国内

「日本版セウォル号」扱い等世界に広がった朝日吉田調書報道

 日本中がメルトダウンの恐怖に戦慄した3年前のあの日、福島第一原発に最後までとどまって大惨事を防いだ人々がいたことを国民は忘れない。文字通り命を賭して事故と闘った人々は海外メディアでもその献身的行為を讃えられた。

 だが、朝日新聞は彼らの名誉を根底から覆してしまった。5月20日朝刊1面で〈所長命令に違反 原発撤退〉の大見出しを掲げ、

〈東日本大震災4日後の11年3月15日朝、第一原発にいた所員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発へ撤退していた。その後、放射線量は急上昇しており、事故対応が不十分になった可能性がある。東電はこの命令違反による現場離脱を3年以上伏せてきた〉

 そう“スクープ”した。

 朝日が報道の根拠にしたのは、事故対応の現地責任者だった吉田昌郎・東電福島第一原発所長(昨年7月死去)が政府事故調査委員会に語った非公開の調書(吉田調書)だ。調書を入手した朝日は、吉田氏の証言として650人があたかも持ち場を放棄して逃げ出したかのように書いたのだ。それが世界にどのようのバラ撒かれたのか。

〈2011年、パニックに陥った作業員たちは命令を無視して福島原発から逃げ去っていた〉(米ニューヨークタイムズ)、〈危機の最中に福島原発の作業員が逃走と日本の新聞が報じる〉(英BBC)、〈福島の“ヒーローたち”は実は怖くなって逃げ出していた〉(豪オーストラリアン)

 朝日新聞が「吉田調書」の“スクープ”を報じた後、それを記事にした海外主要メディアの見出しだ。多くは朝日の記事をそのまま写したもので独自取材はない。それゆえ朝日の言い分がそのまま世界に垂れ流された。

 韓国ではさらに過激な見出しが躍る。

〈福島原発事故は日本版セウォル号だった! 職員90%が無断脱出……初期対応できず〉(週刊誌「エコノミックレビュー」)、〈福島事故もセウォル号の船員たちのように……〉(ソウル新聞)、〈日本版セウォル号……福島事故時に職員ら命令無視して原発から脱出〉(国民日報)

 不正確な記事を海外メディアが引用し世界各国から「日本叩き」の潮流ができあがる。これはまさに慰安婦問題を朝日が膨張させた構図そのままだ。

※週刊ポスト2014年9月5日号

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン