“マンションなのに注文住宅”、そんなイメージで人気のあるコーポラティブ・マンション。設計・内装の自由度は高いが、その事業運営は簡単でないのも事実。なので、全国で年間約170戸(2000~2010年平均※NPOコーポラティブハウス全国推進協議会)しか供給されておらず希少なのも人気の要因。今回は東京・等々力に、竣工したてホヤホヤの物件を取材してきた。
コーポラティブ住宅とは住宅を取得しようとする人たちが集まって組合を結成し、自ら事業主となってマンションを建てる方式。なのでさまざまな要件が合わないと成立せず、スタートしたものの事業環境の変化で断念せざるを得ないケースもある。今回の「ユニテ等々力渓谷」も当初の募集時(2011年9月)には5戸しか応募が集まらず、事業成立を危ぶまれた経緯があったそうだ。
その難局をコーポラティブ住宅で実績のあるコプラス社が、パートナー会社を組み入れるという形で乗り切った。2013年2月時点で、12戸に応募が入り残りの3戸はパートナー会社が分譲する形で成立した。
「組合会員の皆様は30歳代から60歳代と世代がさまざまですが、物件名決めなどミーティングを重ね入居前にはコミュニティが出来上がっているのもコーポラティブの良い所です」(コプラス社コーディネーター 大澤氏)
コーポラティブ方式において当初決めた標準仕様から、更に個別のオプション設計に概ね500万円くらいをかける方が多いという事。「なかでもみなさんキッチンまわりに300万円ほどかけられますね」と大澤氏。
メゾネットタイプなど、こだわりの住戸設計ができるのもコーポラティブ・マンションの特徴。本物件でも2戸以外、全て2層のメゾネット住戸。そのなかでも面白いのが、地階+1階というタイプ。
都市部ではどう土地を効率良く空間利用するかが、価格を抑える事につながる。その点、地下利用は施工費が増加しても、土地価格が高いエリアではメリットを生むケースが多い。
本物件のように、天井高を2700㎜と高めにして開口部を広く取れば、居室として十分な採光が得られる。また通りや他の住戸からの視線は遮られているので、コプラス社物件では地下住戸の70%がリビングルームとして使われているそうだ。
素材やブランドにこだわって内装・設備を選べるのはコーポラティブの醍醐味。注文住宅建築のように手間をかけてじっくり悩んで選べば、住んでからの愛着もひとしお!
現場を取材しコーポラティブ・マンションが益々進化している事を実感したが、魅力はハード面だけではない。住まい手が共同で創り上げるプロセスによって築かれるコミュニティ・ソフトという価値が、今後の多様な社会にとって更に注目される住まいであると思う。