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連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2013年11月13日 (水)

預金連動型の住宅ローンってどんな仕組み?どんなメリットがある?

写真: iStock / thinkstock
写真: iStock / thinkstock
【今週の住活トピック】
住宅ローン「キャッシュバックプラン」の取り扱い開始/武蔵野銀行

http://www.musashinobank.co.jp/irinfo/news/pdf/2013/juutaku.pdf

武蔵野銀行が、住宅ローンの「キャッシュバックプラン」の取り扱いを開始した。この住宅ローンは、いわゆる「預金連動型」と呼ばれるもの。そこで、預金連動型のローンの仕組みやメリット・デメリットについて検討してみよう。

預金残高に応じて住宅ローンの利息が軽減される

「預金連動型」の住宅ローンとは、銀行預金と住宅ローンをセットに考えて、預金残高に応じて住宅ローンの利息を軽減するもの。ただし、銀行によってそれぞれ軽減の仕方や特徴が異なる。

草分け的存在でもある東京スター銀行の場合は、住宅ローンの残高から預金残高を差し引いた部分にしか金利がかからない。一方、今回の武蔵野銀行の場合は、住宅ローンの残高のうち対象となる預金残高分については、利息(ただし預金金利分は差し引かれる)をキャッシュバックするというもの。預金残高と同額の住宅ローンについては、ローンの金利が預金金利まで引き下げられる効果がある。

東京スター銀行の場合は、住宅ローンの借入額が購入価格の7割までとなるが、住宅ローンと同額の預金残高まで連動の対象となる。一方、武蔵野銀行の場合は、住宅ローンの残高の5割までの預金残高が連動の対象となる、などの違いがある。

武蔵野銀行のようなキャッシュバックタイプは、ほかにも関西アーバン銀行や北日本銀行、愛媛銀行などいくつかの銀行で取り扱っている。ただし、北日本銀行や愛媛銀行では、本人の預金残高に加え、家族名義の預金残高も5割まで連動の対象に加えることができる。関西アーバン銀行も、家族名義の預金残高も5割が対象となるが、預金残高と同額の部分までは0.5%のローン金利とするなどの違いがある。

いずれの場合も、連動の対象となる住宅ローンや銀行預金は特定されるが、預金を増やすことで実質的なローン金利の負担が軽減されるという仕組みになっている。

手元資金を残して繰り上げ返済と同様の効果が得られる

預金連動型の住宅ローンのメリットは、預金を残しながら繰り上げ返済と同様の利息削減効果が得られること。繰り上げ返済をすると、貯金などの手元資金が減ってしまうが、この仕組みを使えば万一のときには預金残高から資金を引き出すことができる。

また、住宅ローン残高の全額で、住宅ローン控除(住宅ローン残高の1%を最長10年間所得税などから控除する減税制度)が受けられるという点もメリットとなる。3000万円の住宅ローン残高に対して1500万円の預金残高があれば、預金残高の1500万円分は実質的に金利がほとんどかからないが、住宅ローン控除は3000万円が対象となる。しかし、繰り上げ返済をしてローン残高を圧縮すると、その額しか控除の対象にならない。

一方デメリットとしては、住宅ローンの金利が高く設定されている場合が多いこと。したがって、住宅ローンの残高に対して相応の預金残高がないと、金利軽減の効果が得られず、かえって割高になってしまう可能性も起こりうる。

武蔵野銀行のホームページに掲載されている試算によると、2000万円の住宅ローン残高(ローン金利1.475%)に対し、対象となる預金残高(預金金利0.02%)が1000万円の場合、キャッシュバックの効果により、住宅ローン2000万円に対する実質金利は0.736%になるという。預金残高がこれより少ない、あるいは住宅ローン残高がこれより多い場合、金利がこれより高い場合などは、実質金利が上がっていくことになる。

こうして見ていくと、預金連動型の住宅ローンは、住宅ローンを借りた上でも多額の預金をできる人で、手元に資金を残したいが金利の削減も図りたいという人に向いているローンといえる。ただし、借入額や手元に残したい資金の額、金利や諸費用などを具体的に検討し、試算をしたうえで実質的に金利の削減効果があるかどうか判断するとよいだろう。
最近は、女性専用ローンや各種の保険を付帯したローンなど、多種多様な住宅ローンが提供されている。それぞれにメリット・デメリットがあるので、特徴をよく理解して比較検討した上で、自分に向いているローンを選ぶことをお勧めしたい。

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