買ってみたらこうだった!

最後の1Wを削減するために、DDR3Lメモリの低消費電力性能を試してみた

DDR3Lメモリ

 すっかり夏らしい気温になり、PCの消費電力や発熱が気になるシーズンになりました。普段はハイスペックなPCを好む編集部の久保ですが、この時期だけは熱くならないPCをメインに使用したくなります。

 そこで、今回はDDR3Lメモリの低消費電力性を試してみることにしました。現在では対応環境も増え、ほぼノーリスクで導入できるので、これで消費電力がそこそこ落ちるなら儲けものです。通常のDDR3メモリとどの程度消費電力が違うのか調べてみました。

テストは最新のHaswell Refresh + Z97マザーの環境で実施

SanMax SMD-16G68CP-16KL-Q-BK

 今回使用したDDR3LメモリはSanMaxのSMD-16G68CP-16KL-Q-BK。4GB×4枚セットで、1.35V動作のほか、DDR3L非対応環境では通常の1.5Vで動作するモデル。実売価格は税込み22,000円前後。ちなみに、同社製のDDR3L 4GB×2枚セットのSMD-8G68CP-16KL-D-BKは税込み11,000円前後で販売されています。

 このメモリに以下のPCパーツを組み合わせて今回はテストしています。マザーボードがオーバークロック用のモデルですが、「MSIのオーバークロックモデルは実は低消費電力で普段使いに向いているらしい」という噂を聞いたので、今回試しに使用してみました。


高負荷時に差が出るDDR3Lメモリ、アイドル時は通常のDDR3メモリと変わらない?

 今回使用しているSMD-8G68CP-16KL-D-BKは1.35/1.5V駆動両対応なので、通常のDDR3メモリ動作時(1.5V)とDDR3L動作時(1.35V)で差が出るのかテストしました。メモリに負荷をかけるのにはCrystalMark 2004R3のメモリのベンチマークテストを利用しています。

 以下が4GB×4枚構成時の1.5Vと1.35V動作時の消費電力。

アイドル時のシステム全体の消費電力(最小値)
4GB×4枚(1.5V動作)
4GB×4枚(1.35V動作)
高負荷時のシステム全体の消費電力(最大値)
4GB×4枚(1.5V動作)
4GB×4枚(1.35V動作)

 アイドル時の差は1W、高負荷時の差は3Wと若干の差がでました。4枚構成なので、1枚あたりアイドル時は0.25W、高負荷時0.75W消費電力が削減されました。個人的にはもう少し下がるかと思いましたが、そう簡単に消費電力は下がらないようです。

 一応、4GB×2枚構成でもテストしてみました。以下がその結果。

アイドル時のシステム全体の消費電力(最小値)
4GB×2枚(1.5V動作)
4GB×2枚(1.35V動作)
高負荷時のシステム全体の消費電力(最大値)
4GB×2枚(1.5V動作)
4GB×2枚(1.35V動作)

 アイドル時の値を見てもらいたいのですが、4枚構成時とほとんど消費電力がかわっていません。高負荷時はさすがに2枚構成と4枚構成で差がでますが、DDR3メモリって元々かなり低消費電力なのでしょうか……。


さらに電圧を落とすと消費電力は下がる?低電圧動作の限界を探ってみた

※製品のダウンクロックはメーカー動作保証外の行為になります。この記事を読んで行った行為によって、仮に損害が発生しても弊誌および、メーカー、販売ショップはその責を負いません。また、検証の数値等はテストに使用した個体のもので、全ての製品で保証されるものではありません。

 通常のDDR3メモリよりも若干消費電力が低いことがわかったDDR3Lメモリですが、さらに電圧を落とすことで消費電力が削減できるのか試してみました。

1.1V以下では正常にPOSTせず。
1.14V以下ではPOSTしてもエラーだらけ。
1.15Vでメモリは正常動作。

 POST可能なのは1.1Vから。1.1V未満では正常にPOSTできず、マザーボードの設定をリセットする必要ありました。OSが起動しそうになるのは1.12Vくらいからで、正常にOSが起動したのは1.15V。

 memtest 86+でチェックしたところ、1.14Vまではエラーだらけですが、1.15Vでエラーが全くでなくなりました。今回テストした環境では1.15Vが正常に使用可能な最低電圧のようです。

 肝心の消費電力の方ですが、1.15V動作時は以下の様な結果になりました。

アイドル時のシステム全体の消費電力(最小値)
4GB×4枚(1.5V動作)
4GB×4枚(1.35V動作)
4GB×4枚(1.15V動作)
高負荷時のシステム全体の消費電力(最大値)
4GB×4枚(1.5V動作)
4GB×4枚(1.35V動作)
4GB×4枚(1.15V動作)

 電圧を落としてもアイドル時の消費電力はあまり変わらないようです。高負荷時は1.5V時と比較して5W(4GB×4枚構成時)落ちているので、電圧を下げた効果はでているようです。

 なお、このテストの最中にOSが2度ほど飛びました(苦笑)。1.14V以下ではメモリエラーが多発している状況だったので、起動失敗時にOSが破壊されてしまったようです。低電圧駆動をテストする際は十分にご注意下さい。

 ちなみに、今回はHaswell Refresh環境の数値を紹介していますが、同じメモリをIvy Bridge環境でテストした際は1.2V前後が正常動作する最低電圧、Sandy Bridge環境では1.25V前後が正常動作する最低電圧でした。世代が進むごとにCPU内蔵のメモリコントローラやマザーボード側の耐性が高くなっているのかもしれません。


1Wでも削りたい低消費電力PC作成の最後の仕上げに、1Wにこだわれる人向けのメモリ

 検証してみて、DDR3Lメモリは劇的に消費電力を削減できるものでは無いことがわかりました。消費電力が高いゲーミングPCなどの場合は誤差の範囲。ここにお金をかけるなら通常電圧で高クロックのメモリに投資した方がよいかもしれません。

 ただ、1Wが大きな意味を持つ低消費電力PCなどの場合、話は別。システム全体の消費電力が30W前後の構成なってくると、わずか1Wでも削減するのが難しくなってきます。CPU、電源、ストレージ、マザーボードと低消費電力のパーツで固めて、もう一歩消費電力を落としたいといった場合にはDDR3Lメモリを選択する価値があると言えます。

 劇的な効果をもたらすものではありませんが、「1Wでも確実に消費電力を削りたい」とこだわれる人にはお勧めの製品です。

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