楽天銀行が、11月21日より楽天銀行独自の住宅ローンの取り扱いを開始した。ネット専業の銀行が独自の住宅ローンを投入する一方で、都市銀行の三菱東京UFJ銀行が11月10日よりネット住宅ローン[じぶん銀行専用]の取り扱いを開始するなど、住宅ローンは銀行間で競争が激化している。
楽天銀行はこれまで、住宅金融支援機構と提携した「フラット35」を主に取り扱ってきたが、独自の住宅ローンを投入することで品ぞろえを増やした。楽天スーパーポイントが貯まるサービスも展開している。
ネット専業銀行では、ソニー銀行や住信SBIネット銀行なども独自の住宅ローンを提供しており、金利の低さや保証料が不要、繰り上げ返済手数料が無料といったメリットを打ち出し、住宅ローンで存在感を示している。
一方、店頭での取り扱いが中心だった都市銀行などでも、ネット専業銀行と共同してネットのみで手続きができる住宅ローンの提供を始めている。三菱東京UFJ銀行が、代理店となるじぶん銀行を通じてネット専用の住宅ローンを提供するほか、三井住友信託銀行のネット専用住宅ローン(代理店・住信SBIネット銀行)などの例がある。
店舗展開をしないネット専業銀行は、そのためのコストが不要となるため、金利を引き下げるなどのメリットを打ち出せることになる。店舗展開している銀行なども、金利を引き下げて対抗しているが、今や採算ぎりぎりの金利水準となっている。
各行が住宅ローンに力を入れる理由は、いくつかある。個人に貸し出す住宅ローンは金額が大きく、企業に貸し出すローンに比べると貸し倒れリスクが低いといわれている。さらに、長期間返済する住宅ローンの口座は、給与振込やクレジットの引き落とし口座にもなり、投資運用などの口座につながる可能性もある。個人との取引を深める意味でも、積極的に契約者を取り込もうと競争が激化しているのが現状だ。
金利で競うことが限界となっている状況で、新しいサービスや特典で付加価値を高める動きもある。
以前からいくつかの銀行で、がん保険や返済支援保険、出産時に金利引き下げなどのさまざまな特典を付けた「女性専用」の住宅ローンや、子どもの誕生により金利を引き下げる「子育て支援」型の住宅ローンなどを提供している。
最近では、みずほ銀行で、ライフイベントに応じて返済額を増減できる「ライフステージ応援プラン」の取り扱いを始めている。共働き期間などで返済額を増額し、妻の産休や育休、子どもの大学進学などで返済額を減額するといったことを可能にしている。
また、りそな銀行では「日照補償付住宅ローン」の取り扱いを始めている。これは、太陽光発電システムを設置する住宅の建築や購入をする際に、その費用もローンに組み込むことができるほか、年間の基準日照時間を下回った場合に補償金を出す、日照補償サービスを3年間提供するもの。
買い物に有利な特典を付けるケースもある。楽天銀行が楽天スーパーポイントを付けるほか、イオン銀行では住宅ローン契約者がイオンで買い物をする際に5%割り引く特典などを付けている。また、イオン銀行の店舗では、商業施設と同様に年中無休で営業している点も見逃せない。
銀行間の競争が激化し、多種多様な住宅ローンが提供されるなか、住宅ローンを選ぶには冷静に判断する必要がある。低金利を重視するのか、事務手数料や保証料などの初期費用を重視するのか、万一のリスク補償を重視するのか、あるいは、店頭で丁寧な相談に応じることを重視するのか。そうした自分なりの重視ポイントを見極めたうえで、諸費用を含む返済プランや特典の使い勝手などを比較検討して、自分に適した住宅ローンを選択するのがよいだろう。