる。こうしたことも今回のスクールの進化ポイントの一つだといえる。

各ユニットから示された事業提案の詳細まで書ききれないが、その詳細は映像アーカイブでも見ることができるので、参照されたい(https://www.youtube.com/watch?v=VMMhRiepwpo)。

進化するリノベーションスクール@北九州。創発されるまちのあり方(3)

SUUMOジャーナル

リノベーションスクールの進化とその先

今回のスクールを現地に入り受講者をはじめとする参加者、関係者と同じ時間を過ごす中で感じたことは、何と言っても受講者のスクールへの、そして自分が住むまちへの参加意識の高さだ。

具体的に比べることは難しいのだが、おそらく過去の受講生との間に建築や不動産取引に関する知見や経験に大差はないと思う一方で、ユニットワークを見ていると提案内容を考える思考回路の中に、活かすべきまちの資源(人であったり歴史であったり)を見つけ出す感性の鋭さや、資源を見つけ出そうとする意欲の高さに驚かされた。

この背景には、リノベーションスクール価値や意義について認知が広がる過程の中でリノベーションに対する意識が高まり、高い意識の参加者がまたスクールの価値を高めるという好循環が始まったことが大きいのではないだろうか。
実は、会場に来ていた聴衆の中に過去のリノベーションスクールの公開プレゼンテーションのアーカイブを、それこそ何度も何度も上映会を行ってみんなで観ている人がいたようで、そのような知の波及と蓄積が進んだことでスクールの進化が加速しているのではないだろうか。

●リノベーションスクール@北九州
HP:http://renovationschool.net/kitakyu/
https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2015/05/3a9a4888f83c306f244d19ea30e6e783.jpg
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