総合情報サイト「All About」による「国民の決断」2014アワードが発表された。総合ランキング1位は、筆者も審査員を務めた、住まい部門の「“空き家にさせない”実家対策」が選ばれたのだが、実家の片付け問題も注目されるなど「実家の処分」が浮き彫りになる結果となった。
All Aboutのアワードとは、今年多くの人が悩み、決断した9つの「コト」をランキングしたもの。9部門でそれぞれ3位までの「コト」が選ばれ、各部門の1位による総合ランキングが決められている。
詳しい内容については省略するが、9つの部門のランキングを見ると、大きな傾向がいくつか見られる。
少子高齢化の影響で、「空き家」問題(住まい部門)のほか、墓じまい、実家の後片付け(老後部門)、教育資金の生前贈与(マネー部門)などがランクインしている。
消費税増税の影響では、駆け込み消費(マネー部門)や主婦の再就職(転職・起業部門)などが、スマートフォンやSNSの普及の影響では、SNS転職(転職・起業部門)やアカウントなどの身辺整理(老後部門)、スマホショッピング(消費・購買部門)、アプリ婚活(結婚・離婚・再婚部門)などがランクインした。
こうしたなかで、「“空き家にさせない”実家対策」が総合ランキング1位になった理由を、All About Award事務局に聞いてみた。「空き家に関する報道の多さや今後まだまだ予備軍がいることなど、問題の大きさが決め手になりました」ということだ。
さて、All About Award2014の発表会では「賢いマンション選び」ガイドの大久保恭子氏が解説した住まい部門だが、筆者自身が審議会に参加していたので、裏話も含めて説明しよう。
まず、深刻な課題として今年注目を浴びた「空き家問題」が話題になった。筆者もSUUMOジャーナルで、何度も記事を執筆しているほどだ。
でも、「空き家問題」は国や地方自治体など組織的に取り組むべき大きな課題だ。一方で、最近急増しているのが、相続前後の実家の空き家。遠方にある実家が、親の死亡や介護施設の入所などで空き家になったとき、頻繁に訪れる時間がない、当面住むつもりがない、親の持ち物の処分がなかなかできない……と、放置している事例だ。
これは「国民の決断」でなんとかできるものなので、ぜひ取り上げようと筆者が提案。実家の空き家は、売るなり貸すなりして活用する方法を考えるか、空き家を管理するサービスを行う事業者が増えているので、そうした事業者に依頼するかなど、放置したままにしない対策を取る必要があるからだ。
ただし、実家が空き家になってから考えたのでは遅いと筆者は思っている。親の意思が確認できるときに、実家の処分方法を確認したり、すみやかに相続できるように準備を進めてもらったりしておくほうがよい。相続でもめて実家が活用できなかったり、登記があいまいで相続の手続きが進まなかったりといったこともあるからだ。
また、発表会で大久保氏が言及した「減築」という考え方もあるだろう。「子どもが就職や結婚などで独立したタイミングで、住まいの見直しを図ることが重要。老後は住み慣れた家に住みたいと考える人も多いので、夫婦のうちどちらかが亡くなり、一人になってしまった場合のことを考え、『減築』という選択肢も挙がってきます」
親が生きているのに死んだ後のことを話題にするのは、心情的に難しいとは思うが、社会問題となっているだけにきちんと決断してほしいと思う。
住まい部門では、そのほかに「コンセプト型賃貸」の増加、新築と中古の垣根が低くなり「立地重視の住宅購入」が進むことを選んだ。その背景についても、説明しよう。
以前からシェアハウスが話題になっているが、最近増えているのが、ソムリエが管理人を務めるワインアパートメント、猫好きやゴルフ好きなど同じ趣味を持つものが集まるシェアハウスやシングルマザーのためなど助け合いを前提としたシェアハウス。また、音楽の演奏ができる防音施設を整えた賃貸住宅などもあり、こうした特定のコンセプトを設定した賃貸住宅が増えていることに注目した。
また、中古流通市場では仲介会社のワンストップサービスを推し進めようとしている。物件を仲介するだけでなく、建物検査や保証、リフォームやローンなどさまざまな課題についても仲介会社が窓口となって対応するという考え方だ。こうした取り組みによって中古住宅の流通が促進され、新築と中古の垣根が低くなれば、立地などの基本的な重視項目で住まい選びができるようになる、ということを期待値も込めて選出した。
All Aboutサイドの総括にもあるが、2013年の注目材料が2014年に引き続く傾向がある。事前に道筋をつけて実行し、それが実になってから広がるのが、注目される「コト」だからだろう。2015年はどんなコトが注目されるのだろうか。