photo:KT
数々の作品をフリーで配信してきたMaltine Records。
tofubeatsの別名義di newtown、Okadada、Avec Avec等、関西におけるビートシーンの重要アーティストの作品がここに集結する。
一躍注目を浴びたtofubeats「水星 feat.オノマトペ大臣」。
オノマトペ大臣は休日、たまにお付き合いのゴルフに励む会社員。他に、トーベヤンソン・ニューヨークのメンバーとしても活動を行う。
そしてtofubeatsの大学時代の同輩であり、休日トラックをつくっている神戸在住のthames beat。
この二人によるユニットがPR0P0SE 。
―――――――
◆
会社員になってから音楽活動を始めているオノマトペ大臣。
オノマトペ大臣(以下「オ」)
「会社に入ってから1年ぐらい経ったときに、トーフ君(tofubeats)と一緒にやった“BIG SHOUT IT OUT”ができて、それから急にラッパーになった感じです。 」
それからtofubeatsと同輩であるthames beatと組み、PR0P0SEを結成。
オ「旧グッゲンハイム邸って場所があるんですけど、そこでのライヴの依頼を受けたことがあって。
そのときに、せっかくやるのなら、ちょっと変わったことをやりたいなと思って。
それに出るために、テムズ君を誘ったのがきっかけです。だから最初は、その日だけのユニットだったんです。 」
thames beat(以下「テ」)
「ちょうどそのとき、僕が作ったライナーにラップを載せたバージョンの曲があって。
大臣と2人でやってるものもあるし、ライヴで2人でやってみても良いんじゃないかなと思って。
で、ライヴ用に他にも何曲か作ろうってなって。
気づいたら、ユニットになっていましたね。 」
オ「そうそう。そもそも、僕はCDJから曲を流して、ラップをするんですけど、そのCDJを上手く操れないので、必ず誰かにお願いしていたんですよ。
誰でも良かったんだけど、テムズ君が暇そうだったから頼んで(笑)。 」
ここからPR0P0SEが誕生…!しかし、どうしてプロポーズ??
オ「何回かスタジオに入ってるうちに、名前をつけようってなって。
僕は渋谷系が好きだったから、名前はお洒落なやつにしたいと思っていて。
で、テムズ君の大学の近くにあるローソンに昼飯を買いに行く途中に、PR0P0SEはどうや?ってなって。 」
◆
渋谷系が好きだと口にするオノマトペ大臣。
そもそも二人はどんな音楽を熱心に聴いてきたのだろう・・・。
テ「2人とも好きなのはやっぱ、渋谷系とか。
僕個人としては、大学に入ってからは70年代のソウルとかファンクとかを聴いていて。
そこからサンプリングをして、トラックを作ります。
あとは、インディーズロックとかポップとかも好きですね。
例えば、HARVARDとか。色々ですね。 」
オ「僕は高校3年間、日本語のラップしか聴いていなくて。
でも、大学入ったぐらいから完全に飽きてしまって。
そこから今に至るまで全然聴いてないですね。
ラッパーやってるから、当然ラップ好きだろうとか言われるんですけど、全然好きじゃないんですよ(笑)。 」
―高校時代というのは、具体的にどんな音楽を聴いていたのですか?
オ「例えば、ラップって、知名度もあって売れてるポップな感じと、ちょっと悪そうなやつがあって。
僕はどっちかというと、悪そうなやつが好きでした。
当時はめちゃくちゃマニアックなのを聴いていましたね。
有名どころでは、ニトロ(NITRO MICROPHONE UNDERGROUND)が一番好きでした。
その時代のものは、もう全部聴いていましたね。
というのもその頃は、大ブームだったので。
あと、僕は雑誌が大好きだったので、『STUDIO VOICE』が90年代リヴァイバル特集とかをしていたりして。
そういうものにも影響を受けていました。 」
けれども彼のラップは韻を踏むことや決まり文句等のルールに固執しておらず、
それどころかむしろ、毎日を過ごすなかで住む街を歩けば、
そっと風が吹いてくるような気分がして、
気づけば簡単に肩の力が抜けてゆく・・・。
オ「多分、聴いている人にとっては僕らのラップを悪そうだとか思っては聴いていないと思うんですよね。
僕が、当時聴いていたようなヒップホップって、聴いている人だけがわかるルールみたいなのが結構多いんですよ。
わかりやすいところでいうと、韻を踏むとかそういうことがあったり。
あとは、歌詞の内容とか。例えば、勝ち上がっていくぜ! みたいな感じとか。
僕は大体ラッパーならこういうことを歌うだろうっていうのを全部避けるっていう方向で作りますね。
それとは違うよってことをやってるというか。
なので、ある意味では、日本語のラップを意識した上で、違うことをやってるっていうか。 」
テ「大臣って、韻を踏むのも避けてたりしますもんね。 」
オ「うん。わざと踏まないようにしてる。 」
◆
—では、最近お二人が好きなアーティストはどなたですか?
テ「大臣は最近、さかいゆうにハマっていますよね。 」
オ「うん。歌が上手いなと思っていて。
あと、最近ってわけじゃないけど、僕はずっと小沢健二が好きで。
大学生のときに、小沢健二が好きだなって思ったときの感情と、今になって小沢健二が好きだなって思うポイントが変わってきて。
ちょうど僕、ライヴに出るのをやめているっていう時期なんですね。
その“ライヴをやめる”っていうのは、小沢健二が昔、すごい人気があったのに突然出てこなくなっちゃって。
その、急にやめたっていうのがずっと僕の頭の中にあって。
僕は、ライヴをやめても曲は出していくので、少し違うんですけど。
今はなんかそういう目線で、彼の曲を聴いたりしていますね。 」
彼の言う通り、今年1月のライヴをもって現在はライヴ活動を休止している。
オ「絶対に何がなんでも出ないとかそういう感じじゃないです。
アーティスティックな感じでやめるっていう感じじゃなくて。
例えば、誰かのライヴに遊びに行って、ちょっと出てよ! って言われたら出ますし(笑)。
そういうのはしていこうかなって思っています。
実は、今年結婚する予定なんです。
そういうこともあって、毎週末どっかでライヴをやって過ごす生活はそろそろ卒業しようと思いまして。
ライヴだと、日にちが決まっちゃうのでね。
1日の時間が全部埋まっちゃうというか。
そこでさらに家庭を持つ、となったら大変ですからね。 」
◆
—普段レコード屋さんに行って音楽を探ったりされていますか?
オ「僕はもう全くしないです。
レコードプレーヤー持ってないんですよ、何枚か出してるのに(笑)。
眺めるばかりで。 」
テ「僕はずっとレコ屋に通ってます。
まあ、mp3に落とせますもんね。
便利な時代ですし。 」
—大臣さん、以前サザンオールスターズのライヴに行かれてましたよね?
オ「行ってました!サザンは素晴らしいです。 」
テ「あ、サザンのレコードは安く買えるので良いですよ。
だいたい100円~300円で何枚も買える。 」
オ「へぇー!100円って良いね~。 」
テ「J-フュージョン見かけることとかめっちゃ多いですね。
カシオペア(CASIOPEA)とか。
あとは、サザンとかアイドル系のやつとかよく見かけますよ。 」
―テムズさん自身は何を買いますか?
テ「実際、僕は70年代のソウルとかディスコのレコードを買うことが多いですかね。
場所は元町の高架下にある店に行くことが多いです。
あとは、ハードオフとか。
『PROPOSE』のなかでサンプリングした音源で使ったのは基本、元町で買ったレコードが多いですね。
日本のジャズとかソウルとかをサンプリングして。
日本のと海外のと、半々ぐらいですかね。
1曲目の、「プロポーズfeat.choochoogatagoto」は結構、探しましたね。
福村 博っていうジャズトロンボーン奏者と渡辺貞夫が一緒に出してるレコードがあって。
前から欲しいなと思ってたんですけど、上手くハマってくれたので、それを使いました。 」
—その1曲目の中に、弾き語りがありますよね。
あの弾き語りは、どのようにして出来上がったのですか?
テ「あれはchoochoogatagotoさんっていう、僕が所属している音楽研究部の先輩に頼んで。
なんか一緒にやってたら、すごい良い曲になっていって。 」
◆
アルバム『PR0P0SE』の中でのお気に入り→→→「雨模様」
オ「最初、トラックが出来上がった時は、今回は入れなくていいか〜ってなってたんですけどね。 」
テ「昔、僕がこの曲のトラックを作っていたんですけど、上手くいかなくて。
お蔵入りになってたんですよ。
それで、その音源を大臣に送ってみたんです。
そうしたら大臣から、この曲は入れたいからやろうぜってメールが来て。
なので、時間なかったんですけど、ぎりぎりの中で作ったんです。 」
ラストを飾るのは、tofubeats、okadadaによるユニット
dancinthruthenightsとの共同作「Just Tonight feat. dancinthruthenights」。
オ「あのタイミングで、あのメンバーで出せたっていうのがすごく良かったと思います。 」
◆
もうまもなくリリースされるアイドル3人組Negiccoのシングル「トリプル!WONDERLAND」(4月16日発売)には、PR0P0SEによるリミックスも収録される。
ライヴ活動はなくとも、じわじわと活躍の場が広がりつつあるPR0P0SE。
今後、まだまだ生まれてくるであろう彼らの曲を楽しみに待っていたい。
—最後に、PR0P0SEの今後についてお聞かせ下さい。曲も結構、たまっているのですか?
テ「それが、全然なんです・・・。
僕があんまりトラックを作れていなくて。
でもやっぱり、ちゃんとアルバムを作りたいです。
CDを出したいですね。
今日もこのあとスタジオに入ります。
なので今は、目下製作中です! 」
―――――――
『PR0P0SE』-PR0P0SE
『ロシアンブルー』-トーベヤンソン・ニューヨーク
『街の踊り』-オノマトペ大臣
『トリプル!WONDERLAND』-Negicco
★thamesbeatの’13 recommend『Anything in Return』-Toro Y Moi
★オノマトペ大臣の’13 recommend『pale machine』-bo en