2014/10/11 23:58

ブリティッシュ・フォークの至宝、美しきラスト・アルバム——VASHTI BUNYAN、9年ぶりの新作ハイレゾをCDより2週間先行で

ヴァシュティ・バニアン

ヴァシュティ・バニアン——。1970年の1stアルバム『Just Another Diamond Day』が幻の名作として語り継がれ、2005年には2ndアルバム『Lookaftering』で35年ぶりの復活を果たしたイギリス人女性フォーク・シンガーだ。そんな彼女が、前作から9年ぶりとなる新作『Heartleap』を配信開始した。しかも、24bit/44.1kHzのハイレゾ、日本のみのボーナストラック付属、そしてCDより2週間先行で。

ヴァシュティ自身によって最後のアルバムと公言された本作は、作詞、作曲、アレンジ、演奏、そしてレコーディングまで、すべてを彼女ひとりでおこなったという。40年以上のキャリアの集大成として、彼女は彼女の中にある音世界を、誰の意図も介在させずに届けることを選んだのだ。アコースティック楽器の優しい響きに満ちたサウンドは、まるで子守唄のようにただただ心地良い。ブリティッシュ・フォークの至宝と称されるその音を、ぜひハイレゾでご堪能いただきたい。


ブリティッシュ・フォークの至宝、美しきラスト・アルバム!!
CDより2週間先行、優しさに満ちたこのアルバムをハイレゾでお届け!!

VASHTI BUNYAN / Heartleap
【配信形態】
ALAC / FLAC / WAV(24bit/44.1kHz)

【価格】
ALAC / FLAC / WAV : 2,160円(税込)(単曲は各248円、M11のみ270円)

【収録曲】
01. Across The Water
02. Holy Smoke
03. Mother
04. Jellyfish
05. Shell
06. The Boy
07. Gunpowder
08. Blue Shed
09. Here
10. Heartleap
11. Old Hat (Mice Parade Cover) [Bonus Track for Heartleap Japanese Edition]

ブリティッシュ・フォーク界の仙女、静穏なフィナーレ

彼女にとってこの10数年間は、音楽業界から引退していた70年代以降の失意の日々を取り戻すための月日だったのであろう。霧深い森の奥へと心地よく誘われていくような多幸感に満ちたサウンドを聴くと、その月日は十二分に満足の行く成果を残し、終幕を迎えようとしているように思えてならない。彼女は前作から9年ぶりとなるこのアルバムを、最後の作品にすると固く心に決めているそうだ。

来年で御年70歳。前作よりも声の出がよくないことは否めない。しかし、声の音程は安定しているし、耳元で囁くような歌が放つ抗いがたい魅力は、ヴォーカルに施された潤い成分たっぷりのリヴァーブと、エレアコとエレピ主体のまろやかなサウンドにより、むしろ増幅された感さえある。それは、生楽器主体の「フォーク」というより、まるで椅子に深く腰掛けながらゆったりと演奏されるコクトー・ツインズのような「ドリーム・ポップ」と形容する方がよりふさわしい。

前作は、現代音楽 / 映画音楽 / エレクトロニカを股にかける音楽家であるマックス・リヒターによる、弦楽やダルシマー、さらにはメロトロンまでをも駆使した多彩でありながら簡素なアレンジメントが素晴らしい作品であった。一転して今作は、「誰かの庇護から抜け出て、自分ひとりでやってみたかった」との言葉通り、多重録音されたギターと鍵盤の内宇宙へと吸い込まれていくような至福の音楽が紡ぎ出されている。ポリリズムを導入した「Across the Water」や、テンポ・ルバートで演奏される「The Boy」など、流麗さの中に自然に潜むサイケデリアには、デヴェンドラ・バンハートのようなフォーク界の住人のみならず、アニマル・コレクティヴのような実験的なポップ・バンドをも信奉者とさせてしまう所以が感じられる。

2000年代以降、様々なアーティストやフォロワーたちと彼女は数多く共演してきたが、今作に参加している「現代のニック・ドレイク」を自称 / 他称するガレス・ディクソンや、バニアンのワールド・ツアーのバンド・メンバーも務めたジョー・マンゴーといったブリティッシュ・フォークの新世代も見逃せない。発売当初はまるで売れなかった自身の作品に熱心に耳を傾けた音楽家たちと過ごした日々は、彼女にとって文字通り夢のような時間であったに違いない。次の世代へとバトンをつないだという万感の想いを胸に、彼女はその数奇な音楽人生の幕を閉じようとしている。

(text by 青野慧志郎)

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PROFILE

Vashti bunyan
1970年発表の1stアルバム『Just Another Diamond Day』が幻の名作として語り継がれ、2000年頃にフリー・フォークのルーツとして再評価、2005年には2ndアルバム『Lookaftering』で35年ぶりの復活を果たしたイギリス人女性SSW。40年以上のキャリアを誇る、ハートウォーミングで神秘的なウィスパー・ヴォイスで、聴く人々を包み込む。

この記事の筆者
青野 慧志郎

■ yoji & his ghost band @YojiGhostBand / No Eyes @no_eyes / Ghostlight @ghostlight_jp / 折坂悠太 @madon36 サポート (Gt, F.Mand, Cl, Banjo, Key) ■ 音楽評論文執筆 ■ インフラエンジニア

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